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平成25年(ワ)第39号

原告  店舗組合員 14名

被告  SDマンション管理組合法人

第2準備書面

平成25年11月13日

東京地方裁判所

民事第32部3A係 御中

                原告ら訴訟代理人 弁護士

 

第1  被告準備書面⑵記載の事実に対する認否

1  第1(認否)記載の事実について

⑴ 本件マンションの規約(原始規約)が区分所有者全員の同意により有効に成立しているとの点(第1の4〔3頁〕)は否認する。

その理由は原告第1準備書面第1の4⑴ないし⑵(11ないし13頁)で述べたことに加え,後記第3の1⑴ないし⑻で述べるとおりである。

⑵ 原始規約に「タイプ別管理費」を負担する旨規定されていることが,「別段の定め」(区分所有法19条)に該当するとの点(第1の5〔3頁〕)は否認ないし争う。

その理由は,原告第1準備書面第1の4⑶(13頁)で述べたことに加え,後記第3の2で述べるとおりである。

⑶ 価格表(乙4)及び管理委託契約書(乙5)に記載された具体的な金額及び内容が,区分所有者間の利害の衡平が図られるように決定されたものであり(区分所有法30条3項),その内容が合理的なものであるとの点(第1の5〔3頁〕)は否認する。

その理由は,後記第3の3⑷で述べるとおりであり,被告は,格差の合理性を基礎づける事実について,何ら主張・立証責任を果たしていないことが明らかである。

⑷ 甲2の管理規約について,規約改訂のための集会決議の議事録等の記録が存在せず,集会決議は存在しておらず,甲2の管理規約は有効に成立していないとの点(第1の6〔3頁〕)は,後記第1の4で述べるとおり,自白の撤回に該当するが,原告はこの自白の撤回について承諾せず,また,後記第3の4で述べるとおり,事実に反するものである。

 

2⑴  第2の1記載の事実について

本件マンションの規約(原始規約)が区分所有者全員の書面による同意により有効に成立しているとの点,本件マンションの分譲にあたって,本件マンションの各部屋の買主全員が,丸善建設の予め準備していた契約書の書式(乙9)を用いたとの点,乙9の体裁から本件マンションを購入した者は全員この売買契約書(乙9)を使用したと考えられるとの点は否認する。その理由は,後記第3の1⑴ないし⑻で述べるとおりである。

⑵ 第2の2記載の事実について

M建設が,分譲のための売買の際に,購入者全員に管理規約等承認書(乙11)の捺印を求めて書類が作成されたとの点は否認する。その理由は後記第3の1⑵で述べるとおりである。

⑶ 第2の3記載について

本件マンションに未分譲の専有部分があり,それを分譲業者が所有し続けていたとしても,規約は有効に成立・発効するものであり,本件原始規約の有効な成立に影響を及ぼすような事情とはならないとの点は争う。その理由は後記第3の1⑺で述べるとおりである。

 

3⑴  第3の1記載の事実について

ア  第1段について

乙6の第13条1項が,管理費の負担を,店舗と住居部分とを分けたタイプ別持分割合による「タイプ別管理費」とする旨規定しているとの点は否認し,竣工当初より現在まで,住戸については約158円/㎡,店舗については約385円/㎡の管理費が支払われてきたとの点は不知である。

被告が述べる「店舗と住居部分とを分けたタイプ別持分割合」なる概念は,乙6のどこにも見当たらず,被告の造語にして不適切な誤引用・曲解である。乙6の13条1項の解釈については,後記第3の2で詳述する。

イ  第2段について

否認する。

その理由は,後記第3の3⑷で述べるとおりであり,被告は,格差の合理性を基礎づける事実について,何ら主張・立証責任を果たしていないことが明らかである。

⑵ 第3の2記載の事実について

不知ないし否認する。

既に再三述べているとおり,原告らが区分所有権を取得した時期は,訴状別紙「管理費等目録」の「所有権取得」欄に記載したとおりであり,分譲の際の重要事項説明を受けておらず,重要事項説明書(乙3)及び別添価格表(乙4)を受領したことがない。原告らは,M建設が青田売り段階で用意した定型的な売買契約書の書式(乙9。所在地が未定となっており,建物引渡時期(E)も予定となっていることから,青田売り用のものであることが窺われる。),重要事項説明書(乙3)及び別添価格表(乙4)の交付を受けておらず,当然のことながら,その内容を了解した上で区分所有者となったものではない。

例えば,102号室について,原告Oは,昭和59年5月28日,S工業株式会社から買っているが,その際作成した売買契約書(甲19)は,乙9とは全く異なる書式であり,重要事項説明書(乙3)及び別添価格表(乙4)の交付は受けていない。

⑶ 第3の3記載の事実について

不知ないし否認する。

既に再三述べているとおり,原告らが区分所有権を取得した時期は,訴状別紙「管理費等目録」の「所有権取得」欄に記載したとおりであり,昭和59ないし60年ころ本件マンションとの関わりを絶ったTサービス株式会社との間で管理委託契約書(乙5)を交わした事実はない。

 

4  第4記載の事実について

甲2の管理規約について,規約改訂のための集会決議の議事録等の記録が存在せず,集会決議は存在しておらず,甲2の管理規約は有効に成立していないとの点は,自白の撤回に該当する。

すなわち,被告は,被告準備書面⑴に「平成18年に変更される前の被告の管理規約において,原告らが主張する内容の規定〔引用者注・甲2の35条1項,2項,57条1項を指している。)が存在していたことは認め」る(第3の2⑴〔2頁〕)と記載し,これを平成25年6月7日施行の第2回口頭弁論期日において陳述した。のみならず,今般辞任した被告代理人望弁護士は,同期日において,平成18年5月14日定期総会において第6号議案(甲5)の承認可決(甲7)により乙1に変更される前の管理規約は甲2であった旨,原始規約は乙6であり,これが平成12年ころ甲2に変わった旨,平成18年5月14日より前においては,修繕費等は甲2の35条に基づき徴収していた旨釈明した。したがって,被告の標記主張は自白の撤回に該当する。

原告らはこの自白の撤回について承諾しない。

 

5⑴  第5の1記載の事実について

認めるが,後記第3の3で述べるとおり,第3号議案可決の決議のうち,店舗の修繕積立金の増額に関する部分は全部無効である。

⑵ 第5の2⑴記載の事実について

平成18年の総会において,管理費の10%となっていた修繕積立金を一律に12.5倍に値上げする旨の決議がなされたことは認め,同決議の効力を争い,その余の事実は否認する。

