平成28年(ネ)第3088号・第4212号 不当利得返還等請求控訴事件・同附帯控訴事件

控訴人  KT11名 附帯控訴人 株式会社HC

被控訴人・附帯被控訴人 SDマンション管理組合法人

 

控訴準備書面(1)

 

平成28年11月21日

東京高等裁判所第20民事部イ係 御中

 

上記控訴人ら・附帯控訴人訴訟代理人弁護士 SK

 

同               OA

 

控訴人ら及び附帯控訴人(以下,表記を「控訴人ら」に統一する。)は,平成28年10月31日付被控訴人・附帯被控訴人(以下,表記を「被控訴人」に統一する。)の準備書面(10)について,以下のとおり反論する。

 

控訴人ら及び附帯控訴人(以下,表記を「控訴人ら」に統一する。)は,平成28年10月31日付被控訴人・附帯被控訴人(以下,表記を「被控訴人」に統一する。)の準備書面(10)について,以下のとおり反論する。

 

第1 被控訴人準備書面第2の1について

1 被控訴人は,平成23年規約が「著しく不衡平」な内容の規約ではないと主張し,相変わらず「タイプ別管理費方式」との主張を繰り返すが,かかる主張が成り立たないことは,控訴人ら平成28年9月9日付控訴答弁書記載のとおりである。

2 また,被控訴人の主張は以下に記載する内容においても失当である。

(1) すなわち,平成23年規約(甲17,乙21-3)が決議された平成23年11月6日臨時総会において,被控訴人は住戸を利して店舗に不利益となる規約変更部分について議案の説明を行わず,被控訴人のT現理事長が長大な書面を小さな声で読み流しただけであった。総会に出席した控訴人らさえ,理事長が何を読んでいるのか理解できず,規約変更の内容に気づくことはできなかった。このような状況の中,何の質疑もなく決議された23年規約は,民法,区分所有法,標準管理規約に反しており著しく不衡平である。

(2) 被控訴人は,23年規約において,2.45倍の格差徴収である事実を説明しないまま,27条2項に「別表第4の金額とする」との文言を加筆したところ,規約上住戸を不当に利している条項はこれだけではない。すなわち被控訴人は住戸区分所有者が修繕義務を負い,費用を負担するとされていた給水・下水管等の専有部内配管の故障に関する規定(17条1項及び同条7項)を削除した。

また,専門的知識を活用するという観点から設けられていたはずの36条から「マンション管理士」を削除した。ところが不可解なことに,被控訴人は原審ではTマンション管理士が作成した気積や迷惑料,分譲価格の3要素を考慮した意見書を証拠提出していた(甲48,50)。もっとも控訴審ではその3要素を否定して2.99倍という新たな主張をしている。被控訴人のかかる主張の変遷を見ても,その主張が成り立たないことは自明である。

さらに,被控訴人は,37条四において理事9名以上とされていたものを11名に限定したうえ,同条2項で現住要件を新設して店舗組合員を役員から排除した。

42条2項に会計担当理事規定を設けたにもかかわらず,被控訴人は23年も従前と同じく特に担当理事を任命しなかった。

そして,49条3項三で管理組合解散規程を新設したが,67条では解散時の残余財産の清算について,共有持分に応じて区分所有者に帰属するとしている標準規約や旧規約に反し,分割請求をすることができないとして,店舗に対する2.45倍のうち,解散時にも格差分1.45倍相当の過剰徴収分が没収されることになった。

被控訴人は,17条1項,7項の専有部内住戸負担条項を削除し,60条3項の規定を新設して,理事長の権限で住戸経費を支出し,総会に事後報告するという違法な運用により,実質的に住戸の漏水復旧工事費用負担を軽減している(甲213,214)改正後の収支計算書経費明細表から平成27年第32期4戸95万円,28年33期10戸261万円)。なお,従前管理経費支出は1500万円前後だったが,最近は特別費用を除いて1800万円前後に増えている。これは,保険対応工事等として保険掛け金や保険収入分以上の専有住戸内工事を毎年のように実施しているためである。

72条四④では,電気料(住戸は東京電力と直接契約しているため,管理組合が電気料を徴収する対象は店舗のみである)の余剰金は管理費に組入れると規定して,店舗から電気料を過剰徴収した場合は管理費に一方的に充当されることになった。

(3) このように,すでに控訴人らが控訴理由書28ページでも指摘したとおり,23年規約は標準管理規約だけでなく,民法や区分所有法にも抵触する著しく不衡平な規約である。

控訴人らは総会後に被控訴人が行った違法行為を知り,同月中直ちに口頭や書面で話合いを求め,次の総会においても事前質問書を送付したが,被控訴人が誠実に対応することはなかった。

被控訴人は総会議場において過半数の白紙委任状を獲得していることを背景として,一人3問以上の質問及び過去に承認決議された件についての質問を禁止し,S前理事長は控訴人らに対し「何で理事会に楯突くんだ,この野郎」と恫喝し,T監事は「文句があるなら裁判所に訴えろ」と発言し,組合員である店舗区分所有者の切実な意見や質問を悉く無視しているにもかかわらず,控訴人らの言動をパワハラと決めつけ,10年以上も住戸区分所有者である固定役員が数の力で少数店舗を圧倒してきたものである。

23年規約で会計担当役員に関して規定を設けながら経理担当役員を選任あるいは公表せず,上記に指摘した数々の違法な条項がある平成23年改訂規約による管理運営の結果がどうなったのか,被控訴人の現固定役員らが就任する前と後の管理費会計の支出推移を元に以下検証する。本来,マンションの管理費会計は固定収入と固定経費なので毎年殆ど変らないのが一般的であるが,被控訴人の現役員らが固定メンバーとなってからはなぜか激変していることがわかる。

