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被告準備書面(2)
平成25年9月30日
東京地方裁判所民事第32部3A係 御中
被告訴訟代理人 弁護士
第1 原告ら第1準備書面「第1 原告らの主張」に対する認否
1 「1 管理費等債権の発生原因」について
原告らが引用する最高裁判所平成16年4月23日第二小法廷判決が存在することは認めるが、その主張については争う。
1 「2 管理費等債権額確定決議の不存在ないし無効」について
原告らの主張については争う。
なお、甲2の管理規約については、後述のとおり成立していないものと思われる。
3 「3 債権契約を特定承継人が承継しないこと」について
原告らが引用する判例及び裁判例が存在することは認めるが、その主張は争う。
いずれの判決も本件と事実を全くことにするものであり、原告らの主張を裏付けるものでは到底あり得ない。
すなわち、原告らが引用する最高裁判所平成9年3月27日第一小法廷判決は、元の区分所有者が分譲業者との間で自らが区分所有権を有する部屋を屋内駐車場として使用する旨の個別の契約を締結していたという特殊な事案であり、本件とは事案を全く異にするものである。
また、原告らが引用する最高裁判所平成5年12月3日の判決は、マンションの建築から20年以上が経過した後に一方的に管理費の値上げが行われたという背景事情の下、区分所有者と受託者との間で締結された管理契約書において受託者を区分所有法上の管理者に選任するとの趣旨を窺わせる条項が見当たらないこと等から受託者を区分所有法上の管理者と認めなかったという判決であり、本件とは全く事案を異にする。また、本件マンションにおいて締結された管理委託契約書(乙5)においては、管理費及び修繕積立金の金額がタイプごとに明確に定められており(乙5の第4条、第5条)、この点からも、上記判決と本件の事案は全く異なるものである。
なお、原告が引用する東京地方裁判所平成5年11月29日判決は、上記東京地方裁判所平成5年12月3日判決と同一の事実関係であり(同一マンションの同一の集会の有効性等が争いとなった事案。なお、裁判長も同一である。)、上記同様、本件とは事実を全く異にするものである。
したがって、原告が引用する判例及び裁判例は、いずれも本件とは事案を異にするものであり、何ら原告の主張の根拠となるものではない。
4 「4 被告が原始規約と主張する乙6について」について
分譲マンションの原資規約を設定するに当たり各区分所有者から同意を得て規約を成立させる方式が広く行われていたことについては認め、その余の事実及び主張は争う。
後述第2のとおり、本件マンションの規約(原始規約)は区分所有者全員の同意により有効に成立している(旧区分所有法24条1項)。
5 「5 価格表(乙4)及び管理委託契約書(乙5)の不合理性について」について
否認ないし争う。
後述第2及び第3のとおり原始規約は有効に成立している。
原始規約には「タイプ別管理費」を負担する旨規定されており、規約に「別段の定め」(区分所有法19条)がなされているものである。
価格表(乙4)及び管理委託契約書(乙5)にはその具体的な金額がさだめられており、その具体的な金額及び内容は、建物の形状、面積、位置関係、使用目的、及び利用状況並びに区分所有者が支払った対価その他の事情を総合的に考慮して、区分所有者間の利害の衡平が図られるように決定されたものであり(区分所有法第30条3項)、そのないようが合理的であることは明らかであり、各区分所有者がその内容を了解したうえで当初より約30年にわたってずっと変わらず同じ金額の管理費がおさめられてきたものである。
6 「6 管理規約(甲2)の改定手続き及びその合理性」について
否認する。
後述第4のとおり、甲2の管理規約については、規約改定のための集会決議の議事録等の記録が存在せず、集会決議は存在していないと思われる。
したがって、甲2の管理規約は有効に成立していないと思われる。
7 「7 既判力と反射的効力について」について
争う。
第2 原始規約が有効に成立していること
原始規約は、売買契約書及び規約承認書により書面による同意が得られており、有効に成立している。
1 売買契約書による規約への同意
本件マンションの規約(原始規約)は区分所有者全員の書面による同意により有効に成立している(旧区分所有法第24条1項)。
本件マンションの分譲にあたっては、分譲業者であるM建設が予め作成した契約書の書式(「SDマンション土地付き区分建物売買契約書」)に基づき、M建設と各買主(各区分所有者)との間で売買契約がていけつされた(乙9)。
当該売買契約書は、M建設が本件マンションを分譲するにあたり各区分所有者と締結するために予め準備していた契約書の書式であり、本件マンションの各部屋の買主全員が本契約書に基づきM建設と売買契約を締結しているものであるところ、当該売買契約書第18条には、買主は「管理規約、管理委託契約および使用細則の定めるところに従う」旨規定されており、これにより原始規約について各区分所有者の書面による同意が得られた。
なお、マンションの分譲にあたり分譲業者が契約書の書式を印刷して準備し、全買主との間で一律に同一書式を用いて売買契約書を締結することは、通常一般的に用いられる方式である。