後記第3の3で述べるとおり,管理費及び修繕積立金に住戸・店舗間で2.45倍の格差があることを前提に,修繕積立金につき一律に12.5倍に値上げする総会決議は,そのうち店舗の修繕積立金の増額に関する部分が全部無効である。他方,同総会で改定の決議がなされた管理規約(乙16)中,「管理費等の額については,各区分所有者の共用部分の共有持分に応じて算出するものとする。」(25条2項)との規定は,建物区分所有法19条の定めと合致しており,もとより有効である。

このように,平成18年総会の上記決議部分は無効,同総会で改定された管理規約(乙16)の25条2項は有効であるから,両者間に被告が主張するような「矛盾」が生じる余地はない。

⑶ 第5の2⑵記載の事実について

平成18年の総会の後も「タイプ別管理費」の金額のまま各区分所有者において管理費の支払いが行われてきたとの点は不知であり,これについて区分所有者から異議等が述べられることも一切なかったとの点,各区分所有者において「タイプ別管理費」制度が変更されていないとの認識であったとの点は否認し,管理規約上の文言が「共有持分に応じて算出する」となっていること(乙16の第25条2項),これは,国土交通省より公表されたマンション標準管理規約を真似て管理規約の文言を改訂したためにそのような表現となったものにすぎず,各区分所有者において,誰一人として,この管理規約により「タイプ別管理費」制度が変更されたとは考えつかなかったとの点は否認する。

原告らは,住戸と店舗間で2.45倍の格差を設ける「タイプ別管理費」制度なるものが存在しているとは全く認識しておらず,存在を認識していないものについて異議を述べることがないのは当然である。

⑷ 第5の2⑶記載の事実について

平成23年の総会において管理規約が改訂されたこと,改訂後の管理規約(甲17)において,管理費等の額が「各区分所有者の共用部分の持分に応じて算出した別表第4の金額とする。」(第27条2項)と記載されていること,別表第4-1において,各区分所有者の管理費等の額が個別に記載されていることは認め,同条同項及び同別表の効力を争う。

 

第2  被告準備書面⑴の第3の2⑵記載の事実に対する認否

平成18年5月14日開催の定期総会の招集通知に添付されていたのが甲6ではなく乙1であったこと,同定期総会の決議において管理規約(乙16)が承認されたこと,その後,同管理規約(乙16)を修正した管理規約(甲6)が平成18年7月30日開催の臨時総会決議において否決されたこと,平成18年5月14日開催の定期総会の招集通知に乙2が添付されていたことは認める。

 

第3  原告の主張

(目次)

 

1  被告が原始規約と主張する乙6について                               7

⑴ 管理規約等承認書(乙11等)との関係について                     7

⑵ 管理規約等承認書に全員が捺印していないこと                       8

⑶ 管理委託契約書について                                           9

⑷ 売買契約書(乙9)との関係について                              10

⑸  重要事項説明書との関係について                                  10

⑹ 別添価格表との関係について                                      12

⑺ 未分譲の専有部分との関係について                                13

⑻  区立蓮沼児童館(201号室)との関係                        16

⑼ 小括                                                            19

2  乙6の13条1項の趣旨について                                    20

3  平成18年の修繕積立金増額の決議について                          21

⑴  はじめに                                                        21

⑵ 横浜地裁平成12年11月27日判決について                      21

⑶ 東京高裁平成13年8月29日判決について                        22

⑷ 合理性に関する被告の主張・立証の不存在について                   23

⑸ 私的自治の機能不全と司法的救済について                          24

⑹ 小括                                                            25

4  甲2の管理規約の有効性について                                    25

⑴  甲2の有効性を前提とした関係者の行動について                    25

⑵ 被告の別件訴訟における主張について                              27

⑶  N・元理事長の証言予定の概要について(甲  )               28

⑷ 小括                                                            28

5  格差についての原告らの認識状況                                    28

6 求釈明                     31

(1)求釈明の趣旨                 31

(2)求釈明の理由                 32

7 附記事項                                                         32

 

 

1  被告が原始規約と主張する乙6について

⑴ 乙6と管理規約等承認書は結びつかない

被告は,M建設が,分譲のための売買の際には,購入者全員に管理規約等承認書(乙11等)に捺印を求めたと主張する。

しかし,被告提出の「管理規約等承認書」(乙11,乙13,乙15)に記載された「管理規約」は,被告が原始規約と主張する乙6とは同一性を欠いており,乙11,乙13,乙15への捺印をもって乙6が承認されたとはいえない。その理由は次のとおりである。

「管理規約等承認書」(乙11,乙13,乙15)の第1項は,「管理規約(第45条)並びに管理委託契約書(第23条)の署名捺印は,本書の署名捺印を以てかえます。尚,この規約に基づき共用部分の管理を,管理規約第12条に規定された管理者に委任するものとし,本書を以て委任状にかえます。」と記載しているが,乙6に第45条は存在せず(乙6は第37条までしか存在しない。),乙6の第12条に管理者の規定は存在しない(乙6の第12条は共用部分の変更に関する規定である。)。したがって,乙11等に記載された「管理規約」と乙6とは同一性を欠いており,前者への捺印をもって後者を承認したとはいえない。

⑵ 管理規約等承認書に全員が捺印していないこと

本件マンションの102号室は,施主・M建設から元請・S工業に分譲されたが(甲19),S工業は,管理規約等承認書に捺印していない。Oは,昭和59年5月28日,S工業より,102号室を購入し(甲19),同年6月30日受付でM建設から中間省略による所有権移転登記を得たが(甲20),管理規約等承認書の引継は受けていない。

仮に,被告が主張するように,MM建設やK組が管理規約等承認書に捺印していたとしても,上記⑴のとおり,かかる捺印をもって乙6を承認したことにはならない上に,そもそもS工業は管理規約等承認書に捺印していないから,購入者全員が管理規約について承認したとはいえない。

⑶ 価格表や管理委託契約書記載の管理費額はまちまちである

管理規約等承認書(乙11等)の第1項に記載された「管理委託契約書(第23条)」についても,被告が「本件マンションの管理委託開始当時において区分所有者と管理業務受託者との間で締結された管理委託契約書」(被告準備書面⑴第4,2,⑵〔6頁〕)であると主張する乙5とは,同一性を欠いている。なぜならば,乙5に第23条は存在しない(乙5は第15条までしか存在しない。)からである。

また,被告が提出した価格表(乙4)と管理委託契約書,及び,管理委託契約書相互間を比較しても,次のとおり齟齬がある。

 