すなわち,被控訴人の現役員が取仕切る前の平成16年総会で承認された15年度21期決算までの管理費支出は1200万円台だったが,S元監事が「承認できない」と監査報告した平成17と18年の両総会に提出された16年度22期と17年度23期及びY監事が承認した平成19年総会提出の18年度24期の連続3期分はいずれも管理費剰余金の処分議案がなく,会計記帳操作による虚偽決算書だったが(甲197~199),管理費支出は1800万円台~1900万円に跳ね上がった。普通決算に戻った平成20年総会19年度25期からは1500~1600万円台に下がった。ところが,平成23年規約改定後平成24年総会提出の29期から1600~1700万円台に上昇し,直近の平成28年総会提出の27年度33期決算書では2009万円となり,裁判にかかる特別費用を除いても1800万円以上となり,上記虚偽決算3期の支出と同規模に膨れ上がってきた。このようなあり得ない管理経費支出の激変が,本件管理費等裁判事件の背景にある。

一方,長期修繕計画表においてもさらに多額な虚偽記載が横行している。被控訴人が引用する甲55の長期修繕計画表は平成25年1月に作成されたものであるが,同25年の修繕積立金の繰越残高が-4877万円の赤字と記載されている。一方予算案の残高は9079万円,決算書の残高は9590万円である。甲55は,計画当初から1億4467万円も過少に粉飾した虚偽の長期修繕計画書である。これらの被控訴人の粉飾予算案決算等の虚偽行為による違法な管理運営の実態については,以下被控訴人の主張に対する反論の中で詳述する。

 

第2 2.99倍という主張について

1 はじめに,被控訴人が主張する現行の長期修繕計画とは,平成25年1月翔設計作成によるものを指す(甲55)。これは,控訴人らが本件に関して平成24年に調停を申し立て(東京簡易裁判所平成24年(ノ)第334号),調停が不調となった後平成25年1月4日に提訴した後に作成され,同年2月23日19時30分からの長期修繕計画案説明会の直前に会場受付で配布された。控訴人らが甲136の6で提出したさんろーどダイヤモンドマンションニュースにも,提訴を受けて計画案内容を詳細に協議した旨記載があるように,甲55は本件提訴を踏まえて作成されたもので,裁判用に内容が操作された可能性が高い。

2 一方,平成18年に行われた修繕積立金を12.5倍値上した決議の根拠とされたダイワード株式会社作成の大規模修繕計画(甲5)による30年間の費用累計額は13項目で6億9795万円である(これも内容として問題がないわけではないが,本件提訴前に作成された計画であるという点で甲55よりは信用性が高い)。この概算金額は工事内訳明細の合計金額であるから,工事明細の項目ごとに計算していけば住戸と店舗の負担割合が明確になるところ,被控訴人はこれを敢えて引用せず,店舗特有の「特別管理経費」を割り出すことはできないと結論付けている。しかしながら,工事明細を添付せずに負担割合を割り出すことはできないというのは恣意的に主張を操作しているからに過ぎない。

3 さらに,被控訴人は,10月31日付準備書面(10)4ページにおいて,平成23年から30年間の現行の長期修繕計画(甲55)で予定されている設備の修繕費用の概算として,

修繕費用:住戸87,111,000円 店舗33,093,000円

単価  :住戸13.5円       店舗40.4円

と計算しているが,甲55は既述のとおり本件提訴後に作成されている証拠であって,それ自体信用性が低いことのほか,以下の通り理由がない。

(1)  修繕工事本体の建築工事費及び消防設備費を除外していること

設備直接工事費用(消費税除く)1億2020万円(住戸系設備8711万円と店舗系設備3309万円の合計)は甲55の修繕費総合計7億8467万円に対してわずか15.3%のみである。被控訴人は全体修繕計画の84.7%,6億6447万円にあたる修繕工事本体の建築工事の内店舗に係るシャッター工事以外の全部を,消防設備の全部,そして衛生設備・電気設備など修繕工事のほとんどを省略している。

つまり,甲55はⅠ建築,Ⅱ設備の大項目で構成されている。Ⅰの建築は,仮設,下地補修,シーリング,外壁等塗装,鉄部塗装,防水,クリーニング,その他の中項目に区分され,さらにその中に65項目の工事項目がある。また,Ⅱの設備は,同様に衛生設備・消火設備,電気設備に区分され,その中に26項目の工事項目で構成されている。つまり,建築と設備合計で91工事項目あるのである。

ところが,被控訴人が算定対象とした工事項目はわずか13工事項目に過ぎない。

すなわち被控訴人が主張する2.99倍は,工事項目においてもわずかな部分の工事範囲のみを算定した(13÷91=0.14=14%)ものであり恣意的というほかなく,論外である。

念のため末尾に甲55の工事項目を記載する。被控訴人の主張がいかに恣意的かつ偏頗なものか,被控訴人が準備書面(10)で算定対象とした工事項目を別紙に赤字で示した。ほとんどが省略されているのが一目瞭然である。

(2)被控訴人が主張する複合用途型マンションにおける費用構造は、全体共用部分、住宅一部共用部分、店舗一部共用部分のそれぞれについての特別の管理に要する費用から構成されており、これに対応して、住戸は全体修繕積立金の分担と住宅一部修繕積立金とを負担し、店舗は全体修繕積立金の分担分と店舗一部修繕積立金とを負担することとされている(甲57の25条、26条)。

ところが、被控訴人は、「設備に関しては、工事項目が住戸や店舗といった用途ごとに分別されているものがある」として、そのように「分別されているもの」だけを取り出して、金額の比較をしているだけであり、自ら本件マンションを複合用途型マンションであると主張していることとも矛盾している。

