スポンサードリンク

平成24年(ノ)第334号
申立人 KT外13名
相手方 SDマンション管理組合法人
準 備 書 面(2)
平成24年10月24日
東京簡易裁判所
 民事第6室第1係 御中
               申立人ら代理人
                弁護士 
第1 本件マンションの店舗の管理費・修繕積立金が高額であること
   本件マンションの店舗が負担する管理費・修繕積立金が高額であることは、公益財団法人東日本不動産流通機構が発行している会報誌(甲19)から明らかである。すなわち、首都圏中古マンションの月額管理費は1㎡あたり平均で177円、修繕積立金は1㎡あたり平均135円合計312円である。
   一方、本件マンションの住戸が負担する管理費は1㎡あたり157.8円、修繕積立金は1㎡あたり197.3円合計355.1円である。これに対して本件店舗負担の管理費は1㎡あたり386.07円、修繕積立金は1㎡あたり482.59円合計868.6円であり、本件マンション住戸の2.45倍であるのみならず、首都圏中古マンション平均の2.78倍、と極端に割高となっている。

第2 申立人調査のマンション管理費・修繕積立金価格割合
  申立人らは、独自に大田区内のマンションの情報を入手し、1階を店舗とするマンションについて、1㎡あたりの管理費・修繕積立金の住戸・店舗間比率を比較したところ、本件マンションにおける店舗と住戸の比率である2.45倍が著しく高率であることが判明したので、以下に一覧表としてまとめた(甲
20~25)。
マンション名  管理費(住戸対店舗)  修繕積立金
東武ハイライン西蒲田   1:1.3  同左
インペリアル蒲田  1:1  同左
シャルム蓮沼  1:1 同左
物件名不詳   1:1  同左
物件名不詳   1:1  同左
物件名不詳   1:1  同左
   ただし、東武ハイライン西蒲田については、店舗が、2階まであり、そのエントランスは2階までの吹抜けで面積も広く、床は黒御影石、巾木ボーダータイル貼りで、天井カラー鋼板製スパンドレル、照明も高級なソシアルビル仕様であるのに対して、住戸ホールは、そのエントランスが高さも幅も小さく、床はタイル貼りで、照明も蛍光灯であるなど仕様も賃貸マンション並であり、小規模マンションなので店舗専用業務用キュービクルはなく、住戸も店舗も同じ共用部電気料管理費負担となっており、そのために店舗管理費等が住戸の1.3倍であることには、相応の合理性があると考えられる(甲26)。
   なお、相手方管理会社が開示した資料中、住戸と店舗の割合が0.33のものがあるが、この物件の物件概要書の開示が困難なのであれば、せめて住居表示だけでも開示されたい。

第3 相手方作成に係る2012年10月3日付「議事録の内容について」(甲27)と題する書面について  
   相手方は、第29回通常総会において、「住戸と店舗において管理費等の金額に差はあるのか」との質問に対し、「最大4.3倍」と回答していたが、その後、標記書面によって、「居住者から指摘を受け」「等倍」であったと訂正した。
   しかしながら、指摘した「居住者」は他ならぬ申立人らである。また、等倍ではなく、1.3倍が正しい。さらに、相手方は、住戸店舗間比率が0.33倍の物件があることについて触れていないが、触れるべきである。

第4 平成24年7月28日付理事会の議事録について
1 相手方は、同理事会において、「管理費等の比率を1:1にて長期修繕計画書を作成した場合、不足金を試算した上で、その際は住戸組合員においても管理費等の値上げが必要になる可能性がある」と述べている(甲28)。
  しかし、管理費等の比率を1:1にして長期修繕計画を立てても不足金が生じないことは今まで申立人が再三指摘したところである。管理費について不足金が生じない理由は、①値上げ増収分、②経費節約分、③経常的な管理費の剰余、が存在するからであり、修繕積立金について不足金が生じない理由は、増収分が存在するからである。
  以下、項を改めて敷衍する。