号証 作成年月日(昭和) 区分所有者 Kの管理費 N・O・Zの管理費
乙4(価格表) 56年ころ M建設㈱ 9,300円 8,200円
乙5 56.4.10 不明(墨塗)    9,300円       3,200円
乙10  不明(該当頁不提出。証拠説明によれば,58.9.30) 不明(該当頁不提出。証拠説明によれば,702号室購入者)    5,600円        8,200円 
乙12  不明(該当頁不提出。証拠説明によれば,58.11.8) 不明(該当頁不提出。証拠説明によれば,MM建設㈱)    9,300円        3,200円 
乙14 58.11.21 ㈱K組    5,600円       8,200円

 

仮に,価格表(乙4)や管理委託契約書に記載された管理費の額が管理規約の内容を成しているのであれば,上記のように,価格表と管理委託契約書,あるいは,管理委託契約書相互間で管理費の額が異なるという齟齬が生じたり,管理費の額を管理委託契約の当事者限りで変更するという矛盾は生じないはずである。つまり,価格表(乙4)や管理委託契約書(乙5,乙10,乙12,乙14)に記載された管理費等の額が管理規約の内容を成していたとはいえない。

⑷ 売買契約書(乙9)は購入者全員が使用していない

被告は,本件マンションの分譲にあたって,本件マンションの各部屋の買主全員が,丸善建設の予め準備していた契約書の書式(乙9)を用いた,乙9の体裁から本件マンションを購入した者は全員この売買契約書(乙9)を使用したと考えられる,当該売買契約書第18条には,買主は別に定める管理規約に従う旨規定されており,これにより原始規約について各区分所有者全員の同意が得られた,などと主張する。

しかし,102号室はOが昭和59年5月28日S工業より,112号室は,同人が昭和61年3月10日M建設から購入したものであるが,これらの際に用いられた売買契約書(甲19,甲21)は,いずれも乙9とは全く異なる書式のものである。後者に至っては管理規約に言及した条項が全くない。

このことをもってしても,購入者全員が乙9を使用し,原始規約に同意したとの被告の主張が事実でないこと(被告が主張する「経験則」によって証拠の不足を補うことは不可能であること)が明らかである。

⑸  重要事項説明書には異なる種類のものがある

被告は,本件マンションの各区分所有者は,購入当時に乙3(重要事項説明書)及び別添価格表(乙4)を確認し,別添価格表に記載された管理費等の金額について合意した上で区分所有者となったと主張する(被告準備書面⑴第4の2⑴〔4ないし5頁〕)。

ア  乙3は甲22と内容が異なる
しかし,分譲当時丸善建設が用いていた甲22(重要事項説明書)は,被告が提出した乙3とは,各区分所有者の持分比率の点で異なる内容のものであり,したがって,別添価格表も乙4とは異なるものであったと推認される。

すなわち,乙3と甲22(重要事項説明書)とを,「建物に関する事項」「16.共用部分」「⑵タイプ別土地・建物区分所有者持分比率」の「㋑住戸」及び「㋺店舗」の記載について比較すると,似たタイプごとに類型化し持分比率を付与する際の類型化の仕方が異なっており(例えば,乙3では,A・C・D・I・Xが1つの類型とされているが,甲22では,A・C・DとI・Xとで別類型とされ異なる持分比率が付与されている。),また,同じタイプで比較しても,持分比率が異なっているのである(例えば,Aは,乙3では1万分の71であるが,甲22では1万分の86である。)。

イ 甲22は敷地の共有持ち分と整合している
(ア)ところで,甲22の持分比率(万分率)は,全戸合算すると1万になり,本件マンションの敷地に対する各区分所有者の持分(甲23)とも基本的に整合している。齟齬があるのは,①206号室(Gタイプ)の持分について,重要事項説明書(甲22)で33であるのに対し,敷地の登記(甲23)では32であること,②313号室(Gタイプ)の持分について,重要事項説明書(甲22)で33であるのに対し,敷地の登記(甲23)では27であること,③以上との関連で,重要事項説明書(甲22)では,全戸分譲後には当然丸善建設に持分が残らないのに対し,敷地の登記(甲23)では同社に持分6が残っており(甲24)、区分所有者持分合計(万分率)は9994にとどまること、の3点である。この齟齬の原因は,土地についてのM建設持分一部登記の申請手続に過誤があったことによるものと思われる。

(イ)甲22は,当初M建設の現地販売事務所とされていた102号室を元請・S工業から居抜きで購入したOが室内で発見し保管してきたものであり,昭和59年3月29日ころ,102号室及び117号室の2戸を購入しようとしていた者に対し交付する予定であったものが,商談が頓挫したため102号室に残されていたものと推認される。

ウ 乙3は敷地の共有持ち分と整合していない
(ア)一方、乙3の持ち分比率(万分率)は、敷地に対する各区分所有者の持ち分(甲23)とまったく整合しないうえに、全戸合算しても8351にしかならず、1万には1649(=10000-8351)足りないという根本的欠陥がある(本書面別紙「持ち分比較表」参照)。

(イ)乙3は,表紙に「お問合せはM商事㈱東京支店」という,甲22には無い記載がなされており,これは現場事務所が引き払われた後の連絡先を記載したものと考えられること等から,甲22より後に作成されたものと考えられる。

エ 持ち分比率が2種類存在する理由について

このように重要事項説明書記載の持ち分比率にはが少なくとも2種類存在する。かかる事態が生じた原因は,M建設が,当初,甲22を作成していたものの,住戸の売れ行き不振を打開するため,管理費や固定資産税の負担の根拠となる持分の比率を引き下げる操作を加えて,乙3に作り替えたものと推認される。その理由は次のとおりである。
(ア)M建設は、昭和56年10月8日以降同年12月25日までの間に、乙4とは異なる内容の単価表が掲載されたリーフレット(甲29)を配布して購入者を募集するようになった(甲29の使用開始時期は、売約済みとされている住戸のうち最も遅く売約した204号室の売買契約締結日以後で、かつ、募集中とされている住戸の内最も早く売約した902号室の売買契約締結日以前である。本書面別紙「持ち分比較表」参照)
このリーフレット(甲29)作成直前の時点における本件マンション(地下駐車場を含み、201号室の区立児童館を除く。)の販売率は、戸数ベースで143戸中60戸であり(41.95%)販売額ベースで見ても(金額は乙4による。)、143戸及び地下駐車場の総額38億3004万円の内、60戸及び地下駐車場の合計11億9919万円(31.31%)にすぎなかった。特に、販売額3000万円を超える物件で、角部屋以外の住戸(B・C・Dタイプ)や北西角(Iタイプ)は全く売れていなかった。
(イ)敷地の持ち分登記は、総戸数144戸のうち142戸が甲22と合致し、206号室もほぼ甲22と合致しているのに対し、乙3と合致しているのは313号室(Gタイプ)の1戸のみである。
これら142戸の分譲時に、敷地の持ち分登記と異なる持ち分比率を記載した乙3が交付されたとは考え難い。
(ウ)甲22の重要事項説明書においては、店舗の持ち分比率(万分率)は合計1132であるが、乙3の重要事項説明書では、前記ウ(ア)のとおり合計8351であるから、1649(=10000-8351)だけ圧縮している。この圧縮された1649を甲22の店舗の合計1132に加算すると2781になり、この2781に応じた管理費を店舗に持たせれば、店舗の負担は、1132のときに比較して2.45倍(=2871÷1132)となる。
(エ)N・元理事長の証言予定事実要旨(甲39)
N氏(以下「N氏」という。)は、昭和58年8月ころ、本件マンションの708号室を購入・入居し、昭和60年ころから平成12年暮れごろまで、本件マンション管理組合の初代理事長を務めたが、大要、次の通り証言する予定である(甲39)。
もともと、M建設は、本件マンションの1階にスーパーマーケットを招致する予定で、本件マンションにスーパーマーケット用のクーリングタワー、地下駐車場及び共同便所を設置した。一方、M建設は、住戸の販売を促進する目的で、1階の管理費を高く、住戸の管理費を安く設定して、販売活動を開始した。ところが、スーパーマーケットを招致計画は、近隣商店の反対により頓挫し、管理費の格差だけが残った。

