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平成14年に区分所有法第30条3項の規定「規約は、専有部分もしくは共用部分又は建物の敷地若しくは附属施設につき、これらの形状、面積、位置関係、使用目的、及び利用状況並びに区分所有者が支払った対価その他の事情を総合的に考慮して、区分所有者間の利害の衡平が図られるように定めなければならない」が新たに設けられました。

ここで述べられている
”位置関係”とは、例えば専用庭やバルコニーのように、専有部分と建物の敷地の一部がその位置関係からみて密接な関連性を有している場合、特定の区分所有者が専用庭の設定を受けていることをもって、その特定の区分所有者と他の区分所有者の利害が著しく不公平であるとは評価できないと考えられる。
また、
”利用状況”とは、比較的広範な状況・事項をとりこめられると考えられる。例えば、区分所有間において特定の共用部分や附属施設の利用頻度に大きな差があるような場合は、その共用部分や附属施設の維持管理に必要な費用の負担について、区分所有者間で差を設けることが考えられる。利用頻度等がここでの利用状況として衡平性を判断する要素として考えられる。

この位置関係・利用状況については、区分所有法第30条3項の規定を設ける際に、法制審議会において説明がなされたものです。
尚、標準管理規約単等型において定められている”費用の負担”の管理費に関しては次のように定められています。
第25条 区分所有者は、敷地及び共用部分等の管理に要する経費に充てるため、次の費用(以下「管理費等」という。)を管理組合に納入しなければならない。

一 管理費
二 修繕積立金
2 管理費等の額については、各区分所有者の共用部分の共有持ち分に応じて算出するものとする。
とあります。そして、標準管理規約単等型コメントには
①管理費等の負担割合を定めるに当たっては、使用頻度等は勘案しない。
と定められています。
これでは区分所有法第30条3項の規定において、利用頻度を考慮することと、矛盾することになっています。

そもそも、標準管理規約単等型コメントには、
「標準管理規約が対象としているのは、一般分譲の住居専用の単等型マンションで、各住居の床面積等が、均質のものもバリエーションの有るものもふくまれます。いわゆる等価交換により特定のものが多数の住居を区分所有する場合は、別途考慮しなければなりません。なお、店舗併用等の複合用途型マンションについては、複合用途型標準管理規約を参考にします。」
●住宅専用
●床面積が均質、バリエーションのあるものを含む
●(ワンルーム、等の投資用の住宅は考慮されていない)
●法人化していない管理組合

 

判例ではどうでしょうか。
平成14年に区分所有法第30条が改正されておりますので、改正以降の例を見ていきたいと思います。

福岡地裁(平成14年10月29日)
(ローレルハイツ高宮事件)
福岡に所在するマンションで、1階店舗の区分所有者は、上階住居区分所有者より管理費が2.59倍、修繕積立金が2.58倍の負担割合で支払っていました。店舗の区分所有者は、この格差は公序良俗に反して無効であると主張して、管理組合に対して住居区分所有者の等倍を超える部分の返還を求め提訴しました。

管理組合の主張は、
●店舗の区分所有者は営利目的で営業していること。
●看板の設置、共用部分の使用態様が住居と異なり管理費等の不均衡には合理性がある。
●店舗の区分所有者は、承諾の上、長期間管理費等を支払っている。

判決趣旨
集会の決議又は別段の規約の定めにより、共有部分の持ち分とは異なる管理費等は認められている。

共用部分の使用頻度等に通常の区分所有者と質的にことな点があり、共有部分の持ち分割合を算定基準にすると不合理であるまたは、負担者の承諾を得ている等の事情が無い限りは、合理的な差額を超える部分は無効である。

店舗の区分所有者の使用頻度が他の区分所有者とは質的に異なり、一定程度の割高を許容されるが、諸般の事情を考慮するに平均額の1.5倍が限度というべきである。(尚、1.5倍の根拠は示されていない。)

ただし、この時点での判決は区分所有法30条3項の規定が設けれる時期と近接しており、裁判官がこの新しい法律を反映したものかどうかは疑問です。

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