2 管理費について不足が生じない理由
(1) 増収
  大田区立児童館463.24㎡の管理費について、従前は㎡あたり住戸の半額(月額36,600円)であったのを住戸と同等に改定・値上げした。これによる増収分は年間約44万円である。
(2) 経費削減
  現在では10年前と比べて、年間合計約122万円~147万円の経費削減が達成されている。これは、エレベーター保守点検費が第22期(平成16年)以前において年間245万円あったものが、第29期は年間98万円に削減されたこと等による。
(3) 経常的な管理費の剰余
  本件マンションは、経常的(慢性的)に管理費に剰余が生じる運営がなされてきた。決算書第20期(平成14年)期末における翌期繰越額は7147万円なので(別紙2「SDマンション管理組合法人管理費等会計」第21期前期繰越金参照)、昭和57年竣工から平成14年までの20年間における剰余金の発生は年当たり357万円である。また、25期以降は、前掲(2)のとおり、毎年122万円以上の削減分(第29期は147万円)を剰余金として加算できるので経常的剰余金合計は480~504万円となる。
  一方、管理費会計から修繕積立金会計への振替金は26期ゼロ、27期1000万円、28期500万円、29期500万円と、直近4期の合計は、2000万円、年間平均500万円であり(甲26の1~3)、上記管理費剰余金見込み額とほぼ一致する。
  さらに、特別費用(裁判費用)として、第25期から第29期までの直近5期の合計が653万円(別紙SD管理組合管理費等会計。5期分参照)、年平均130万円の支出がなされているが、本件マンションの運営が適正に行われていれば発生しない費用であり、この特別費用は、本来の建物管理費ではないので、この分を、③の経常的管理費剰余金に加算すると、年当たり約609万円~634万円が剰余金見込みとなる。
  店舗(専有面積合計818.76㎡)の現況管理費(2.45倍)年間379万3000円(月額31万6100円×12)は、住居と同等とされた場合には155万400円となるが、その差額は224万2600円にとどまるのであり、この減収を、上述した経常的な管理費の剰余で吸収しても、なお年当たり385万円(609万円-224万円)~410万円(=634万円-224万円)の管理費の徴収過剰が残る計算となる。
  したがって、更に管理費を値下げすべきかについて議論する必要こそあれ、一般住戸の管理費の値上げなどはありえないのである。

3 修繕積立金について不足が生じない理由
   平成18年には、住戸の修繕積立金を年間113万3400円(月額9万4450円×12)から1416万7000円に、同じく店舗の修繕積立金を年間37万9300円(月額3万1610円×12)から年間474万1000円へと12.5倍に値上げし、平成19年には児童館の修繕積立金を年間43,920円から年間109万8000円へと25.0倍の値上げをした。また、平成18年、駐車場代を10倍(旧賃借権者)ないし12.5倍(新規賃貸契約)に値上げしたが、これによる増収は約390万円である。これらの増収は年間2234万9680円(1116万7000円-113万3400円)+(474万1000円-37万9000円)+(109万8000円)+390万円である。
  上述したとおり、12.5倍の値上げをした後の店舗の修繕積立金は年間474万1000円であるが、これを住居と等倍の193万8000円(16万1541円×12)としても、これによる減収は280万3000円にとどまる。これを上記増収分2234.9万円から差引いても、1954万6000円の増収が依然として維持される。