オ 小括

以上のとおり,購入者の中に異種類の重要事項説明書及び別添価格表の交付を受けた者が混在することになり,分譲当時,管理費及び修繕積立金として特定の金額が規約化されていたとはいえない。

⑹ 価格表記載の価格は変動する

被告は,本件マンションの購入者は,重要事項説明書の別添価格表(乙4)の交付を受け,その内容を了解した上で区分所有者になったと主張する(被告準備書面⑴第3の2〔7頁〕)。

しかし,一般的に言って,当初の売出し価格を維持できなくなり,価格表が改定されるというのはよくあることである。被告が提出した価格表(乙4)についても、M建設のその時点における売り出し価格を記載したものにすぎず、当然、売れ行きによっては値下げすることが予定されている。現に、上記(5)エ(ア)で述べたとおり、M建設は、昭和56年10月8日以降同年12月25日までの間に、乙4よりも価格を下げた内容のリーフレット(甲29)を配布して購入者を募集するようになった。
乙4と甲29とを比較すると、例えば、302ないし304号室が、乙4では3135万円であるのに対し甲29では2975万円になっており、902ないし904号室が、乙4では3165万円であるのに対し甲29では2998万円になっている等、売り出し価格が軒並み値下げされている。M建設が、甲29で誘引した購入者に対し、それとは内容の異なる乙4を交付したとは考えられない。したがって、全ての購入者が乙4の交付を受けていたという被告の主張は事実に反している。
乙3の「販売に関する重要事項」「15管理に関する事項」の(2)項が、「管理費及び補修積立金の額については、別添価格表をご参照願います」と記載するにとどまっているのは、価格が将来変動する可能性があるという価格表の性格を反映しているものと考えられる。
以上のとおり、購入者の中に異種類の重要事項説明書及び別添価格表の交付を受けたものが混在するものである以上、分譲当時、管理費及び修繕積立金として特定の金額が規約化されていたとはいえない。

⑺ 未分譲の専有部分があることから直ちに全員合意にならない

被告は,本件マンションに未分譲の専有部分があり,それを分譲業者が所有し続けていたとしても,規約は有効に成立・発効すると主張するが,失当である。被告は,「未分譲の専有部分があり,それを分譲業者がさしあたり所有し続けているときでも,規約は有効に成立・発効することができる」という「基本法コンメンタール[第三版]マンション法」74頁の記述を不正確に引用している。次に述べるとおり,同書が,「さしあたり所有」,「発効することができる」と表現していることには深い含意があるのに,被告はこれを殊更に削除して引用しているのである。

本論点は,「購入者」の意義及び全員合意書面による規約の成立時期の問題に行き着かざるを得ない。以下詳述する。

ア  丸山英氣(編)「改訂版区分所有法」(2007年,大成出版社)所収の原田純孝「全員の同意書面による規約の設定」(甲25)は,この問題について詳細に論じた数少ない論文の一であり,貴重な参考文献である。

曰く,区分所有建物の新規分譲にあたって分譲者が規約案を用意し,各区分所有者への分譲ごとに買受人の同意を取りつけ,全区分所有者の合意書面がそろえばそれをもって規約が成立したものとみなすという実務慣行においては,規約がどの時点で成立するのかが問題になるとし,㋑買受人の同意が,将来の他の区分所有者全員との関係で,他の者の全員の同意があればその規約を設定することに同意するという趣旨のもの(いわば規約設定行為に対する条件付きの同意)であった場合には,通常の全員合意書面(区分所有法45条2項)の場合と同様に,全員の同意がそろった時点で規約が成立するものと考えられる旨説く。更に,㋩分譲予定の建物部分のうちの一部が販売された時点(極端な場合には,最初の買受人が規約設定に同意した時点)で規約を成立せしめる趣旨の合意が可能かどうかは,一個の問題であるとし,結局,規約を本来的に買受人たる区分所有者の規約と考えている法の趣旨からすれば,そのような形での規約の設定を無限定に認めることにはどうしてもためらいが残る,法が,分譲業者が単独で設定する公正証書による規約の内容を一定の事項に限定しているのも,そのことを考慮したためにほかならない(法32条),同意書面による規約の設定は,あくまで㋑の形態を原則と考え,㋩の形態は,例外的な場合として一定の要件のもとにのみ認められる,たとえば,少なくとも法31条1項の要件を満たすに足りるだけの買受人が現われ,それらの者の間で同条所定の要件を満たす集会の決議があったことを要するとか,あるいは,分譲者が,当初の販売計画を変更して,以後は買受人と同等の資格で当該建物の管理に参加する旨を表明し,その前提のうえで規約の効力を発生させることにつきあらためて買受人の同意を得ることを要する,と考えた方がよいと説いている。

確かに,分譲業者が起案した規約案に最初の買受人1名が同意しただけで,他の多数の潜在的購入者をも拘束する規約が設定されるというのは,あくまで総会による決議の代替手段として全員合意書面(区分所有法45条2項)を認めている区分所有法の趣旨を逸脱するものと解される。その他,上記見解は,公正証書による規約設定制度との関連をも視野に入れて,説得的に論じており,その内容は合理的であって,極めて正当なものである。

