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平成24年(ノ)第334号

申立人 KT外13名

相手方 SDマンション管理組合法人

相手方準 備 書 面(1)

平成24年10月26日

東京簡易裁判所

民事第6室第1係 御中

相手方代理人

弁護士

第1 当初の管理費等の金額の定めは合意された有効なものであること

1 重要事項説明書別添価格表(乙9)に管理費等の金額が明記されていたこと
昭和56年の分譲開始当初より、本件マンションの購入希望者には、重要事項説明書及びこれに添付された管理費等の価格表が示されていた(甲8及び乙9)。

重要事項説明書には「本物件竣工時点のタイプ別管理費及び補修積立金の額については、別添価格表をご参照願います。」との記載があり(甲8の後ろから2枚目の右側「販売に関する重要事項」15(2))、別添価格表には、各タイプの専有面積、住戸及び店舗の管理費及び補修積立金の金額が明記された一覧表が掲載されていた(乙9の4枚目)。なお、この一覧表には、店舗と住戸のそれぞれについて専有面積とそれに対応した管理費等の金額が示されているため、この一覧表をみれば、店舗と住戸とで管理費等の金額に差異があることも容易に確認できるものであった。

本件マンションの各区分所有者は、購入当時これらの書類を確認し、別添価格表に記載された管理費等の金額について合意したうえで区分所有者となったものである。

2 管理委託契約書(乙10)にも管理等の金額が明記されていること
本件マンションの管理委託開始当時において区分所有者と管理業務委託者との間で締結された管理委託契約書においても、各タイプに応じた住戸と店舗の管理費等の金額が明記されており(乙10の第4条及び第5条)、各区分所有者は自己が負担する管理費等の金額について合意した上で管理委託契約書を締結しているものである。

3 小括
したがって、各区分所有者は、本件マンションの購入時より管理費等の金額について合意していたものであり、管理費等の定めは有効である。

第2 総会決議で承認されていること
答弁書の第3の3で述べたとおり、相手方においては、平成18年5月14日の総会において修繕積立金増額について承認されており、平成23年11月6日の臨時総会において管理費等が明示された管理規約の改訂が承認されている。

また、答弁書の第3の4で述べたとおり、平成18年5月14日の総会決議では申立人㈱H、同MT、同S事務所が賛成票を投じており、平成20年3月30日の総会決議では、同KT,同㈱H、同㈱T、同YS、YMが賛成票を投じており、平成23年11月6日の総会決議では、同KT、同㈱A、同㈱T、同MM、同NS、同YS、YM、同㈱Sが賛成票を投じている。

さらに、相手方と、申立人YN、申立人MM、申立人㈱Sとの間ではそれぞれ裁判において総会決議が有効であることについて確認をしている。以上のことを総合すれば、本件において、管理費等の金額の定めは合意された(或は総会決議で増額等がされた)ものであり、いづれも有効なものであることは明白である。

第3 店舗と住戸の管理費等の金額の差異
1 上記1のとおり、本件において管理費等について、店舗及び住戸の各区分所有者は、店舗と住戸の管理費等の計算が異なること及びそれぞれの自己が負担する管理費等の金額について認識したうえで、合意しており、店舗と住戸の管理費等の金額に差異があることを理由に、その合意が無効になることはあり得ない。

2 管理費等の金額の業者による設定の推測
当初の管理費等の金額及び店舗と住戸との負担割合は、本件マンションの分譲業者が設定したものであり、相手方はその具体的な算定方法等については知るところではないが、店舗と住戸とで管理費等の金額に差異があるのは、以下のような事情や状況等を考慮したことによるものではないかと推察される(その他の状況、事情等を考慮したこともあり得るが、とりあえず、相手方において、現時点で推測した点を以下、念のため述べる)。

(1)住居専用マンションと店舗併設マンションとの違い
純粋に住居専用マンションと、商業活動用の店舗設置を許容する店舗併設マンションとでは、その店舗及び店舗による営業活動に伴い種々の状況が生まれることによって、マンションの維持管理、補修等に重大な違いが生じてくる。

例えば、店舗併設に伴う店舗外装や看板の設置等によるマンションの統一的なイメージや美観或は、1階部分での住民以外の第三者をも対象とする営業活動により、多数の者の参集等による騒音、臭い、多数の者の使用による損耗の増加等の問題が生じてくる。

店舗区分所有者は、本件マンションに店舗を構え、本件マンションの1階部分において営利活動を行うことによって利益を得ることができる一方、営業活動の対象が住民だけでなく、本件マンション以外の近隣の住民等の第三者をも相手にして商業活動を行うことにより、ある一面では、住民の静寂、安寧、安全等を犠牲にしたうえでの営業活動が許容されているという面がある。

