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平成26年(ワ)第24663号 不当利得返還請求事件

原告  株式会社H

被告  SDマンション管理組合法人

 

第4準備書面

 

平成27年9月18日

東京地方裁判所民事第50部 御中

 

原告訴訟代理人 弁護士

第1 はじめに

被告は準備書面(5)において,相変わらず店舗に対する電気料金の過剰徴収分が月額約8000円あるいは誤検針によるわずかな過剰請求であり,精算の案内もしている旨強弁している。

そこで,原告としては,被告主張が事実でないことを立証するため,各店舗から承諾を得て,被告に対しマスキングを施さない検針台帳等の開示を求めるべく,準備していた。ところがこのたび原告の独自調査により,被告による電気料金の過剰徴収の事実を裏付ける事実を発見することができたので,本書面で証拠とともに,主張する。

第2 検針台帳の虚偽記載

1 原告が本件においてもっとも有効な書証と考えていたのは,共用部分の数値が記載された検針台帳であったところ,被告は原告の使用量のみを表示し,その余をマスキングして証拠提出しているところである(乙1の1~88)。

2 しかしながら,特に乙1の13以降は,一部手書であるものの,ほとんど数字が打ち込まれた,一見して後から作成された可能性が濃厚なものであった。

もとより検針台帳は,検針員が,各戸のメーターの表示を読み取り,読み取った数値を手書にて作成するものであり,原告が独自に調査した台帳もまさに手書で作成されていた(甲14の1~18号)。

3 原告は,このたび,平成26年1月以降の検針台帳を閲覧する機会を得たが,被告が電気料金を負担する1階中通路と管理室の検針数値が,平成26年6月と同年7月で,異常な推移を示していることを発見した。下記一覧によりその異常さは明らかである。

すなわち,平成26年1月から同年6月まで,1階中通路の電灯使用量は3万台で推移していたところ,同年3月にはこれまた不自然な小数点以下の数値が記載され,同年7月に突如として7万台に跳ね上がっている。そして,同年6月と同年7月の数値を比較すると,明らかに6月の数値の万の位を落としたうえ,全体を10倍にした数値が7月の数値となっている。

同じく,1階中通路の動力使用量は,平成26年1月及び2月は3347,同年3月から6月まで3347.5と記載されているのに,同年7月は33475と突然10倍になっている。しかも,同年7月の検針台帳は前回検針も33475と記載され,同年6月の検針結果と10倍も差が生じている。

突然万の位を落として10倍にしたり,小数点を付した後に10倍にしたりするなどの作業は,明らかに誤記ではなく,意図的に数字を操作したものにほかならない。

1階中通路電灯 1階中通路動力
平成26年1月 36797 3347
同年2月 37061 3347
同年3月 37136.1 3347.5
同年4月 37218.6 3347.5
同年5月 37309.7 3347.5
同年6月 37387.6 3347.5
同年7月 前回73876 前回33475
同年7月 今回74657 今回33475
同年8月 75494 33475
同年9月 76345 33475
同年10月 77174 33475
同年11月 78090 33475
同年12月 78888 33475
平成27年1月 79755 33475
同年2月 80619 33475
同年3月 81400 33475
同年4月 82285 33475
同年5月 83137 33475
同年6月 84000 33475

4 一方,1階中通路のメーター(以下,「メーター」という。)の数値を見てみると,たまたま原告において平成24年8月2日に撮影した際は,「55208」を指していた(甲15)。また,同27年3月13日(検針日)のメーターは「81400」を示し(甲16),上記検針台帳と同じ数値であった。

メーターが示す数値は実際の電気使用量の累計を示しているところ,平成24年8月の段階で5万台であることに照らせば,検針台帳の平成26年6月までの3万台で記載されている数値が虚偽であることは明らかである。そして,上記のように,被告は,1階中通路の検針数値を,平成26年7月に,万の位の3を落として全体を10倍にして実数値と辻褄を合わせたのである。換言すれば,平成26年6月までは共用部中通路の検針数値を10分の1に偽装していたものを,7月分から実態に戻したということである。

検針数値が前月までの実績の上に積み重ねられるものであることから,平成26年6月までの記載が虚偽であるということは,本件における請求期間の始期である平成17年1月以降も虚偽であったことが窺える。

なお、検針員は、検針台帳を株式会社日本ハウズイングの担当者宛にファックスで報告しており、被告が検針結果を把握していることは明らかである(甲17)。

第3 決算書記載の不明瞭な変遷と過剰徴収分を隠蔽するための総会決議

1 ここで,店舗の使用電気量の管理に関する推移を俯瞰すれば,以下のとおりである。

すなわち,本件マンションが建設されて以降,使用電気量の検針を含め受託管理していたTNSサービス社が昭和60年頃に撤退し,その後は管理組合が自主管理をしていた。516号室の区分所有者であったN氏が管理人だった平成16年度までは,店舗からの電気料過剰徴収分186,071円が「預り金」として第22期決算書に記載されていた。(なお,過剰徴収分は,預り金一階電気料として,平成14年度は284,737円,同15年度は314,463円であった。)