イ  また,「区分所有建物の管理と法律」(昭和56年,商事法務研究会)90頁以下(甲26)も,分譲業者が用意した規約案に対する買受人の承諾を業者を相手方とする意思表示と考えれば,最初の買受人1人が捺印したときに,業者は例えば100戸のうちの残り99戸の所有者であるから,規約設定の合意が成立し効力が生じたと考えることも可能であるが,普通はそうではなく,分譲される将来の区分所有者との間の規約として承諾の意思表示をしているのであって,決して業者に対して意思表示をしているのではないと考えるほうが素直である(青山正明),全員が同意することを条件として承諾しているのであって,99戸持っている区分所有者としての業者と1戸の買主とが合意して,規約を設定し,後の買受人は特定承継人として規約を効力を受けるだけであるというようには一般的には考えられていない(宇佐見隆男)と説いている。

ウ  上記見解に照らして本件を見れば,

(ア)乙6の第36条は,「この規約の発行は,区分所有者全員の承認を必要とし,管理者は区分所有者全員から別途提出される規約承認書とこの規約1通を規定の原本として保管する。」と規定しており,上記㋑の形態をとっていることが明らかである。

(イ)また,本件マンションは,別紙のとおり,多くの住戸が数年間にわたり売れ残る状況であり,総戸数144戸の4分の3にあたる108戸の分譲がようやく完了した時期は昭和59年2月19日になってからであったが,この段階で,乙6規約の設定について集会・決議がなされた事実はない。また,その時点で既に,M建設から購入した者の中に管理規約に承認していない者がいたことは,前記第2の1⑵で述べたとおりである。

(ウ)更に,資金繰りに窮していたM建設は,売れ残り部分について区分所有者として管理費等を納入することをしなかった。その結果,Tサービスによる管理は予算不足による機能不全に陥り、Tサービスは昭和60年ころ本件マンションから手を引いてしまった。したがって、M建設は、早くとも昭和62年ころに至るまで、「当初の販売計画を変更して,以後は買受人と同等の資格で当該建物の管理に参加する旨を表明し」た事がない。
この点について、N氏は、大要、次のとおり証言するよていである(甲39)。
本件マンションの分譲状況は、本書面別紙「持分比較表」記載のように、竣工当初、店舗・住戸共かなりの未分譲部分があった。東京電力に電気代を支払うと赤字となり、Tサービスは、管理費が底を突くようになっていた。結局、Tサービスで雇用した管理人は、昭和59年ころ、辞めてしまい、Tサービスも、本件マンションから手をひいた。

やむなく、昭和60年ころ、K氏が管理人に、N氏が初代理事長に就任し、Tサービスに引き継を求めたが、同社はほとんど管理の実情を把握していなかった。K氏らは、苦労して電気料や未収管理費の徴収にあたった。しかし、M建設は、当初、未分譲部分の管理費を支払っておらず、N氏が再三交渉したすえ、昭和62年ころに至り、ようやく支払いをするようになった。

(エ)また,後になって購入した者がもはや乙9の書式を用いてはいないことは前記第3の1⑷で述べたとおりである。
したがって,乙6が全員合意書面により原始規約として設定されたはいえない。

エ  なお,大阪地裁昭和57年10月22日判決・判例時報1068号85頁,東京地裁平成2年10月26日判決・判例時報1393号102頁は,単に,マンションの分譲業者であっても,未分譲部分の区分所有者である以上,共有部分の管理費等の支払義務がある旨判示したものであって,監理規約の設定時期について判断しあるいは上記㋩説を採用したものでないことが明らかである。

特に,上記大阪地判は,「管理規約や個々の管理委託契約それ自体が管理費支払義務発生原因と考える必要はない」と判示して,分譲業者側が管理規約を根拠として管理費の負担義務の不存在を主張したのを排斥しており,管理規約の設定時期及び有効性が直接の判断事項(争点)となっていなかったことがいっそう明確である。

⑻  区立蓮沼児童館(201号室)との関係について

ア(ア)本件マンションの201号室は,区が,昭和57年にM建設から購入し(甲34),そこに区立蓮沼児童館(以下単に「児童館」という。)を設置して,現在に至っている。

このように,201号室は,区立の施設ではあるが,専有部分の建物の表示登記及び区の所有権保存登記がなされており(甲34),区分所有権の対象であるから,区は,同室について区分所有者であり,当然に,区分所有者の団体の構成員である(区分所有法3条前段)。

(イ) ところが,当初,区がTサービスと交わした管理委託契約書(甲35)においては,不動文字の第4条(管理費等)及び第5条(補修積立金)が抹消され,別紙として手書きの第4条(管理費等)及び第5条(補修積立金)に差し替えられていた。すなわち、201号室については、区が、管理費等につき管理委託契約書(甲35)を交わしていたのである。

甲35よると,区がTサービスに支払う管理費は,1か月3万6600円とされており,専有部分の床面積(持分)あたりの単価は,住戸のそれの2分の1であった(36,600円÷持分638=57.4円。一方例えば,202号室〔Bタイプ〕では,9,200円÷持分80=115円である。)。

(ウ)区がかかる管理委託契約書を交わしていることは,他の区分所有者には開示されていなかった。しかも,乙3と甲22(重要事項説明書)の「建物に関する事項」「16.共用部分」「⑵タイプ別土地・建物区分所有者持分比率」の項には201号室に関する記載がなかった。また,乙4の「価格表」の頁には201号室に関する売出し価格の記載がなく,「各タイプ別面積・管理費・補修積立金」の項にも同号室に関する記載がなかった。更に,乙5(管理委託契約書)の第4条(管理費等)及び第5条(補修積立金)にも201号室に関する記載はなく,却って「※区立児童館の管理費については別途契約による」「※区立児童館の補修積立金については別途契約による」との注が記載されていた。したがって,他の区分所有者は,区が支払う201号室の管理費の額が床面積(持分)あたりで住戸の2分の1であることを知らなかった。

以上のとおりであるから,かかる格差のある管理費をTサービスが設定していたからといって,それが管理規約の内容を成していたとはいえない。

(エ) また,上記(ウ)のとおり重要事項説明書,価格表及び管理委託契約書に201号室関する記載が無いことからすれば201号室については,「タイプ別管理費」(乙6の第13条1項)の定めというものは存在しなかったといわざるを得ない。

したがって、201号室については,本来,「規約に別段の定めがない」ものとして,「持分に応じて,共用部分の負担に任」すべきところ(区分所有法19条),実際には,区の201号室管理費は、前記(ア)のとおり、専有部分の床面積(持分)に比例しておらず、住戸との比較で2分の1、店舗と比較では約5分の1の格段に安い水準であった。