(3) また甲55は,提訴後の平成25年1月に作成された後付資料であるが,通常は作成された年度以降の30年間とされるべきであり,期首の積立金残高は予算案或いは決算書の残高と同額でなければならない。ところが既述のとおり1億4000万円以上も過少の赤字記載となっている。その上,作成された年から2年遡った平成23年から30年間の変則的な修繕計画としている。これは,平成23年春に大規模修繕工事が完了して支払い済の費用(1億8760万円)を平成25年に作成した甲55において修繕計画費用に取り込んだからである。その結果,被控訴人は25年から28年後となる平成52年の工事費累計を7億8487万円に嵩上げした。なお,計画作成年である平成25年の積立金を虚偽の-4870万円ではなく正しく決算書予算案の9080万円とした場合にはさらに1億4000万円も積み上がって10億4000万円以上になる。そうなると平成18年に修繕積立金を12.5倍に値上げした根拠とした6億9000万円からさらに3億5000万円も過剰となることが露見することになる。それが変則的に過去2期も遡った理由である。

この件について控訴人OSは同25年3月16日付で被控訴人と管理受託会社日本ハウズイング宛に内容証明郵便物を発送した(甲136の4)。その中で同OSは,同年25年2月23日開催の長期修繕計画説明会公開質問書を提出したが,②で管理費剰余金を入れると10億4005万円になり,③で平成18年修繕積立金12.5倍値上根拠の6億9176万円に対しては3億4829万円過剰になることを質問し,④で質問に対して修繕委員長であるT副理事長がわからないとして回答せず,K理事の大声での発言阻止と時間切れにより強制終了となり,⑤で平成25年3月4日発行ニュースには当日の「表題からは外れる意見」と虚偽記載をして質疑事項を全く記載しなかったことを記載した。

修繕積立金収入累計(現状)を9億518万円に縮小して虚偽記載しなければ,同小嶋の質問は修繕積立金累計10億4000万円に管理費剰余金1億3487万円(直近5年平均剰余金481.7万円の28年分の合計)が上積され,合計は11億7000万円以上になっていたものであり,平成18年長期計画(甲5)より5億円近い過剰徴収となる実態が追及されるところであった(甲55)。このように5億円もの過剰徴収(支出実積は34年で3億円以下なので過剰の実態は8億円)を修繕積立金の過剰徴収を隠蔽するために,被控訴人は毎年ひたすら粉飾予算案決算を繰り返し,虚偽の議事録や虚偽の繰越残高や虚偽の利益処分(案)として残高を少なく見せかけ,剰余金処分審議をせず,あるいは実施しない修繕計画を毎年記載して修繕工事費を過大計上し,住戸内工事費を管理費から支出し,裁判をいたずらに長期化させて特別裁判費用を10年近く支払っても剰余金が出るという異常な管理運営を10年以上長期固定メンバーで強行しているものである。

その中で,被控訴人は,工事が終了したものについては意図的に金額を改竄し,店舗が負担する必要のない部分を店舗負担として加増し,負担割合が少ない児童館(0.5~0.6)を住戸に組み入れるなどして意図的に住戸負担を軽減し,無理矢理に2.99という格差を捏造している。

以上のとおり,提訴後に過去に遡って工事費を嵩上げした虚偽の長期修繕計画甲55を引用し,住戸にかかる費用を恣意的に省略したり,店舗にかかる費用を増加させたりした「2.99」という数値には何ら根拠がないことは明白である。繰り返しになるがこれまで被控訴人は,乙48では,気積1.43や分譲価格1.38なる要素を考慮したとして児童館0.63住戸1.0に対して店舗2.65と主張し(足しても掛けても2.65にはならないが),乙50では迷惑料1.12倍や気積1.215なる要素を考慮したとして住戸1.0に対して店舗2.45(児童館の記載は無)に下方修正し,違法な店舗格差2.45倍を正当化する根拠として証拠提出してきたものである。

したがってこれら考慮すべきと主張した3要素をすべて除外した今回の被控訴人準備書面では,店舗との格差はさらに下方修正されて然るべきところ,反対に2.99と格差が拡大したことは明らかな矛盾であり,被控訴人の主張は完全に破たんしているというべきである。

なお,以下に住戸・店舗の負担割合における被控訴人主張の不合理な変遷を一覧表にして示す。

児童館 住戸 店舗
現在の負担割合 1.00 1.00 2.45
乙48 0.63 1.00 2.65
乙50 表示なし 1.00 2.45
被控訴人準備書面(10) 住戸に含める 1.00 2.99

また,住戸と店舗の負担割合を決める重要とされた各要素の変遷は以下のとおりである。

迷惑料 気積 分譲価格
乙48 数値無 1.43 1.38
乙50 1.12 1.215 数値なし
被控訴人準備書面(10) 数値なし 数値なし 数値なし

 

第3 被控訴人準備書面(10)6ページから28ページについて

1 出入口と中通路について

被控訴人は,出入口と中通路の境界に設けられたバリカーが,車両の進入を防ぐためにあるなどと強弁しているが,失当である。

甲93の写真を見れば明らかなように,中通路には22cmの段差があり,もともと車両が進入できるような形状ではない。被控訴人の主張は客観的な事実を無視した空論である。

また,被控訴人は,中通路は店舗の従業員や顧客が利用するとして,その費用負担は店舗が負担すべきであると主張しているが誤っている。すなわち,①中通路は通り抜けられる構造となっており,中通路と接続する西側ピロティは自転車置き場となっている。そして②中通路は住戸・店舗関係なく誰でも通行でき,自転車の通行もできる。さらに,エレベーター改修工事時に通路一部が資材置き場として利用されたこともある。以上のことから,中通路は構造上,利用上のいずれの直面においてもマンション全体で利用する共用部分である。

