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傾斜マンション名;パークシティLaLa横浜

建築;2007年(平成19年)
総戸数;705戸(4棟)

上記物件が、問題となっている三井不動産が販売した「傾斜したマンション」です。正確に言えば「マンションの一部が沈下」した、と表現した方が正確だと思います。

傾いたのは11階建ての1棟。別の棟のマンションとエキスパンジョイントで渡り廊下になっている部分の手すりで約2cm低くなっているというものです。

住民の指摘により発覚し、三井不動産が調査。建物を支える基礎の杭の一部が支持層地盤に達していなかったということです。

まず、

2cmの傾きとはどの程度の傾きなのか?

傾いた本件建物(パークシティLaLa横浜)は11階建てだから、階高を約3.5mとすれば11階建てだから3.5x11=約38.5m(38,500cm)となる。つまり傾きは2cm/38、500cm=1/19,250となり、国土交通省告示では傾き等の許容範囲は1/1,000となっていますから、偽装抜きにすれば許容範囲となります。一般的には現場で職人が作るわけですからこのぐらいの誤差は許容範囲となります。実際寸分の狂いのない建物は存在しないはずです。また、鉄筋コンクリート造の構造計算においての地震時の躯体の変形(層間変傾角)は1/200までが許容範囲として計算されます。

傾いた時期はいつなのか?

竣工検査でパスし、竣工時に傾いて(沈下)いなかったとすれば、建築後に支持地盤に到達していなかった杭、基礎が沈下(杭先端部の圧密沈下)が徐々に進行したものと推察されます。ですから、常時、地中梁等の構造部分に負荷がかかっている状態だと思います。仮に、竣工時から、つまり、最初から傾いた状態で、現在において沈下の進行が無いということであれば安定した状態とも言えます。

地震に耐えられるか?

三井不動産では震度7程度は問題ないとしています。杭偽装の問題となっている西棟の南側が支持層に到達していない部分となり、南側のスパン方向に耐震壁が配置されているはずですから、スパン方向の地震力に対しては大きな力を負担する耐震壁の踏ん張りがきかないことになります。また、桁方向の地震力に対しては偽装された杭の基礎部分については前提条件である柱脚固定とはならないはずで、三井不動産がどのような計算で出したかわかりませんが、計算外・想定外の力が働く可能性があります。”震度7程度で問題ない”と、計算は誰がどのように導きだしたのか確認をすべきです。

そもそも土の中は分からない?

マンション基本計画段階で地盤調査会社による地盤調査が行われボーリングデータが作成されます。事前調査で、昔の地形図(等高線のあるもの)や近隣の過去のボーリングデータを調べ、ボーリング調査部分の指示は設計事務所によって場所及び本数が決定されます。そのボーリング調査書に基づき、基礎及び杭の実施設計がなされます。建築確認を経て着工となるわけですが、それでも地中からは何が出てくるかわからない。なにせ地中のことは分からないので余分に予算を組みます。(地中障害、井戸、地下水等)この、前段階の事前調査が十分に行われたのか?が疑問点です。

マスコミが大きく報道する訳?

傾いたマンション=欠陥マンションではないのです。
今回、大きく報道されているのは
杭施工データ改ざん(偽装)がされていたマンションが販売されたことにより大きな報道になっています。単なる欠陥マンションとは異なります。仮に、改ざんされていたことを認識して販売したものであるならば「詐欺」になり刑事責任が問われます。また、この問題は根が深く基礎屋・土建屋等グレーな職域の事件であり”相当程度広がる”または”建築業界の闇”の臭気を感じてのことかもしれません。今後の成り行きでは社会的な大問題として広がる可能性があるからだと思います。


(配置図:日経新聞より)

旭化成が3000棟調査するとしているが公表可能か?
旭化成は旭化成建材が杭打ち工事を手掛けたマンションや商業ビルなど全国の約3000棟の建物を調査する方針を打ち出しているが、その結果の公表はできるのか?

データ改ざんの内容は?

・記録開始スイッチの押し忘れ
・記録紙のセット忘れ
・データを記録する機械の不具合
・地中障害(大きな石等)
・理想とする記録(波形)が取れていない
以上の状況のが起きた場合、データ改ざんに手を染めた。
「注意深くやれば問題の発生は減らせるが、それでも1つの現場で1回くらいはミスが起こっていた」

改ざんの際は、波形を記録する機材で使われるものと同じ特殊インクを使ったペンを使用。ペンは事前に購入しておいた。別の記録紙の上から新たな記録紙をかぶせて手書きで波形を写し取ったり、修正液で消して加筆したりした。
「元請け会社には原本ではなくコピーを提出するので簡単には見破られない」他にも、波形の似た別のものをそのまま流用することもあった。(産経新聞:旭化成建材下請け元職人の証言)

建て替えできるのか?