これはすなわち、被告が,区分所有法19条に違反する運用がおこなっていたことを示している。

イ(ア) その後,被告理事会は,第25期(平成19年1月1日~同年12月31日)において,児童館と管理費等の契約見直しの協議をおこなった(甲36)。

その結果,管理費及び修繕積立金の額が平成20年1月1日以降2倍に増額改定され,収入が増収になる旨の第26期(平成20年1月1日~同年12月31日)予算案が作成された(甲37,甲38)。

この予算案は,平成20年3月30日開催の通常総会に第3号議案として提出され(甲10ないし甲11),出席組合員議決権数133(うち委任状53,議決権行使書面44)の過半数以上である議決権数96の賛成があったとして承認可決とされた(甲12)。

(イ) 仮に,201号室の管理費の床面積あたり単価を住戸のそれの2分の1とする旨の原始規約が有効に成立していたと仮定すると,これを平成20年1月1日以降2倍に増額改定(住戸と同等負担へ変更)するにあたって,規約変更の特別総会決議(区分所有法31条1項)を経なければならなかったはずであるが、被告は、上記(ア)のとおり普通決議として扱っているのである。

この点を併せ考えると,結局,201号室の管理費が当初,住戸の2分の1であったのは,被告が管理規約の「別段の定め」に基づかずに区分所有法19条に違反する運用をしていたものといえる。

⑼ 小括

被告提出の管理規約等承認書(乙11等)に記載された管理規約と,被告提出の管理規約(乙6)とは同一性を欠いている(上記⑴)。被告提出の管理規約等承認書(乙11等)には全員が捺印してはいない(上記⑵)。被告提出の管理規約等承認書(乙11等)に記載された管理委託契約書と被告提出の管理委託契約書(乙5)とは同一性を欠いている。被告提出の価格表(乙4)と被告提出の管理委託契約書,及び,被告提出の管理委託契約書相互間では,記載された管理費の額に齟齬がある。管理費が規約化されていたのであれば,かかる齟齬が生じたり,管理委託契約の当事者限りで管理費の額を変更することはありえない(上記⑶)。本件マンションの購入者全員が乙9の売買契約書書式を使用していたとはいえない(上記⑷)。被告提出の重要事項説明書(乙3)と原告ら提出の重要事項説明書(甲22)とは各区分所有者の持分比率という最も重要な事項について齟齬があり,本件マンションの購入者の中には異種類の重要事項説明書及び別添価格表の交付を受けた者が混在している(上記⑸⑹)。M建設が未分譲部分を抱えていたことをもって全員が管理規約を承認していたとすることはできない(上記⑺)。被告は,区立児童館(201号室)については,当初,面積比で住戸の2分の1の管理費しか徴求していなかったが,これは,管理規約の「別段の定め」に基づかずに区分所有法19条に違反する運用をしていたものといわざるをえない(上記⑻)。

以上のとおりであるから,被告が主張する諸事情をもって乙6が原始規約として有効に成立していたとすることはできず,また,被告が店舗に重い格差(2.45倍),児童館に軽い格差(2分の1)を設けていたのは,有効な管理規約の「別段の定め」に基づかずに区分所有法19条に違反する運用をしていたものである。

 

2  乙6の13条1項の趣旨について

被告は,乙6の第13条1項が,管理費の負担を,店舗と住居部分とを分けたタイプ別持分割合による「タイプ別管理費」とする旨規定していると主張するが,誤った解釈である。

被告が述べる「店舗と住居部分とを分けたタイプ別持分割合」なる概念は,乙6のどこにも見当たらず,被告の造語にして不適切な誤引用・牽強付会である。

乙6の13条1項は,「『第5条の各区分建物の持分割合』に応じた」タイプ別管理費と記載し,更に,第5条は「各区分所有者の共用部分に対する共有持分は,建物の専有部分の総床面積に対し,各区分所有者が有する区分建物の専有床面積の割合を10,000分比に換算したものである。」と記載しているのであって,タイプによって若干の増減を許容する表現となっているものの,あくまで総床面積に対する各専有床面積の割合で算定される持分割合を基本的な基準とする趣旨であることが明らかであり,2.45倍もの大量の格差を許容するものとは解し得ない。

「別表第4-1住戸タイプ別専有面積,管理費等一覧表」(甲17)記載の各戸の管理費が,重要事項説明書(甲22)の「建物に関する事項」「16.共用部分」「⑵タイプ別土地・建物区分所有者持分比率」「㋑住戸」記載の持分比率どおりになっているかを検証すると,持分1万分の86であるAが9900円であるのなら,本来,持分1万分の80であるBは9209円,持分1万分の85であるEは9784円,持分1万分の33であるGは3798円でなければならないはずであるが,100円未満を切り捨てないし切り上げる関係上,それぞれ9200円,9800円,3700円とされている。このような端数処理を許容する趣旨を,乙6の13条1項は,「持分割合に応じたタイプ別」の語により表現したものと解されるのであり,決して2.45倍もの格差を許容する趣旨とは解されない。

 

3  平成18年の修繕積立金増額の決議について

⑴  はじめに

平成18年の総会において,管理費の10%となっていた修繕積立金を一律に12.5倍に値上げする旨の決議がなされたが,管理費及び修繕積立金に住戸・店舗間で2.45倍の格差があることを前提に,修繕積立金につき一律に12.5倍に値上げする決議は,そのうち店舗の修繕積立金の増額に関する部分が全部無効である。

⑵ 横浜地裁平成12年11月27日判決について

横浜地裁平成12年11月27日判決(甲27)は,5階部分と6階以上の部分の管理費の金額に2倍の格差があるマンションについて,そのように定めた原始規約は有効であるとしつつも,管理費に2倍の格差を設けることに合理性が認められない場合には,かかる格差を維持したまま増額することにも合理性がないものといわざるを得ず,少なくとも増額決議のうち5階部分に2倍の格差をつけて増額した部分は無効であると判断された事例である。同判決は,次のとおり判示している。

「管理費等について規約に別段の定めがあるとしても,持分の割合と異なる負担を定める場合には,特別の負担に任じる一部の区分所有者の承諾がある場合を除いては,法第19条,第31条第1項後段の趣旨からすると,その定めをするについて合理的な理由があり,しかも合理的な範囲であることを要するものと解すべきである。法第31条第1項後段は管理規約の設定,変更及び廃止に関するものではあるが,管理組合の総会の決議により一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼす場合には,その趣旨は考慮されるべきである。」,「管理費等について一部の区分所有者に特別の負担をさせるについては,当該区分所有者が共用部分を他の区分所有者と比べて使用する場合が多い等,その費用を特に負担させるについて合理性のある必要がある。」,「管理費に格差を設けることの原告の主張する個々の事由の大部分に合理性は認められず,またその事由を総合的に見ても管理費等に2倍の格差を設ける合理性があるとは解することができない。」,「本件決議による増額部分については,5階部分と6階以上部分との間に2倍の格差を維持したまま増額するについて合理性がないものといわざるを得ない。」,「少なくとも本件決議のうち5階部分に2倍の格差をつけて増額した部分はいずれも無効と解される。」