2 テナントの状況について

被控訴人は過去における店舗のテナントについて主張するが,少なくとも平成14年以前の状況は,本件と無関係であるし,平成18年・19年に発生したボヤ騒ぎは,店舗から出火したからといって特に大きな事故になったこともなく,住戸からの出火件数との比較において議論しないのも管理費の負担割合という観点からは著しく不公平である。

なお,被控訴人が指摘するように頻繁に店舗が入れ替わる経緯は,端的に多数の来客がないことの証左であるところ,かかる意味でも店舗に2.45倍の管理費等を負担させる理由はない。

3 防火シャッター及び自動火災感知器について

被控訴人は感知器,地区音響装置,発信機の設置数において,店舗が住戸より多く,その定期点検,維持修繕の負担がかかると主張している。消防設備についても一部分の項目のみを取り出し,店舗に費用がかかる旨連呼するのは被控訴人の常套手段であるが不合理である。

すなわち,控訴人らは既に原審控訴人準備書面(4)26ページ,甲80の1,甲85において管理費会計である通常の管理費の負担を算定している。そして修繕積立金会計である修繕費の負担割合は,控訴人準備書面(4)25ページ,甲113において論証済みである。

なお,被控訴人は,控訴人らの強硬な反対により消防設備点検の実施が先送りされているなどと主張しているが,責任転嫁も甚だしい。被控訴人は消防法で定める消防用設備等点検結果報告書を消防署に対し平成25年,平成26年の2年分提出していない。さらに,平成23年消防用設備等点検結果報告書では防火シャッターが不良となっており作動しないことが報告されていた。また,平成27年7月15日提出の消防用設備等点検結果報告書で防火シャッターが正常に作動することが報告された。すなわち,被控訴人は少なくとも3年にわたり,人命に多大な影響を及ぼす防火シャッターが作動しない状況を放置していたことになる。かかる管理義務違反を棚上げし,控訴人らを非難するのは的外れである。

4 キュービクルについて

 

被控訴人は,平成17年度~同27年度の自家用受変電設備使用電気量について共用部と店舗との割合を1対9とし、使用割合の実態はむしろ店舗のみが使用していると主張するが以下の通り虚偽である。

第一に、総使用量(共用+店舗)と東京電力が計上した総使用量は一致するはずが,差が生じている(平均年17,007kwh)。かかる不明分は区分所有法9条の趣旨に倣えば,共用部分で負担すべきものである。そうすると共用のみで12,556kwh+不明電気量17,007kwh=29,563kwhとなる。29,563kwh/141,796kwh(10年平均?)=20.8%となり,10%というのは明らかに過少である。

第二に、被控訴人は、共用と店舗割合を算出するにあたって、管理人が検針した子メータ

ーの合計を総使用量と偽って分母としているが、東京電力計上の総使用量を使用しない時点で誤りである。

第三に、東電請求総使用量と子メーター検針合計の差である不明分使用量(控訴人は被控訴人の直結使用量であると考えている)を除外して、共用部合計使用量を過少にしている。

次表は被控訴人準備書面(10)14頁を転記しつつ、控訴人においてa期間5年、b期間6年の平均と不明(直結)分と、不明分と店舗のみとの共用直結合計を追加記載したものである。

 

自家用受変電設備使用電気量(平成17~27)
項目 合計kw 合計kw 5年平均 6年平均 11年平均 共用と店舗の割合
a b a b a b
東電使用量 755106 804646 151021 134108 141796
総使用量 649648 723036 129930 120506 124789 86% 90%
共用のみ 51655 86460 10331 14410 12556 7% 11%
店舗のみ 597993 636576 119599 106096 112234 79% 79%
共用直結合計 157113 254530 31423 42422 37422 21% 32%
不明(直結)分 105458 168070 21092 28012 24866 14% 21%
a平成17年~21年 b平成22年~26年

被控訴人は、自家用受変電設備使用電気量(平成17年度~同27年度)一覧表において,被控訴人は,期間a平成17年1月~21年12月分の5年分の共用のみ使用量を51,655kwとし,期間b平成22年1月分~27年12月分の6年分の共用のみ使用量を86,460kwとして年平均使用kwを12,556kw(割合10%)と記載している。

被控訴人が提出した表では分母が管理人による個メーターの検針結果が採用されているが、これは前述のとおり過小な総使用量であり、控訴人は東電使用量を総使用量として、これを分母に使用割合を算出した。これによれば、不明(直結)分割合は14%から21%と変化し,共用のみ使用量は7%から11%に変化する。使用設備(通路天井照明、管理人室)も使用時間もa 期間とb期間で同じ場合,共用部使用量がこれほど変化することはあり得ない。

一方、店舗割合はabともに79%であり使用割合に変化は無いことが分かる。共用のみと不明(直結)分、その合計に変化が著しいのは、被控訴人の計算方法(分母を過少な虚偽の総使用量とする)は誤りであるからである。

したがって、被控訴人はa bを別々に表示せず11年間合計での表示しか記載しなかったものである。

このように,被控訴人は東電請求の総使用Kwを総使用Kwとせず,子メーターを経由しない直結使用(不明)分を除いた過少な管理人検針合計Kwを総使用kwと偽り,さらに末尾に詳述の通り平成18年からは一階通路等の共用部使用量kwを10分の1に改竄低減するようになって共用のみ使用量がa7%,b11%と減少し,反対にその共用使用減少分が不明使用量分に加算されて直結使用分がa14%,b21%と多くなるのである。

被控訴人はこれらの共用部低減改竄の他に,店舗所有者との契約無く手数料と称して年間約10万円(月間約8000円)を上乗せするなどして共用部使用料金の殆どを店舗に上乗せ徴収してきており,原告102号室が提訴してから3年以上支払いを留保し,本年1月からは10店舗組合員が支払いを留保している。