問題のマンションは4棟で構成され、一団地の管理組合として管理されていると思われます。建物の建て替えは区分所有法に定められています。
区分所有法第62条では「集会においては、区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数で」建て替えできる。となっています。
また、団地の建て替えの場合は
①4棟一括建て替え →区分所有者及び議決権の各五分の四以上の決議(区分所有法第70条)。
②沈下した一棟のみの建て替え →団地全体の4分の3以上の建て替え承認決議(区分所有法第69条)。及び建て替え建物の5分の4以上の建て替え決議。が必要になります。

団地内の全部を一括して建て替えるにしても、一棟のみを建て替えるにしても相当ハードルが高く、マンション住民の意見が一致することは相当に困難であることが予想されます。

三井不動産レジデンシャルが好条件で買い取りを保証した訳ですが、いずれにせよマンション住民の合意が成立することが最大の山場であり、三井不動産レジデンシャルはその可能性が低いことを見越して好条件で買い取りを提示したとも考えられます。

過去に起きた傾きマンション

「パークスクエア三ツ沢公園」
建築主:住友不動産
設計・施工:熊谷組
竣工:2003年(平成15年)2月
傾斜した棟は11階建てで全65戸
傾斜・沈下の原因:杭の一部が支持層に達していなかった
パークスクエア三ツ沢
(配置図:日経アーキテクチャより)

そもそも、なぜ発見されたのか?

それは、傾き・沈下マンション共通していることに答えがあります。
つまり、建物形状:建物の配置がL字又はコの字に配置され、それぞれの棟が近接し配置され、渡り廊下にはエキスパンジョイント(金属製でできており 異なる性状を持った構造体どうしを分割して力を伝達しないようにする継目のことをいう。)が設けられ、構造的には別棟になりますが行き来ができる構造になります。そこで片方が少しでも沈下すると目測ですぐわかってしまいます。これが渡り廊下がなく、お互いの棟が離れていればこの沈下に気づくことは無かったかもしれません。

丘陵地帯:パークシティLaLa横浜、パークスクエア三ツ沢公園それぞれの地域は丘陵地帯で支持地盤が変化する地域に建設されました。

旭化成建材の杭特許工法等

ネット上で旭化成建材の杭特許工法には
①イーゼットET
特許登録済(特許第4789730号)
https://www.asahikasei-kenzai.com/akk/eazet/product/eazet_et.html

②CSV
(シー・エス・ブイ)は、旭化成建材がドイツBAUER社から特許技術を導入した全く新しいタイプの地盤改良工法
https://www.asahikasei-kenzai.com/akk/aks/business/index.html

③「アットコラム」
地盤改良と鋼管杭を合体した、新しい杭基礎工法
https://www.asahikasei-kenzai.com/akk/attc/
http://www.jsce.or.jp/opcet/hyoka/gaiyo_0015.pdf

④「DYNAWING」
製品の特徴
(1)発生残土を大幅に低
「DYNAWING」は、掘削方法と杭形状とに独自技術を採用することで、 従来の埋め込み杭工法と比べ、杭施工時に発生する残土量を大幅に減らすことが可能となりました。 当社のプレボーリング拡大根固め工法(RODEX工法)に比べて約7割も残土量を低減でき、 「環境に配慮した杭工法」と言えます。
(2)高い設計支持力を実現
杭の先端に杭本体径の約1.7倍の 径の鋼製羽根付き杭を使用することにより、同杭径の自社従来工法(RODEX工法)に比べ 約3倍の設計支持力の設定が可能です。これにより、杭の施工本数を減らすことができ、 工期の短縮による経済的な設計が可能となります。
(3)
安定した高品質の施工
施工管理装置を用いて、 安定した根固め液の管理を行い、先端羽根部と根固め部とが一体になることにより、 高品質の根固め球根を築造します。(https://www.asahi-kasei.co.jp/asahi/jp/news/2006/co060420.html)より転載

施工実績(施工場所、物件)