⑶ 東京高裁平成13年8月29日判決について

更に,その控訴審である東京高裁平成13年(ネ)第136号管理費等請求控訴事件・同年8月29日判決Westlaw Japan(甲28)も,次のとおり判示している。

「原始規約が有効であるのは,上記のとおり成立当時に一応の合理性があり区分所有者全員の同意があったことに基づくものである。ところが前記のとおり分譲後の本件建物の各室の現実の使用状況等からすると,5階部分と6階以上の部分とで管理費等に2倍の格差を設けるべき合理性がないことが明らかになったのであるから,第一審原告においては速やかにその不公平性を是正するために規約を変更すべき状況が生じていたというべきである。しかるに第一審原告においてはそのための措置が全くとられず,かえって2度にわたり同じ格差割合を維持したままで管理費等を増額する本件決議が行われ,その結果5階部分と6階以上の部分の管理費等の金額の格差は更に拡大した」,「格差が更に拡大していることは,私的自治(団体自治)が正常に機能していない結果というべきである。また前記認定のとおり本件決議はいずれも多数決によって行われていること,5階部分の区分所有者に比べ圧倒的多数の議決権数を有する6階以上の部分の区分所有者の多くは不公平性を認識していないか,これを自発的に是正しようとする考えをもっていないこと(証拠略)からすると,今後も第一審原告においてこのような不公平が是正される可能性は極めて乏しいと考えざるを得ない。そして本件決議はこのような不公平を維持するだけではなく,これをより顕在化させるものであり,第一審原告主張の事情はこのような格差の合理的理由となるものではないから,本件決議のうち5階部分の管理費等の増額に関する部分はいずれも無効たることを免れないというべきである。」

⑷ 合理性に関する被告の主張・立証の不存在について

前掲・横浜地判(甲27)が,「第二事案の概要及び争点」「二原告の主張」4で行った事実摘示及び「第三争点に対する判断」一5㈡で「管理費について一部の区分所有者に特別の負担をさせるについては,当該区分所有者が共用部分を他の区分所有者と比べて使用する場合が多い等,その費用を特に負担させるについて合理性のある必要がある。」と説示するところを見れば,格差の合理性を基礎づける事実の存在につき,管理組合側が主張・立証責任を負担することが示されている。

しかるに,本件においては,被告は,格差の合理性を基礎づける事実について,何ら主張・立証責任を果たしていないことが明らかである。原告らが平成24年4月27日,本件訴訟に先行する調停を申し立ててから,既に1半余りが経過するが,被告の口からかかる事実の主張・立証がなされたためしがない。かかる事実は存在しないものと推認される。

⑸ 私的自治の機能不全と司法的救済について

上記東京高判のうち,「原始規約が有効であるのは,上記のとおり成立当時に一応の合理性があり区分所有者全員の同意があったことに基づくものである。」との判示部分は,本件には当てはまらないが,次の各判示部分は,本件にも同様に当てはまるものである(傍点引用者)。

「格差を設けるべき合理性がないことが明らかになったのであるから,第一審原告においては速やかにその不公平性を是正す(中略)べき状況が生じていたというべきである。」

「しかるに第一審原告においてはそのための措置が全くとられず,かえって2度にわたり同じ格差割合を維持したままで管理費等を増額する本件決議が行われ,その結果5階部分と6階以上の部分の管理費等の金額の格差は更に拡大した」「格差が更に拡大していることは,私的自治(団体自治)が正常に機能していない結果というべきである。」

「前記認定のとおり本件決議はいずれも多数決によって行われていること,5階部分の区分所有者に比べ圧倒的多数の議決権数を有する6階以上の部分の区分所有者の多くは不公平性を認識していないか,これを自発的に是正しようとする考えをもっていないこと(中略)からすると,今後も第一審原告においてこのような不公平が是正される可能性は極めて乏しいと考えざるを得ない。」

以上のとおり,東京高判が,「私的自治(団体自治)が正常に機能していない」,「圧倒的多数の議決権数を有する区分所有者の多くは不公平性を認識していないか,これを自発的に是正しようとする考えをもっていない」と喝破した点は,原告らが訴えの追加的変更申立書第2の1⑷(4頁)において次のとおり述べたところとまさに共通している。すなわち,「被告においては,一部の者が長期間にわたり役員を占めてきた。これらの役員は,住戸の区分所有者から大量の委任状を取り付け,あるいは区分所有者に対し適切な情報開示をしないなどの政治的手法を駆使して,恣に被告の運営をしてきた。そして,管理会社である日本ハウズイング株式会社は,その利権を保持するため被告と癒着し,その違法無効の運営を下支えしてきたのである。かかる構造により維持されてきたいわば長期政権は,(中略)腐敗が相当に進行している。」「店舗の区分所有者である原告らは,員数及び議決権数の面において少数派であるうえに,上述した背景事情が存するため,被告の民主的な自浄作用は殆ど期待しえない状況となっている。本件訴訟による司法的救済が必要とされるゆえんである。」。

⑹ 小括

以上のとおりであるから,上記平成18年総会決議のうち,店舗の修繕積立金の増額に関する部分が全部無効である。他方,平成18年総会決議で改定された管理規約(乙16)の「管理費等の額については,各区分所有者の共用部分の共有持分に応じて算出するものとする。」(25条2項)との規定は,建物区分所有法19条の定めと合致しており,もとより有効であるから,上記決議部分は,区分所有法19条,管理規約25条2項にも違反しており,かかる二重の意味で無効である。

 

4  甲2の管理規約の有効性について

被告は,突如,甲2の管理規約の有効性を否定し始めたが,自白の撤回として許されないのみならず,その有効性については,次のとおり明らかである。

⑴  甲2の有効性を前提とした関係者の行動について

ア 被告代表らや区分所有者の行動について
(ア)  被告代表者は,平成17年5月14日付けで,同月29日開催の平成16年度定期総会を招集しているが(甲30),その第3号議案(管理規約の一部改定)として,役員定数の引き下げを提案し,その理由として,「現行管理規約の役員について輪番制によって18名の役員を選任する事になっていますが,一度も出席しない,或いは出席できない役員が多々あり,実際にはその半数で理事会を開催しているのが現状です。ついては今後管理規約の改定に先行して,役員の定数の規定を『9名以上』とすることを提案します。」と述べているが,これは,甲2の管理規約に,「理事(理事長・副理事長含む)18名以下(各階二名ずつ)」(第11条1項3号。引用者注・「各階二名ずつ」との制約条件からして,「以下」は「以上」の誤りである。)と規定されているのを受けての措置と解される。他方で,被告が原始規約と主張する乙6には,管理者に関する規定(第16条,第18条等)は存するものの,理事(役員)に関する規定は定数も含め存在しない。