これに対して被控訴人は平成26年には誤検針があったとして一部30万円ほどを返金し,さらに本年10月22日には誤請求があったとしてお詫び文書を配布したことは違法な過剰徴収の事実を証明するものである。しかし,いずれもどう誤ったのかを説明しておらず,被控訴人には誠実に共用部電気料を清算する意図は見受けられない。

5 合流桝について

被控訴人は合流桝が陥没したのはエアコンの室外機の設置によるなどと主張している。しかし,エアコン室外機の重量はたかだか20kg~35kgである。一方自動車の重量は1t~2tである。そうすると自動車の一本のタイヤに掛る重量は250kg~500kgである。このことからも,犬走が陥没する原因は自動車の乗り上げであることは明白であり控訴理由書11頁及び甲95で立証済みである。また,合流桝の開閉不良については経年劣化が理由である(控訴理由書12頁)。そして,被控訴人は24個の合流桝(1階廻りマンホールハッチ)の交換をしたとしているが,経年劣化による錆びた開閉しづらい鉄製の枡をステンレスにグレードアップしたものであるに過ぎない。控訴人が小田急建設見積書(甲101)を基に負担割合を算定した検討書3(甲113)P31では、住宅を1とした場合店舗は0.63の結論に達している(甲113P1)。被控訴人は、犬走及び合流桝の費用負担は全て店舗部分の負担であるとし、犬走りタイル張替による全体の枡交換を長期修繕工事から外して別途に追加工事として発注したように仮装し,全額を店舗負担と処理したことは裁判対策用の恣意的な後付の操作としかいいようがない(甲215)。

また,被控訴人は,合流桝には店舗からの雑排水等が流れているとしているが,事実に反している。9階屋上から,そして各階住戸のバルコニーを経由して雨水が排水される管が,1階の店舗雑排水管と建物内で接続されることは構造的,設計的にあり得ないことである。それは上階の水圧のかかった雨水が1階店舗の雑排水管に逆流し,噴き出すことを避けるためである。

6 看板について

被控訴人は,看板について広告設置料を支払うことが一般的であると述べながら,自ら管理規約72条を引用し,看板の設置を許容する規定があることを認めている。

一方,児童館については「公共の施設」であることを理由に管理費等の負担は住戸と等倍で良い旨主張する。

しかしながら,自ら72条の存在を認めつつ,マンションやビルの外壁,屋上などについて看板を設置する場合,広告設置料を支払うことが一般的である旨主張し,一方において児童館の優遇措置を認めるのは,矛盾している。そもそも屋上設置の看板や月額数万円の広告料などという被控訴人の主張は,商業地の雑居ビルと本件マンションのような共同住宅とを混同しているものと思われる。

しかも,公共施設であることで,他の店舗と児童館との差別的取り扱いを正当化するのは,もとより管理規約にも根拠はなく,自らの恣意的な運用を糊塗する強弁というほかない。

7 美観・イメージについて

被控訴人は,バルコニーに洗濯物を干すことは,専用使用権に基づく行為である旨主張しつつ,これまた自ら管理規約使用細則10条を引用し,バルコニーに洗濯物を干すことが禁止されている旨認めている。これも矛盾である。いずれにせよ,住戸区分所有者がバルコニーに洗濯物を干していることは事実であり,美観やイメージとの関係で,管理費等に格差を設ける理由を見いだすことはできない。

8 防犯カメラについて

防犯カメラが設置されている場所はいずれも共用部分であり店舗があるために防犯カメラが必要ではないことは控訴人控訴理由書16ページで論証しているとおりである。

なお,被控訴人は店舗があることにより住戸居住者の安全が日々脅かされているなどと主張しているが,実際に具体的にどのように脅かされているのかについて事例を示していない。被控訴人は繁華街の雑居ビルと本件マンションを混同している。

9 損耗劣化の度合いについて

被控訴人は,中通路テラゾーブロックに,亀裂が複数散見されるとしているが,原審原告準備書面(7)3ページ上段でも述べているように,亀裂ではなく,石目模様である。

なお,既述のとおり,中通路は構造上そして利用上マンション全体の共用部分であるから,その費用負担が店舗にあるとする被控訴人の主張は誤りである。

10店舗利用者の通行について

被控訴人は甲122の1の2ページ末尾において1階店舗区分所有者全員が不特定多数の出入りを認めているなどとしている。しかしながら,事実として不特定多数の出入りがないことは,既に提出したDVDや写真が示すとおりである。しかも,被控訴人は本件マンションを繁華街の雑居ビルと混同し同列に扱っているが,事実を踏まえない主張であり理由がない。

11騒音等について

本件マンションの過去における騒音等を論じても意味はない。現在の本件マンション店舗・事務所においては近隣又はマンション上階に迷惑等を及ぼしているなどの報告は総会において議題にもなっていない。

なお,騒音等の問題はマンション管理の問題であり,管理費等に格差を設けて良いという問題ではない。仮に騒音等があるのならば,まずは管理組合法人として総会で報告し,その対策をどうするのかなどの話し合いを設けるべきである。

12管理費と修繕積立金の混同について

被控訴人は,修繕積立金が「管理費では賄いきれない部分のために積み立てるもの」であると主張し,管理費に比例するものである旨強弁するが,修繕積立金について,管理規約に反し,自らに都合のよい定義を設定する独自の議論であり,失当である。

なお,被控訴人は,本件マンションが複合用途型であることを繰り返し強弁するが,本来複合用途型では店舗と住戸にかかる費用を峻別して計上することが予定されている。ところが,被控訴人は「店舗特有の特別管理経費を割り出すことはできない」と自ら述べているのであり,この点でも被控訴人は矛盾を来している。