イーゼットET
2010年度 EAZET ET

出荷物件 190-216 216-267 267-318 1
S邸 足立区 11 29m 11/11本 2 Sハウス 、墨田区 12 32m 12/22本 3 Oビル 、豊島区 20 10m 20/20本 4 Y共同住宅 、練馬区 7 33m 7/7本 5 S工場 、草加市 4 23m 4/4本 6 Aテナントビル 、千代田区 6 13m 6/6本 7 Y邸、 練馬区 17 33m 17/17本 8 Yビル 、中央区 10 14m 10/13本 9 Tプラザ 、品川区 143 33m 143/143本 10 I邸 、港北区 11 12m 11/19本 11 B新築工事 、緑区 25 9m 25/25本 12 K団地 相模原市 4 17m 4/4本 13 Kマンション 、江戸川区 11 13m 11/11本 14 T団地 、美浜区 28 13m 28/100本 15 Mビル 、新宿区 8 14m 8/12本 16 K駅、久喜市 36 18m 36/36本 17 A市場 、足立区 4 27m 4/4本 18 M病院 、水戸市 4 15m 4/4本 19 T社屋新築工事 、さいたま市 9 21m 9/14本 20 Mマンション 、渋谷区 15 16m 15/22本 21 S共同住宅 、世田谷区 12 7m 12/12本 22 M店舗 、佐倉市 5 15m 5/15本 23 A計画 、港区 12 6.5m 12/20本 24 Sビル 、多摩区 4 10m 4/12本 25 A幼稚園 、板橋区 23 15m 23/38本 26 Mビル 柏市 8 17m 8/8本 27 S邸 、台東区 2 25m 2/10本 28 N共同住宅、 川崎区 15 25m 15/15本 29 I工場 、東茨城郡 8 12m 16/16本 30 K計画 、千代田区 4 13m 4/4本 31 U中学校 、美浜区 37 19m 37/37本 32 Tクリニック 、古河市 22 16m 22/22本 33 Y保育園 青葉区 6 7m 6/10本 34 T老人ホーム 、西東京市 6 10m 6/6本 35 I中学 板橋区 10 13m 10/18本 36 Fビル 、港北区 4 21m 4/9本
https://www.asahikasei-kenzai.com/akk/eazet/product/pdf/jisseki110210.pdf

アットコラムの施工累計
全国で6,000件を超える実績。住宅、マンション、店舗、工場、学校などの建築分野をはじめ、鉄塔や耐震補強などさまざまな建設物で施工。
施工累計

事例
東京都北区:RC5F、千葉県市川市:S3F、東京都文京区:S4F、新潟県新潟市:S2F等

https://www.asahikasei-kenzai.com/akk/attc/case/past.html

旭化成建材代理店

株式会社ハヤテック
関工テック株式会社
株式会社白木屋
株式会社アマノ
田村建材株式会社
株式会社サンコー
豊島株式会社
旭栄産業株式会社
男鹿興業株式会社
株式会社コヤナギ
蒼美産業株式会社
ヒダ株式会社
旭建産業株式会社

旭化成グループ

旭化成ケミカルズ株式会社
旭化成せんい株式会社
旭化成ホームズ株式会社
旭化成建材株式会社
旭化成エレクトロニクス株式会社
旭化成イーマテリアルズ株式会社
旭化成メディカル
ゾール・メディカル

杭偽装事件報道一覧
①報道日時
②建設場所
③事業主
④施工業者
事件概要
①2015.10.27
②福岡県久留米市
③新生マンション花畑西
④鹿島建設
鉄骨鉄筋コンクリート造りの15階建、92戸。10月21日、杭打ちでも疑惑が生じた。鹿島建設が福岡県久留米市に建てたマンション。住民側は、これまでも地盤調査がされていないと主張してきたが、横浜の傾いたマンションの杭打ちデータ偽装と施工ミスが発覚したことから、専門家が資料を精査するなかで、杭打ちの疑惑に発展した。地盤調査の問題について、これまで住民側は、構造設計する際の構造計算の地盤設定データの偽装があり、それらの結果、耐震強度が多く見積もっても基準の35%しかないと指摘していた。http://www.data-max.co.jp/20151026_ymh_01/
①2015.10.28
②北海道釧路市
③道営愛国団地
道が発注した釧路市の道営住宅改築工事で、旭化成建材(東京)がくい打ちを請け負った31本のうち1本について、同じ住宅の別の工区の工事からデータを流用していたと発表した。
この道営住宅は1978年度に建設された愛国団地D10号棟(釧路市美原4)で、鉄筋コンクリート5階建て(38世帯入居)。2010年7月から11年8月に実施した改築工事では、エレベーターや廊下を設置するバリアフリー化を行った。二つの工区に分けて工事をした際、別の工区のデータを流用したという。http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/society/society/1-0195832.html
①2015.10.29
②横浜市青葉区
③青葉区内中学校
横浜市によると、偽装があったのは市内の公共施設1件で、市は独自に調査していた。都筑区のマンションの現場責任者とは別の担当者だった。関係者によると、同市青葉区の市立中学校だという。(朝日新聞デジタル)
2016.1.7 日本経済新聞 電子版