(イ) また,上記定期総会においては,冒頭で,議長挨拶及び開会宣言に続いて,管理規約第4節第18条の6に基づきI副理事長が議長に選出されたことが議事録に記載されている(甲31)。この議事録記載の議長選出の根拠は,甲2(管理規約)「第4節総会」「第18条(総会)」第6項が「総会の議長は,理事長が務める。但し,理事長又は理事会は議長を指名する事ができる。」と規定するところに符合しており,まさに甲2に基づき議事運営がなされていたことを示している。他方,乙6は,当時の被告の体制及び議事運営とは整合しない書きぶりとなっている。すなわち,乙6は,議長について,「管理者が集会を招集した場合には管理者が議長となり,区分所有者が招集した場合には出席者の多数決により選任した区分所有者の1人が議長となる。」(第30条)と規定しており,理事ではなく管理者による管理が前提となっている。しかし,被告は,法人化する前から既に,任意機関としての理事の制度を導入し(区分所有法25条1項「別段の定め」,甲2の第3節第11条以下),管理者ではなく理事が管理に当たっていた。被告は,平成16年5月7日に法人となっているが(甲32),これによって理事が必須機関(区分所有法49条)になったというにとどまり,法人化の前後を通じて理事制度を採用していた。したがって,上記定期総会は,乙6ではなく,甲2に基づき議事運営がなされていたことが明らかである。

(ウ) 更に,上記定期総会においては,理事の定数を引き下げる理由について活発な審議がなされた結果,定数を9名以上とすることが承認可決されているが(甲31),その過程において,誰も,本件マンションに理事(役員)制度が存在せず,管理者が置かれているのみであるとの前提で発言した者はいない。すなわち,関係者は皆一様に,甲2の有効性を前提に行動しているものであることが明らかである。

イ 管理代行会社の行動について
乙2は,被告が主張するとおり(被告準備書面⑴の第3の2⑵〔3頁〕),平成18年5月14日開催の定期総会の招集通知に添付されていた管理代行会社の作成書面であり,駐車場の専用使用料の改定について提言したものであるが,改定手続について,「駐車場使用料の改定は管理規約第35条1項により,総会での普通決議事項となっております。」と記載している。

これは,甲2の第35条1項に,「尚,管理費等の改定は,共用部分の管理に関する事項として,第23条2項に定める方法により決議する」と規定されているのを受けての注意喚起と解される。もとより,被告が原始規約と主張する乙6の第23条には2項は存在せず,同条は管理費ないしその改定方法に関する規定でもない。

このように,本件マンションの管理代行会社も,甲2の有効性を前提に行動していたことが明らかである。

⑵ 甲2に関するN・元理事長の証言予定事実要旨について(甲39)
甲2に関し、N氏は、大要、次の通り証言する予定である(甲39)。

N氏は,平成12年暮れころ理事長を退任し、O氏(902号室所有者)が第2代理事長に就任した。
O氏が,理事を招集して管理規約案を確定させ,総会で承認決議を取って,管理規約(甲2)を成立させた。その際,ペットの飼育の問題についても,N氏の理事長時代からの賛否の議論を引き継ぎ,飼育を可としたうえでこれに制限を加える内容のペット飼育細則を同時に成立させた。 管理規約集(甲2)は,管理組合から費用を支出して,印刷・装丁し,全戸に配布した。

(3) 小括
以上のとおり、甲2の管理規約は、有効に成立したものである。

 

5  格差についての原告らの認識状況について

⑴ 訴えの追加的変更申立書第2の4⑵で既述のとおり,原告Bは,平成23年11月6日の臨時総会の終了後,「別表第4」(甲17)の内容を精査し,住戸と店舗間の2.45倍の格差を認識し,同月22日付けで,被告に対し,抗議の意思表示をした。

⑵ その他の原告については,その後,原告Bからの指摘により,上記格差を認識するに至ったものである。

⑶ 被告は,原告らが,「タイプ別管理費」の金額を,平成23年11月下旬ころまで異議を述べることなく支払ってきたと主張するが,それは,原告らが格差の存在を知らなかったからにほかならない。2.45倍もの格差の存在を,それを合理化しうる事情がないにもかかわらず,知ってなお,原告らが異議を述べないはずはないのである。

このことは,「人は不公平だと思わなければかなりの困難に耐えられる。(Any hardship becomes ten times harder if we consider it unfair.)」(カレン・ホーナイKaren Horney),「人は貧困には耐えられるが,差別と不公平には耐えられない。」(アフマディネジャード),「しばしば債権者の不満は,低い配当率に対してではなく偏頗行為に対して向けられる。不公平な満足よりも公平な不満足を。」(牧野茂),などと言われているような人間の本質に根ざすものであり、原告らにとっても同様である。

 

6  求釈明

(1)求釈明の趣旨
管理費等の額について、平成18年の管理規約(乙16)には「各区分所有者の共有持ち分に応じて算出するものとする。」(第25条2項)との記載があり、平成23年の管理規約(甲17)には「各区分所有者の共用部分の共有持ち分に応じて算出した別表第4の金額とする。」(第27条2項)との記載があるが、これらがいう「各区分所有者の共用部分の共有持ち分」とは具体的にいかなるものか。店舗、住戸及び児童館の全てについて、各戸別に持ち分比率を特定明示されたい。

(2)求釈明の理由
被告が認識する「各区分所有者の共用部分の持ち分」の内容を明らかにさせ、これが、区分所有法14条1項、乙16(管理規約)の第10条(共有持ち分)、甲17(管理規約)の第10条(共有持ち分)に各違反していないかを吟味することが、甲17(管理規約)の承認決議の有効性を判断するうえで必要不可欠である。
上記各管理規約(乙16、甲17)は、被告代表者が提案したものである(甲3、甲4、乙1、甲13、甲14、区分所有法47条12項、34条1項、35条1項)。したがって、被告は、「各区分所有者の共用部分の持ち分」の内容を特定の数値として把握・認識したうえで、各提案をしたはずである。

 

7 附記事項

請求の趣旨の整理については,追って行う。

以  上

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