本件マンションの分譲に用いられた売買契約書(乙9)は、共通内容については不動文字で印刷され、各戸の個別の欄がある表紙部分のある1頁においては、物件名や所在地等の全区分所有者に共通の事項や部屋番号、専有面積、代金等のタイトル部分は不動文字で印刷され、区分所有者毎に個別の記載を要する部分だけ空欄となっている。このことからも、乙9の契約書が全戸共通の書式であることも明白である。
上記のことから、本件マンションの規約(原始規約)は、区分所有者全員の書面による同意により有効に成立していることは明らかである。
なお、原告らは、本件マンションの分譲に未完物件があり、M建設は未完物件を下請け業者等に売却をしたが、M建設が規約承認書により規約への同意を取り付けていたとは考え難い旨主張する(原告第1準備書面13頁)。
しかし、経験則に照らしても、分譲マンションのように不動産取引において契約書が存在しないということは考え難く、その場合に別途契約書を締結するという迂回・面倒な方法を執るとは考え難く、本件マンション譲渡用に作成されて印刷されている上記の契約書を使用したと考えられる。
よって、本件マンションを購入したものは全員この売買契約書(乙9)をしようしたものと考えられ、管理規約について、区分所有者全員の書面の同意があったことが認められる。
2 規約承認書による契約への同意
また、M建設は、分譲のための売買の際には、購入者全員に上記の売買契約書の捺印のもならず、管理規約承認書(乙11)の捺印をも求めて書類が作成された。
このことは、一般の分譲の際に書類に一括して捺印がされるという経験則に照らしても、また、現実に、一般の購入者であった702号室の書類である乙9、同10、同11、原告が書類が作成されていないかのごとき主張をしている㈱Kの作成に係る(乙14、乙15)においても、同じ日に捺印されてさくせいされていることからも裏付けられるところである。
このことからも、本件マンションの規約(原始規約)は区分所有者全員の書面による同意により有効に成立していることは明らかである。
なお、原告らは、下請け業者等であるMM建設やK組から規約承認書を取り付けていることは考え難い旨主張する。
しかし、乙13、乙15で明らかなように、原告らが指摘しているMM建設やK組からも管理規約承認書が徴求されており、原告らの主張が事実に基づかない主張であることは明らかである。
3 小括
以上のとおり、本件マンションの分譲時において、区分所有者全員による売買契約書(乙9)による規約への同意、及び規約承認書による規約への同意が得られており、本件原始規約が有効に成立したことは明らかである。
仮に、本件マンションに未分譲の専有部分があり、それを分譲業者が所有し続けていたとしても、規約は有効に成立・発効するものであり(水本浩ほか編「基本法コメンタール(第3版)マンション法」74頁)、本件原始規約の有効な成立に影響を及ぼすような事情とはならない。
3 原始規約に基づき適正に管理費等が収受されてきたこと
1 原始規約(乙6)の管理費は「タイプ別管理費」とされていたこと
原始規約において、管理費ついて定めた第13条1項では、管理費の負担を単純共有持ち分割合によるものではなく、店舗と住居部分とを分けたタイプ別持ち分割合による「タイプ別管理費」とする旨規定しており、竣工当初より現在まで、住戸については約158円/㎡、店舗については約385円/㎡の管理費が支払われてきた。
その金額及び内容は、M建設において、建物の形状、面積、位置関係、使用目的、及び利用状況並に区分所有者が支払った対価その他の事情を総合的に考慮し、区分所有者間の利害の衡平が図られるように決定されたものであり(区分所有法30条3項)、その内容が合理的なものであることは明らかであり、各区分所有者がその内容を了解したうえで当初より30年にわたりずっと変わらず同じ金額の管理費がおさめられてきたものである。
2 重要事項説明書別添価格表(乙3、乙4)に管理費等の金額が明記されていたこと
本件マンションの分譲の際の、重要事項説明書には、「本物件竣工時点のタイプ別管理費及び補修積立金の額については、別添価格表をご参照ねがいます」との購入者に対する説明がなされており、重要事項説明書別添価格表(乙3、乙4)において、各タイプの専有面積、住戸及び店舗の管理費及び補修積立金の金額が明記された一覧表が掲載されている(乙4の4枚目)
この一覧を見れば店舗と住戸とで管理費等の金額に差異があることも容易に確認できることはすでに述べたとおりである(被告準備書面(1)5~6頁)。
したがって、本件マンションの購入者は、売買契約書、重要事項説明書及びその別添価格表(乙3、乙4)についてそれらの交付を受け。その内容を了解したうえで区分所有者になったことは明らかである。
3 管理委託契約書(乙5)にも管理費等の金額が明記されていたこと
本件マンションの管理委託開始当時において区分所有者と管理業務受託者との間で締結された管理委託契約書においても、各タイプに応じた住戸と店舗の管理費及び補修積立金の具体的な金額が明記されており(乙5の第4条及び第5条)、各区分所有者は自己が負担する管理費等の金額について了承したうえで管理委託契約を締結していることも明らかである。
4 小括
以上のとおり、本件マンションにおいては、原始規約(及び規約に基づく重要事項説明書別添価格表及び管理委託契約書)に基づき「タイプ別管理費」が設定され、各区分所有者はそれを了解の上で管理費を支払ってきたものであり、本件マンションの分譲当初より、原始規約等に基づき適正に管理費等が収受されてきたことは明らかである。