杭打ち「丸投げ」3社行政処分へ 国交省

横浜市でマンションが傾いた問題で、国土交通省は6日、杭(くい)打ち工事を請け負った旭化成建材など3社を行政処分する方針を固めた。杭打ち工事の「丸投げ」に関わったとして同社と日立ハイテクノロジーズを建設業法に基づき営業停止処分に、元請けの三井住友建設は監督不十分として業務改善命令を出す。

2016.1.8 しんぶん赤旗

大臣指定の杭性能評価機関 国交省幹部ら天下り

2000年の建築基準法の改悪によって新たに設けられた基礎杭(ぐい)の「大臣認定制度」で、認定のために杭の性能を審査する国土交通相指定の「指定性能評価機関」に、同省の幹部ら多数が天下りしていることが分かりました。

杭の性能評価機関は現在、四つ。02年以降、天下りがあったのはそのうちの三つで一般財団法人日本建築センター(東京都)に3人、一般財団法人ベターリビング(東京都)に6人、株式会社国際確認検査センター(大阪府)に1人です。

特徴的なのは、国交省を退職する時の役職が建築行政トップの「住宅局長」にあった3人が、そろって性能評価機関トップの「理事長」に就任していることです。うち2人は日本建築センターとベターリビングの現職の理事長。退職した1人はベターリビングの顧問に納まっています。

天下りが一番多いベターリビングでは、理事長のほか常務理事に3人就任しており常勤役員の“指定席”状態です。常務理事の一人は退職後もアドバイザーに。日本建築センターは理事長1人、専務理事1人、職員1人、国際確認検査センターでは取締役1人を受け入れています。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2016-01-08/2016010801_02_1.html

旭化成の売り出し中のマンション

①アトラス恵比寿

②アトラス日暮里WEST
東京都荒川区

③アトラス市ヶ谷
東京都新宿区

④アトラス押上桜花テラス
東京都墨田区

⑤アトラス南麻布
東京都港区

⑥ステーションツインタワーズ糀谷
東京都大田区

アトラスタワー町田
東京都町田市

アトラス調布
アトラスタワー本郷駅前
シンフォニア新千里南町ガーデンズ
グランクロスタワー広島
(2015.11.9現在)

ジャパンパイルも偽装

杭工事大手ジャパンパイルでも18件の杭偽装が発覚。
ジャパンパイル㈱によるとくい打ちデータ偽装事件を受けて、大手ゼネコン各社からの問い合わせのあった約1000件を調査、マンションなどで16件の偽装、2件のデータ取り違えがあった。(産経新聞 2015.11.14)

ジャパンパイル株式会社(東証一部上場)概要

資本金
10億円

代表取締役 黒瀬 晃(コンクリートパイル建設技術協会会長)

工事件数年間2000件~3000件

施工・製品
1 既製コンクリート杭
(プレボーリング工法)
①Hyper-MEGA工法
②BASIC工法
③GMTOP工法
④MRX工法
⑤STケムン工法
⑥アトラス工法
(中堀杭工法)
①Hyper-NAKS II工法
②Hyper-NAKS工法
③TAIP工法
④STJ工法

2 場所打ち杭
(鋼管場所打ち杭工法)
①ER Pile
②ER PileⅡ
③KCTB)
(アースドリル工法)
①new ACE工法
②Me-A(Multi Enlarged-nodes Ace pile)工法
(オールケーシング工法)
(リバース工法)
(BH工法)
(深礎工法)

3 鋼管杭
関連会社
JPプロダクツ鹿児島株式会社
ジャパンパイル基礎工業株式会社
ジャパンパイル富士コン株式会社
ジャパンパイルロジスティクス株式会社
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