 

第4 被控訴人準備書面(10)29ページ以下について

1 原始規約における修繕積立金の定め

被控訴人は,30年以上前の竣工以前に作成された管理費の10%と定められた修繕積立金(当時は補修積立金)が絶対的根拠であるかの如く主張するが,誤りである。なぜならば,30年後の現在までに3億円弱の修繕工事費が計上されている以上,実際にかかった費用割合で店舗と住戸負担を定めるべきであるからである(標準管理規約複合用途型でもそのように定められている)。

控訴人らは,本件においては,住戸1に対して原告準備書面(4)において翔設計の長期修繕計画(甲55)を引用し,店舗負担は0.76,総会承認された小田急建設(株)見積書による実施段階では0.63であることを住戸・店舗割合に関する検討書3(甲113)を主張立証した。

なお被控訴人は,店舗特有の特別管理経費(長期大規模修繕費用)を割り出すことはできず,現行の長期修繕計画を前提に大規模修繕費用について住戸と店舗とで平米単価を算出した場合も店舗が約2.99倍高いと主張するが,これが被控訴人の従前の主張と一致しないものであることは既に指摘したとおりであり,実際に支出した修繕工事経費の全体で店舗に2.99倍もかかった事実もない。被控訴人の主張は失当である。

2 マンション自治について

被控訴人は,住民自治の下,区分所有者の完全なボランティアにより運営されている自治組織であると主張する。しかしながら,特に平成18年以降は住戸だけのための偏った管理運営となり,店舗から2.45倍の管理費修繕積立金及び過剰な電気料の徴収をしながら役員資格をはく奪するなど,店舗の自治はおよそ民主的なものではなく,被控訴人の主張に正当性はない。

なお,被控訴人は,平成23年12月10日の「拡大理事会」に出席した者がSK理事長以下5名としているが,同理事長及び日本ハウズイング社員は出席しておらず,出席者は4名のみであったので事実に反する記載である。

3 控訴人らのハラスメント行為について

控訴人らが提出した100通を超える質問状について,被控訴人はハラスメントであるとして,ボランティア精神を貫く役員は病気になったり体調を崩したりする程気の毒な状況であると主張するが失当である。過去34年で3億円弱の修繕工事費を支出してきた実績に対して,被控訴人は平成52年までに9億円以上の修繕積立金(実質的には10億円以上)徴収を強行しようとしている(甲55,長期修繕計画書)。役員は全員住戸区分所有者であり,2年の任期規定を無視してほとんどの者が10年以上連続して就任している。病気になったり体調を崩したりしてまで役員を独占固守する理由は決してボランティア精神などではなく,何億もの巨額の粉飾予算・決算や残高不足と偽って作成した長期修繕計画により30年で10億円もの違法徴収と工事費割増発注(キックバックをも疑わせる)等を隠蔽あるいは糊塗するためとしか考えられない。

4 本件の本質について

本件の本質は,本件マンション管理組合がボランティア団体ではなく巨額の利権集団と化していると疑われることにある。すなわち,被控訴人はこれまで,少数店舗から住戸と2.45倍の管理費等を過剰徴収し,管理費剰余金(毎年400万円)を発生させ,少数区分所有者の駐車場賃借権をなくして管理費を使用料として10倍に値上げしたうえ,さらに修繕積立金を12.5倍に拡大した(毎年2500万円)。これらを背景にして,被控訴人はいずれも住戸用の設備であるエレベーター更新工事や給水管更新工事において5割もの割増発注工事を行った。さらに被控訴人は毎年資金不足を装った粉飾予算決算を継続している。予算案の粉飾総額は平成20年~24年だけでも累計3億円以上になる(乙91-3控訴人102号室ディスプレイ参照)。

また,既述のとおり甲55の長期修繕計画表は平成25年1月に作成されたものであるが,-4877万円の赤字と記載された同計画の残高は,9079万円と記載された修繕積立金残高予算案を全く無視しており,決算修繕積立金残高9590万円との整合性もない。被控訴人は,計画当初から1億4467万円も過少粉飾した虚偽の長期修繕計画書を作成しながら区分所有者に事前送付もせず,同25年2月23日の午後7時半からの説明会受付で配布し,わずか1時間半で午後9時に時間切れとして説明会を強制終了した。被控訴人は同年3月30日開催の第30期総会でこの計画を強行採決したものである(甲136の5,甲137の1)。

被控訴人は,工事見積書や発注書・契約書等の閲覧をさせてもメモを禁止し,控訴人ら店舗区分所有者が被控訴人に委託している電気料に関しては,東京電力による被控訴人に対する月額請求額や電力使用量を控訴人らに通知せず,本来の基本料金に上乗せした上,別に自らの手数料を上乗せし,被控訴人が負担する共用部の使用電気量を10分の1に改竄低減して10分の9相当分を店舗負担として転嫁しようとするなどの背任行為とも評価すべき行為を強行している。このようにして過剰に徴収した店舗電気料は「店舗電気料余剰預かり金」として決算書に記載した年度もあったが,平成18年以降は簿外処理を疑わせる年度もある。いずれにせよ控訴人の調査では10年間で460万円に及ぶ過剰徴収になっている。

5 100通を超える質問書や看板に関する責任転嫁について

控訴人らがこれまで100通を超える質問書を送付したり102号室店舗ディスプレイ看板を設置したりしている理由は,このような被控訴人役員らの違法行為や不正行為が提訴後5年間も改められないことが原因である。根拠なく約2.45倍の管理費・修繕積立金や違法に上乗せ電気料金を徴収されてきた店舗区分所有者からあたかも嫌がらせを受けているかのように責任を転嫁する被控訴人の主張は失当である。