また、本件マンションには、店舗による営業活動のために、店舗を主たる目的とする共用部分(下記(2)の店舗出入口・中通路、下記(3)の犬走等)が必要となり、その点検維持管理・補修等の費用が見込まれ、下記(4)の現実に看板を設置することによる壁面等の補修等の必要性が生じてくることや、下記(5)乃至(7)の不特定多数の出入りによる騒音・臭い

セキュリティの問題やその対応費用の増加・当該施設の点検維持管理・補修費用、店舗利用者の多数の第三者による利用及び使用頻度の高さから、当該部分の損耗、劣化の進行による点検維持管理・補修費用がより見込まれることになり、また、多数の参集等により清掃の必要性も他の共用部分に比べて高くなる。

また、各店舗のためのシャッター(下記8)や、主として店舗へ動力を供給するためのキュービクル設備及び電気計器個メーター(下記9)があり、それらの点検維持管理、補修・修繕等の費用の支出がみこまれる。

本件マンションの分譲業者が設定した店舗と住戸の管理費等の金額の差異等に関しては、上記のような状況や下記(2)以下の事情を考慮したうえで、総合的に判断したものではないかと考えられ、具体的にはどういう数値上の計算をしたかの詳細は不明であるが、これらのことを総合的に評価すれば、相応の計算であったと思われる。

(2)共用部分である店舗利用者のための出入口及び中通路の存在
本件マンションには、共用部分として店舗の商業活動に伴う顧客等が利用するための出入口や中通路が存在している(甲8の2枚目上の図で「店舗出入口」、「通路」と記載されている部分)。

店舗区分所有者は、当該共用部分を自らの商業活動による顧客等が利用できることにより、利益を享受している(なお、中通路にエアコンの室外機を設置している店舗区分所有者もいる)。

この店舗の営業活動による営利行為を主たる目的とした出入口や中通路は、場合によって住戸の者も利用できるが、その主たる利用目的は、店舗所有者の商業活動を目的であるとするものであるとともに、多数の顧客等の利用によって、その部分の損耗等も住戸より激しくなる可能性が高く、その点検維持管理費用、補修・修繕費用等が住居部分よりもより見込まれる。

なお、中通路の床の素材はセメント系人造石(テラゾーブロック)であるため、その清掃の際にはワックスかけも必要となる。

(3)共用部分である店舗前敷地(犬走部分)の利用
店舗前敷地(犬走部分)は、共用部分であるが、主として、各店舗の出入口として利用されている。また、同敷地上にエアコンの室外機を設置する等して利用している店舗区分所有者もいる。さらに、同敷地の地中には、店舗区分所有者のための水道用配管が存在しており、配管に故障等が発生した場合には共用部分を破壊して補修等を行う必要がある。

このように店舗前敷地は、共用部分ではあるが、その主たる利用目的は、店舗区分所有者(或はその顧客等)の利用であり、かつ配管等の補修の場合には、当該部分の補修も行う必要もあり、これらに関連して、点検維持管理費用、補修・修繕費用等が住居部分よりもより見込まれる。

(4)看板の設置
店舗区分所有者は本件マンションの壁面に看板を設置できることになっている。これにより、本件マンションの統一的な美観や建物の外観の調和が損なわれる面があるのみならず、看板設置による建物に対する影響やその建物の補修による費用が考えられる。

(5)不特定多数の出入りによる騒音や危険の増大等
店舗が存在することにより、本件マンションに不特定多数の店舗利用者がでいるすることになる。それの伴う騒音や安全・防犯面のリスクの増大が発生する。このために、防犯カメラ(現在12台)の設置等がなされており、その点検維持管理費用、補修・修繕費用等が住居部分よりもより見込まれる。

(6)使用頻度が高いこと及びそれに伴う損耗・劣化や清掃の必要性
本件マンションには店舗利用者が多数訪れるため、共用部分である中通路、店舗前敷地、ピロティ、店舗用出入口等は多数の利用により使用頻度が高い。そのことにより当該部分の損耗・劣化の進行は早く、また、清掃の必要性も他の共用部分と比べて高くなる。それらに要する点検維持管理費用、補修・修繕費用等が住居部分よりもより見込まれる。

(7)店舗の営業活動に基づく騒音、臭い及び煙等
店舗が営業活動をすることにより、機械音等の騒音や、飲食店等の場合には、料理等による臭い、煙、ゴキブリやネズミの発生等衛生面での問題もしょうじる。この関係でも、その点検維持管理費用、補修・修繕費用等が住居部分よりもより見込まれる。

