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1、区分所有法第30条3項が追加された経緯及び法の趣旨

平成14年6月17日(月)開催された法制審議会建物区分所有法部会第12回会議議事録では、

「衡平性判断のための要素として、特定の区分所有者が設定を受けた専用使用権等の特別の利益と関連しまして,その区分所有者が支払った対価があるかどうか,対価を支払っている場合には,その金額が衡平性を判断するための考慮要素となるのではないかと考えております。

御承知のとおり,現に衡平性が訴訟で問題となった事案ですが,建物の敷地に設定された駐車場の分譲などのケースでは,その駐車場の分譲を受けた区分所有者は,マンション分譲業者に対してその代金を支払っている場合も少なくないと考えられます。この場合,駐車場の分譲を受けた特定の区分所有者と他の区分所有者との間の衡平性を考える場合,やはりその特定の区分所有者が対価を支払っているという事実は考慮せざるを得ないのではないかということで,衡平性を判断するための考慮要素として挙げさせていただいているものでございます。(中略)この問題は,専用使用権,駐車場専用使用権という問題,平成10年の一連の最高裁判決(平成10年11月9日の最高裁判決の高島平マンション事件)の問題が関連してくるわけですが,最高裁の方からも法改正の方向性が付託されていたのではないかと理解しておりますし,この問題が最も多くの紛争を呼んでいるわけでして,専用使用権問題については別個に具体的な規定を設けるべきだと考えたわけであります。」と説明されています。

そして、法務省民事局参事官 吉田徹著 (改正マンション法) には「今回の改正では、規約の衡平性を判断する場合の考慮要素を列挙し、それらを総合的に考慮して、区分所有者の利害の衡平が図られるように規約を定めなければならないとする規定を新設することにしたものです。なお、規約の衡平性に関して第30条第3項に列挙されている考慮要素は、規約の衡平さや適正さが争われたこれまでの裁判例において実際に考慮された事項を参考にして規定されたものであり、今回の改正も、規約の衡平さに関する従来の裁判上の規範に変更を加えることを意図したものではなく、これを具体化・明確化し、これによって規約の衡平さや適正さの確保を図る趣旨のものです。したがって、改正法の施行後に、規約を新たに設定したり、変更したりする場合には、第30条第3項の適用により、同項に列挙されている衡平性の判断要素を総合的に考慮して、区分所有者間の利害の衡平が図られるように定めなければならないという一般的な義務が課されるとともに、その利害の衡平を著しく害する内容の規約が定められた場合には、同行に基づいて当該規約が無効と判断されることになります。また、改正法の施行前にすでに設定されていた既存の規約についても、同項の適用は排除されていませんから、その内容が区分所有者間の利害の衡平を著しく害するものである場合には、同項に基づいて当該規約が無効と判断されることになると考えられます。」と記載されています。

また、区分所有者が支払った「対価」について次のように説明がされています。

「特定の区分所有者が共用部分を専用使用する権利の設定を受けるなど、その利用について特別の利益を得ている場合には、これに関連して対価が支払われていることが少なくなく、こうした対価の有無及びその多寡についても、規約の内容の衡平性を判断する場合の重要な考慮要素になることを明らかにしたものです。」

要は、区分所有法第30条3項における「対価」とは、特定の区分所有者が駐車場など排他的に利用する権利がある場合にその権利相応の「対価」を支払っているのかどうかを、衡平性を図る上で考慮することであり、分譲価格を対象としたものでななく、マンションの施設等、例えば「他の区分所有者より優先して」利用できるとか、「敷地に特に有利な条件」で利用できる「専用使用権」に対して支払われる「対価」を対象としているのです。
http://mansyon-kanri.com/archives/570

 
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