質問書や看板は,計画的かつ複合的な被控訴人の義務違反等の違法行為の事実を指摘しているものであって,事実誤認や単なる憶測に基づく誹謗中傷ではない。被控訴人らが名誉棄損と主張するのであれば,これらの指摘事実を放置せず,何が名誉棄損や誹謗中傷なのか身の潔白を示すべきである。

6 395万円不明金処理等の責任転嫁について

被控訴人は,不明金約395万円に関する責任が当時監事であった控訴人STにあると主張する。しかしながら,決算書の作成者責任者は被控訴人であり,決算報告者は経理担当理事あるいは理事長であって監事ではない。しかも平成17年5月の通常総会で控訴人STが監事として提出した平成16年度監査報告書には冒頭「平成16年1月~12月までの会計検査を実施した結果,監査否認の項目が多々あり,本来であれば承認できませんが,定期預金及び預金通帳の決算残高については確認しました」として,監事として決算書を承認できない旨を記載し,判断を総会に委ねている。平成18年総会の監査報告書も同様であり(甲216,217)。監査報告書)控訴人の主張は,責任転嫁に外ならない。

 

7 平成13年規約が成立していないことについて

被控訴人は,平成13年規約は総会承認がなく不成立であるとし,平成18年変更決議までは原始規約のみが有効だったと主張する。陳述書乙94(1)によれば,竣工当初から昭和59年5月までは分譲主丸善建設から管理業務を委託されたTNSサービス株式会社が管理者として管理運営を行っていた。昭和60年5月までは故K理事長,平成12年12月頃まではN理事長であったが,この間の15年間に総会を開催したのは平成11年の1回のみで理事会の開催もなかったので平成13年規約は総会決議を経ていないから無効であるというのである。

しかしながら,そうすると,平成16年の管理組合法人登記の際に登記所に提出された規約と総会決議の議事録は何であったかが問題となる。なぜならば,管理受託会社TNSサービス(株)を管理者と定めた原始規約(乙6)では管理実態に合わず,平成13年規約によって平成16年に法人登記がなされ,平成18年の総会招集が行われたと理解できるからである。平成18年決議の規約まで自主管理規約に相当するものは何もなかったとする被控訴人の主張には無理がある。

一方,原始規約第36条には,「この規約の発行は,区分所有者全員の承諾を必要」と規定しているが,区分所有者全員の書面による承認書が被控訴人から開示されたことはなく,そもそも竣工5年後の昭和62年頃まで未売却の空き店舗があったことから,承諾書などないことが想定される。昭和59年5月ごろTNSサービスは夜逃げ同然に管理委託契約を解消し,店舗電気料に関する徴収規定もなく,経理等の引き継ぎも無かった管理組合が,いつ第一回の管理組合設立総会を開催したのかも不明なのである。

したがって,有効に発行した原始規約はないといわざるを得ない。原始規約を有効とする被控訴人の主張は失当である。

8 業務用電力に対する管理費の支出について

被控訴人は昭和59年5月までのTNSサービス管理受託時代から今日に至るまで店舗電気料支払規定が存在しない事実,TNS時代に店舗使用料金を徴収していなかった事実について反論をしていない。したがって,約2.45倍の管理費は当初は電気料金込みであったとする控訴人ら主張が立証されたものといえる。

別件にて電気料に関して不当利得返還請求訴訟が東京地裁に係属中であるが,単純に東京電力の請求単価を超えた被控訴人の過剰徴収金額は原告である102号室1店舗で20万円(8年間合計:平成17年~24年)月額平均25000円であった。19店舗全体では毎年40万円~50万円の共用部負担金を店舗に転嫁してきたとの原告指摘に対し,被控訴人(被告)は48か月間共用部電気使用量を10分の1に改竄したことを「誤検針」と称して返金し(平成26年度甲218),本年10月には数か月間の「誤」請求を詫びる文書を通知した(甲219)

9 複合用途型と平成18年規約について

被控訴人は,平成18年規約の文言が「共有持分に応じて算出する」(乙16の第25)となっているのは,改訂規約の作成者が当時国交省より公表されていたマンション標準管理規約(単棟型)と同じ文言を使用した管理会社の素案に従って,この文言を使ってしまったために過ぎないと主張するが失当である。

なぜならば,平成17年1月22日理事会議事録には,管理組合法人について法務局にて確認した事項が記載されている。すなわち,マンション標準管理規約(複合用途型)参考に管理規約を検討し改定していく,とされ,他の話合われた案件として,現規約の改定について,店舗付き複合用途型規約への改定に関しては理事会の賛成と臨時総会において詳細審議が必要である,とのU氏らの発言記録がある。被控訴人現理事役員がそれらの発言やアドバイスを受け入れず,単棟型を採用したことがわかる。

その後は複合用途型にする旨の議案はなくなり,単棟型で決議することになった経緯を説明する議事録もないままに平成18年決議規約は決議されたのである。

被控訴人が住戸店舗の複合用途型規約としなかった理由は,複合用途型規約では,管理費および修繕積立金の支出割合と負担割合を用途別に算定することが大前提であり,そうすると店舗支出割合が住戸よりも少なく,店舗負担割合を2.45倍とする根拠は何もない事実が露見してしまうからである。

店舗負担割合を2.45倍とする文言を規約に入れるとすれば,「それなら複合用途型でなければおかしい」という議論が噴出することになる。そこで被控訴人は,支出割合も負担割合も算定する必要のない「共有持分に応じて算出する」とする単棟型規約を採用せざるを得なかったものである。管理会社の規約作成担当者の文言をそのまま使ってしまったとする被控訴人の主張にはまったく理由がない。

 

第5 結語

以上のとおり,被控訴人準備書面(10)に記載された主張には,理由がない。

以  上

末尾添付資料 修繕工事の工事項目(建築と設備合計で91項目)

