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札幌地裁(平成14年6月25日)

エレベーターを利用しない1階の区分所有者でも、その管理費等は負担しなければならないとされたものです。

判決主旨
1階の区分所有者は、専有部分の床面積による割合で定めた管理費等は不当である旨を主張。1階はエレベーターを利用することは無い。また、専有部分はオール電化であり、共用部分の灯油供給設備の負担はする必要が無いことを主張。

それに対しては、
エレベーター及び灯油供給設備は共用部分であることは、認められるところであり、1階の区分所有者においてもその管理費等を免れるものではないし、当該マンションは、オール電化住戸とそうでない住戸とが混在しており、特注によってのオール電化住戸においても、灯油供給せつびの共用部分としての性質を否定できるものではない。とされました。
判決原文には
「前略・・・
控訴人は,本件規約が,控訴人の所有するg号室の特質(1階にありエレベ
ーターを利用する必要がないこと,オール電化住宅仕様となっていて灯油供給
施設を利用する必要がないこと)を考慮せず,単に専有部分面積のみを基準と
して,その管理費を8900円と定めたことは不当である旨主張する。
しかし,本件建物に附属しているエレベーター及び灯油供給施設が本件建物
の共用部分となっていることは,甲第4号証及び弁論の全趣旨によって,これ
を認めることができるところであり,区分所有建物が1階にあるからといって
エレベーターの保守管理等に要する費用を負担しないでよいことになるもので
はないし,また,乙第8号証,第10,第11号証及び弁論の全趣旨によれ
ば,控訴人は,本件建物に灯油供給施設が附属し,これが本件建物の共用部分
となっていることを知りながら,本件建物の販売業者に対し,g号室をオール
電化住宅仕様とすることを特注したことが認められるから,控訴人がそのよう
な特注をしたからといって灯油供給施設の保守管理に要する費用を負担しない
でよいことになるものではない。
したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。」

管理費等の負担割合を定める場合には、標準管理規約単等型においては、使用頻度を勘案する必要はないとされています。それに対して、区分所有法19条には「各共有者は、規約に別段の定めが無い限りその持ち分に応じて、共用部分の負担に任じ、共用部分から生ずる利益を収取する。」また、区分所有法30条第3項の中に「規約は、専有部分もしくは共用部分又は建物の敷地若しくは附属施設につき、これらの形状、面積、位置関係、使用目的、及び利用状況並びに区分所有者が支払った対価その他の事情を総合的に考慮して、区分所有者間の利害の衡平が図られるように定めなければならない」利用状況を考慮して、つまり、利用頻度を考慮して定める。よう規定されています。区分所有者間で規約により格差を設けても構わないが、その差は衡平の範囲以内でなければならないものと解釈されます。

法で言う一部共用部分として「構造上及び利用上明確に利用者が判断、区分」することは現実には難しく、容易ではありません。1階の区分所有者が全くエレベーターを利用しないとは言い切れず、判例においても負担を免れるものではないと判断しています。

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