第4 甲2の管理規約について
甲2の管理規約は、平成13年ころ、当時の管理組合の理事らより各戸に配布されたものであるが、今般、調査したところ、当時の集会の議事録は存在せず、当時の関係者等に確認したところ甲2への規約改定のための集会は行われなかったようである。
したがって、甲2の管理規約は、法律上は、有効には成立していないものと思われる。
第5 平成18年の管理規約(乙16)の改定及び修繕積立金の値上げ決議について
1 平成18年5月14日の第23回定期総会において、長期修繕計画表に基づき修繕積立金の改定(第3号議案)及び管理規約改定(第6号議案)の審議がされ、修繕積立金の改定については平成18年7月28日(8月分)引き落とし分より改定されることが賛成多数により決議され、管理規約改定については全員の賛成により決議された。
2 原始規約に定めた「タイプ別管理費」制度が変更されていないこと
平成18年の管理規約の改定によって、それまで継続してきた「タイプ別管理費」制度が変更されたかどうかという点が問題となるが、以下の事情を踏まえれば「タイプ別管理費」制度が変更されていないことは明らかである。
(1)同一の総会において、「タイプ別管理費」を前提とする修繕積立金の改定が決議されていること
平成18年の総会においては、「タイプ別管理費」の10%となっていた修繕積立金(乙6の第14条)を、一律12.5倍に値上げする旨の決議がなされている。
同一の総会において、このように「タイプ別管理費」を前提とした修繕積立金改定の決議がなされておきながら、他方で管理規約を改定してこれと矛盾する単純共有持ち分割合に変更する決議がなされたとはおよそ考えられない。
なお、原告らは改定後の修繕積立金の一覧表が総会の議案書(甲4)に添付されていたことを否認するが(原告ら第1準備書面18頁)、議案書に「*別紙「長期修繕計画表及び修繕積立金改定表」と記載されていることからも修繕計画表及び修繕積立金改定表」と記載されていることからも修繕積立金の改定表が議案書に添付されて総会に先立ち各区分所有者に事前配布されていたことは明らかである。(甲4の2頁)。
(2)平成18年の総会の後も「タイプ別管理費」の金額のまま管理費が支払われてきていること
平成18年の総会後も、それ以前と同様に、「タイプ別管理費」の金額のまま各区分所有者において、管理費の支払いが行われてきている。
仮に、平成18年の管理規約の改定により、「タイプ別管理費」制度から単純共有持ち分割合の制度に変更したとすれば、それ以降は、単純共有持ち分割合による金額が納入されることになるのが当然である。しかし、実際には「タイプ別管理費」の金額ののまま納入され続けてきており、これについて区分所有者から異議等が述べられることも一切なく、各区分所有者においても「タイプ別管理費」制度が変更されていないとの認識であった。
現実に、原告らにおいても、上記決議後も、従前の金額のままで支払いをしてきていた。
なお、管理規約上の文言は「共有持ち分に応じて算出する」となっているが(乙16の第25条2項)、これは、国土交通省より公表されていたマンション標準管理規約を真似て管理規約の文言を改定したためにそのような表現になったものにすぎず、上記のとおり、各区分所有者においても、誰一人として、この管理規約の改定により「タイプ別管理費」制度が変更されたなどとは考えもつかなかったものである。
(3)平成23年総会で管理規約が改定されているが、管理費等の支払い金額は従前通りであったこと
平成23年の総会においても管理規約が改定されたが、改定後の管理規約(甲17)においても、管理費の金額は「タイプ別管理費」のままである(甲17の第27条別表4-1において、各区分所有者の管理費等の金額が個別に明示されている)。
平成18年の管理規約改定の後に行われた平成23年の管理規約改定においても、「タイプ別管理費」制度が維持されていることからすれば、平成18年の管理規約改定のときだけ「タイプ別管理費」制度が変更されたと考えるのは明らかに不自然かつ不合理である。
これらの経過から考えても、平成18年の管理規約改定においても「タイプ別管理費」制度は変更されることなく維持されてきたと考えられる。
(4)小括
以上のとおり、原始規約に定めた「タイプ別管理費」制度は、平成18年の管理規約の改定においても変更されていないことは明らかである。
第6 原告㈱H、同F、同I、同A、同E、同J、同K、同B、同H、同M、原告Dの本件請求が信義則に反し、又は権利濫用であり許されないこと
これ等の者については、すでに述べたとおり、総会決議への賛成表明、裁判における決着がついているのであり(被告準備書面(1)8~9頁)、それらに反して本件請求を行うことは、信義則に反し、又は権利の濫用であり許されない。
第7 総会決議に関する資料について
原告らは、平成18年5月14日定期総会、平成20年3月30日通常総会及び平成23年11月6日臨時総会の各決議の投票状況をしmwす証拠の求めているが、これらの総会決議の賛否の状況については既に原告らより提出済みの議事録(甲7、甲12、甲16)に記載のとおりである。
以上
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