4 本件マンションにおける過剰徴収の傾向(基調)について
  元々(増収前)の住戸の修繕積立金年間約113万3000円、店舗の修繕積立金年間約37万9320円、駐車場代年間約43万2000円及び上記増収額1954万6000円を合計すると、修繕積立金は年間2149万円、これに店舗過剰徴収分の前掲280万3000円を加えると2429.3万円であり決算書27期、28期の修繕積立金収入2432万9000円とほぼ一致する(なお、29期は、T副理事長によれば、バイク置き場転用分等の一部収入を別会計にしたらしく、28期に対して52.2万円減収の2380万7000円になっている。)店舗と住戸を同等としたばあいの修繕積立金2149万円に、前述した徴収管理費の剰余である年間385万円~410万円を加えると2534万円~2559万円となり、30年間では7億6020万円~7億6770万円となる。この金額は平成18年5月総会で決議した修繕積立金の目標値6億9000万円余よりも優に7000万円以上も多い結果となる。
  一方で、本件マンションにおいてこれまでの30年間に費やされた修繕工事費は、22期2059万3000円大規模1期工事(28期1億1250万円、29期、1622万円7000円)、設計管理料366万8000円合計1億5298万8000円であり、今後の大規模2期工事予定分を合わせても、総額約2億円程度にとどまるみとおしである。とは言え、本件マンションの修繕・維持管理の水準は、決して低レベルではなく、他の同世代のマンションと比べるとむしろ高水準である(他のマンションでは、ベランダの鉄柵がそのままというのが多いが、本件マンションは既にアルミ製に交換済である等)。
  それにもかかわらず、今後の同じ30年間で、7億6020万円~7億6770万円、すなわち、従前の工事実績額である2億円の3.8倍もの修繕積立金を積み立てる必要があるとは到底考えられないところである。ましてや現況の店舗格差負担2.45倍を放置した場合には、更に年間504万円(店舗の負担を住戸並みとした場合の管理費減収分年あたり224万円と修繕積立金減収分年あたり280万円の合計),30年間では1億5120万円が加算されて9億1140万円~9億1890万円、実績修繕費用の約4.6倍にもなる。
  修繕積立金会計第27期から第29期の直近3期の収入合計は8816.8万円であり(別紙2「S管理組合管理費等会計9期分」参照)、30年間累計(10倍)では8億8168万円となる。その差額は2972万円~3722万円であるが、実際には管理費から毎年小修繕工事が支出されており、平成14年から平成23年までの10年間では合計1419万8000円である(保険適用分は除く)。30年間では4259万円程度の見込みとなるので、これを、9億1143~9億1890万円から差し引くと8億6884万円~8億7631万円となり、実際の直近3期分の修繕積立金合計額の30年分の8億8168万円の近似値となる。
ところで、平成21年4月国土交通省マンション制作室発行の「平成20年マンション総合調査結果報告書」(甲29)によれば、本件マンションが竣工した昭和57年前後(昭和55~59年)に完成したマンションの修繕積立金分布について、月額50万円以内が74組合28.4%と最大であり、本件マンション(月額166万円。駐車場代月額36万円を加算すると月額202万円)においては、同世代マンションの3.3倍から4倍以上の修繕積立金が徴収されていることが分かる。
  これらの事実は、むしろ本件マンションにおいては管理費・修繕積立金の下方修正を議論しなければならないことこそを示しているのであり、平成18年5月の12.5倍総会決議と、その後の管理組合運営の正当性が問われて然るべきである。

5 結語
  真の組合内民主主義を実現するためには、正しい情報を公表し、多数派だけでなく、少数派の立場にも配慮した理事会運営が行われることが必要である。相手方自体、現行の比率1:2.45が不相当であることを調停の場で自認していることを忘れてはならない。
  この意味で、標記の理事会の見解が、具体的な係数的根拠も示さぬまま、「不足金を試算した上で」などと述べ、あたかも不足金が発生するのが当然であるかの如く前提としているのは、誤導による世論操作(プロパガンダ)のそしりを免れないと思われる。
  相手方が本当に調停による解決を考えているのであれば、上記理事会見解のごとき具体的根拠に基づかぬ誘導は慎むのが信義に適っている。一部の理事ないし役員の暴走ではないかと思われるので、早急に改善されるよう申立人らは切に求めるものである。
                               以 上
スポンサードリンク