(8)店舗シャッターの保守点検
各店舗には共用部分として、各店舗のためシャッターが設置されているが、その関連で、点検維持管理費用、補修・修繕費用等が住居部分よりもよりも見込まれる。なお、今般、本件マンションで策定中の長期修繕計画において、店舗シャッター11枚の交換費用及び消防設備点検の指摘事項の改修費用として約990万円、外部側の店舗シャッター9枚の交換費用として約270万円が見込まれている。

(9)キュービクル設備及び電気計器個メーターの保守点検
本件マンションには、キュービクル設備がある。このキュービクル設備は、東京電力から供給される高圧電力(業務用電力)を一般に使用できる低圧電力に変換等するための設備であるが、このキュービクル設備により変換された電力は主として店舗区分所有者が使用している。

また、キュービクル室にはキュービクルで変換した電力を各店舗等へ配分する電気計器個メーターがあり(個メーター全41個のうち39個が店舗用のもの)、これらの有効期限が定められており定期的な交換が必要となる。

なお、住戸区分所有者は、それぞれ東京電力から直接低圧電力の供給を受けているため、このキュービクル設備や電気計器個メーターを使用していない。したがって、これらの関係でも、点検維持管理費用、補修・修繕費用等が住居部分よりもより見込まれる。

第4 店舗管理費の変更について
上記第1から第3まで述べてきたとおり、本件マンションの管理費等の定めは有効であるとともに、当初の割合も相応の合理性があったのではないかと推察している。もっとも、相手方(現理事会)としては、店舗区分所有者も住戸区分所有者も本件マンションの区分所有者として共存・発展していくためには相互に円満な関係を築いていくことが望ましいと考えている。

しかし、管理費・修繕積立金の変更については、再び総会の決議が必要である。したがって、従前の方式による管理費・修繕積立金の方式に代わり得る合理的な方式が申立人から提案され、その提案が住民等によって賛成を得られるような合理性が認められ、住民の賛成が得られることが見こまれる場合には、相手方としては本件の管理費・修繕積立金の変更について総会に議案を提出することも考慮したいと考えている。

しかし、これまでの調停のやり取りでは、果たして、総会での住民の賛成が得られるかどうか、やや危惧されるところである。申立人においては、上記のような観点から生産的な議論をしていただくことを切望する次第である。

第5 申立人準備書面(1)についての説明
1 乙7の物件1の修繕積立金の比率
乙7のぶっけん1について、住戸と店舗の修繕積立金の比率が1::4.3とあるのは誤りであり、正しい修繕積立金の比率は1:1である。このような誤りが生じたのは、管理会社において、当該物件の修繕積立金の比率を計算する際、店舗と住戸の共用持ち分9999分の1あたりの修繕積立金の金額を比較して算出したつもりが、店舗について共有持ち分の数値と専有面積の数値を混同して計算してしまったことによる。

2 電気料金について
(1)店舗の電気料金が加重されてい尚こと(申立人準備書面(1)3項)
乙8の1の表2のとおり、1階中通路照明、管理事務室内電気は共用部電気料として店舗請求金額とは別に相手方が管理費より支払っている。

また、相手方が店舗に対して請求している電気料金は、東京電力からの請求金額についてそれぞれの店舗の専有部分に係る部分と、基本料金(平成11年11月より、19店舗が一律4618円、108号室のレントゲン室、1階通路及び管理室が一律2309円の合計9万4469円の請求がされてきており、現在もそれを踏襲している。)及び事務手数料8000円を按分したものである。
したがって、店舗に対する電気料金の請求は何ら不当に加重されていない。

(2)決算書の記載が整合すること(申立人準備書面(1)4項)
本件マンションの決算書において計上される電気料金は、前年11月から当年10月分までの1年間となっているため、1月分から12月分までの金額を整理した乙8の1の表と決算書の金額が異なっている。

決算書において当期の計上を1月分から12月分までとせずに、前年11月から当年10月分までとしているのは、本件マンションにおいて管理費等の会計処理が「前受」(当月に支払いを受けたものを翌月に計上する方式)となっているため電気料金についても管理費等の「前受」方式に合わせて計上していること、また、東京電力により検針が行われた後に相手方において計算や請求書の作成等を行うのに一定の期間を要することから、2か月遅れで電気料金が計上されることになるからである。

たとえば、10月分の電気料金は、相手方が計算等を行ったうえで11月上旬頃、各店舗に対して11月末日までに所定の電気料金の支払いを求める請求書を発行し、これが11月末までに支払われた場合には、その金額は決算上「12月」として計上されることのなる。なお、決算上の金額と実績の金額の関係を整理すると乙11の表のとおりとなる。

以上

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