Ⅰ建築
修繕周期 設計概算工事費 2040年までに要する修繕金額
建築 仮設 共通仮設 12年 4,604 9,208
直接仮設 12年 12,942 25,884
直接仮設(西壁) 12年 376 1,128
下地補修 コンクリートモルタル面・その他 12年 6,134 12,268
コンクリートモルタル面・その他(地下駐車場) 12年 778 2,334
磁器タイル面 12年 11,232 22,464
磁器タイル面(西壁) 12年 1,280 3,840
被り不足解消等 1,125
シーリング タイル面 12年 4,706 9,412
タイル面(西壁) 12年 222 666
塗装面 12年 2,657 5,314
その他 12年 1,276 2,552
その他(西壁) 12年 10 30
外壁等塗装 一般外壁面 12年 4,199 8,398
地下駐車場壁面 12年 960 2,880
上裏・ボード面 12年 2,371 4,742
タイル外壁面 12年 5,884 11,768
鉄部等塗装 屋上・屋根(高架水槽,手摺,階段他) 6年 162 810
屋上・屋根(架台,配管他) 6年 253 1,265
廊下(玄関扉,消火器ボックス他) 6年 1,195 5,975
廊下(手摺) 6年 845 4,225
バルコニー(パーテーション他) 6年 646 3,230
12年 1,136 2,272
渡り廊下(上裏) 6年 66 330
A階段 6年 767 3,835
B階段 6年 930 4,650
エントランス 6年 46 230
外部(アーケード,駐車場扉) 6年 56 280
外部(駐車場) 6年 397 1,985
外部(シャッター) 6年 407 1,628
外部(防火シャッター内部通路側) 6年 482 1,928
外部(防火シャッター駐車場) 6年 73 292
防水 塔屋屋根防水 12年 162 486
北側屋上屋根防水(全面更新) 24年 2,125 2,125
同上   (部分補修) 24年 1,156 2,312
南側屋上屋根防水(全面更新) 24年 4,912 4,912
同上   (部分補修) 24年 2,467 4,934
5階屋上屋根防水(全面更新) 24年 1,362 1,362
同上   (部分補修) 24年 760 1,520
5階ルーフバルコニー防水(全面改修) 531
同上   (全面更新) 12年 450 900
斜壁部ルーフバルコニー防水(全面更新) 2,633
同上   (全面更新) 12年 2,379 4,758
1階店舗屋根防水(全面更新) 12年 1,289 3,867
1階店舗屋根防水(児童館前) 12年 391 1,173
バルコニー床防水(全面更新) 24年 7,785 7,785
同上   (部分補修) 24年 5,701 5,701
開放廊下床防水(全面更新) 24年 6,506 6,506
同上   (部分補修) 24年 4,146 4,146
渡り廊下床防水(全面更新) 24年 118 118
同上   (部分補修) 24年 34 34
屋上塔屋階段床防水工事(全面更新) 24年 158 158
同上   (全面更新) 24年 113 113
駐車場,ゴミ置場脇階段防水(全面更新) 24年 166 166
同上   (全面更新) 24年 121 121
トイレ脇,2階階段防水(全面更新) 24年 173 173
同上   (全面更新) 24年 141 141
大庇防水(全面更新) 12年 108 216
小庇防水(全面更新) 12年 70 140
梁天端防水(全面更新) 12年 227 454
斜壁タイル面防水(全面更新) 24年 4,584 4,584
同上   (部分補修) 24年 1,279 1,279
エレベーターホール床防水(全面更新) 24年 419 419
同上   (部分補修) 24年 36 36
クリーニング クリーニング 12年 1,160 2,320
クリーニング(西壁) 12年 32 96
その他 ポスト交換 1,889
雑工事 4,499 250
バルコニー手摺更新 15,478
ゴミ置場改修 938
追加工事A 5,965
追加工事B 417
屋上階共用廊下部通気管改修 240
シャッター交換(外部側)9戸 2,700 2,700
防火シャッター交換(内部通路側)11戸 9,900 9,900
防火シャッター交換(駐車場)1所 1,300 1,474
駐車場ブロック壁撤去新設 240 240
事務所(集会室)の改修 2,583 2,583
Ⅱ 設備
衛生設備・消火栓設備 共用給水設備 給水方式変更 59,590 59,590
共用給水管更新 30年 46,600
高架水槽更新 20年 6,830 6,830
増圧ポンプユニット更新 25年 2,980 2,980
共用排水設備 共用排水管更新 35年 69,560 69,560
排水用水中ポンプ更新 8年 2,410 7,230
216号室台所系雑排水管の改修 800 1,600
消火設備 消火管更新 30年 3,360 3,360
放水口格納箱更新 25年 1,500 1,500
双口送水口更新 40年 370
容器弁更新 15年 10,000 20,000
蓄電池更新 5年 500 3,000
排風機更新 25年 2,520 5,040
電気設備 電力設備 共用部分電盤類・キュービクル内部機器更新 30年 10,556 10,556
店舗・中通路・管理室用子メーター更新 10年 650 1,950
幹線更新 30年 31,920 31,920
電灯設備 照明器具更新 15年 4,948 9,896
非常用照明器具更新 15年 1,906 3,812
誘導灯更新 15年 2,319 4,638
非常用照明,誘導灯バッテリー更新 5年 646 2,584
TV増幅器用電源新設 630 630
外部既設コンセント更新 204 204
ELV設備 制御系リニューアル 30年 16,000 16,000
弱電設備 テレビ共同受信設備更新 20年 2,076 4,152
避雷針更新 30年 300 300
自動火災報知設備 自動火災報知設備 受信機・感知器含 30年 1,359 1,359