ところが,515号室YM氏が「会計システム担当」理事に就任した平成17年度以降は,実に不明瞭な会計科目及び金額が以下のとおり計上されることになった。

平成17年度第23期決算書では,「一階電気料金預り金」の科目が消滅した。

同18年度は「預り金」はゼロとされた。

新たに受託管理をすることとなった日本ハウズイング社が作成した平成19年度から同22年度の決算書では,「預り金」「11月分電気料等」名目で計756,093円が計上された。

同23年度は「管理費等過入金」名目で329,400円が計上された。

同24年度は「店舗専有部電気料前受金」名目で166,639円と「管理費等過入金」名目で29,604円が計上された。

同25年度は「店舗専有部電気料前受金」名目で149,473円と「管理費等過入金」名目で122,720円が計上された。

同26年度は「店舗専有部電気料前受金」名目で154,045円と「管理費等過入金」名目で80,720円が計上された。

上記のとおり,平成16年以前は店舗から過剰徴収した電気料金が「預り金」として計上されていたのに,y氏が会計担当になった途端,消滅したうえ,科目も変更されたうえ(しかも「管理費過入金」や「電気料」のが何なのか不明),店舗からの過剰徴収分がいくらなのかも,不明になってしまった。

なお,被告が平成19年度から同22年度の貸借対照表に計上した「11月分電気料等」は,預り金,すなわち負債として記載されているが,そもそも電気料は被告が立て替えて東京電力に支払っているはずである。つまり,預り金として計上されているということは,過剰徴収の存在を推認させるものである。

上記のような決算書の記載の変遷を見ると,y氏を会計担当として,被告は,平成17年以降,店舗から過剰に徴収した電気料の存在と金額を偽り始めたものというべきである。なお,被告は,平成27年7月6日付で,原告に対し,平成16年度における400万円の不明金について回答したが,その詳細は後述する。

2 原告としては,本件提訴時においては,東京電力の請求単価と,原告が専有する102号室の請求単価の差が被告の過剰徴収分であるとして不当利得返還請求をしてきたものであるが,提訴後に情報開示を頑なに拒む被告の対応に苦慮しながら,困難を極める調査により,上記決算書の変遷と被告の隠蔽工作が明らかになりつつあるところである。

そのような中,平成26年11月1日付で日本ハウズイング社から「1階店舗専有部電気料金に関する説明会開催のお知らせ」と題する書面が送付され(甲16),同年11月9日18時から30分の予定で説明会が開催された。原告は,同社担当のH氏に対し,事前に内容がわかるものを書面で配布するように要求したが,説明会において説明資料は何ら配付されなかった。

説明会では,福重氏が口頭で,「平成22年9月から管理人がガクンと検針を読み間違えた」と説明した。これに対して原告が,ガクンとは何割ぐらいか,どの程度なのかと質問したところ,「一桁,下一桁を読まなかった。」との回答であった。平成22年9月から同26年5月まで44ヶ月間もの間検針員が読み間違え続けたという,いかにも不自然な説明に対して,原告は,間違えたという検針台帳の開示と検針管理員の謝罪を要求したが,現在まで1年以上実現していない。被告が疑惑を闇から闇へ葬り去ろうとすることに対し,原告は憤りを禁じえない。よって上記のとおり原告独自に調査の上,「読み間違えた」検針台帳を取得したものである。その杜撰な内容は既述のとおりである。

3 平成19年度決算書からは,管理会社の日本ハウズイング社が使用している様式となったが,東電請求金額合計3,968,949円に対して同年第25期決算書に記載されている3,565,552円は403,397円過少に計上されている。ところが,東電に対する403,397円の未払金計上はない。

原告としては,山本氏が会計担当になって以来,平成16年以前に計上されていた店舗電気料過剰徴収分の預り金が不明となった経緯に照らせば,過年度の店舗電気料金過剰徴収分,つまり預り金の一部が,上記403,397円に補填された蓋然性が高いというほかない。

4 平成23年11月に本件マンションの管理規約全面改正が行われ,「新規約72条容認事項四の④電気料に不足が生じたときは管理費より充当し,余剰が生じたときは管理費に組み入れること」が,質疑応答もなく全体規約改正の中で賛成可決された。

ところが,この点については臨時総会招集通知書議案にもなく,被告からの説明もなく,この時点では店舗電気料が過剰徴収されていることも説明していなかった(当然決議の際も一切説明がなかった)。したがって,それを正当化する議案が秘密裏に含まれていることには原告を含め,誰も気づかなかった。それ以前の過剰徴収金はどう処理されたのか,被告は一切明らかにせず,監査報告での指摘もなかったのである。

5 さらに,平成19年度に日本ハウズイング社が管理会社となって,共用部電気料契約がそれまでの「従量電灯C」と「低圧電力」という別々の形態であったものが「低圧高負荷」という単一の契約に変更されてからは,共用部よりも専有部負担割合の増大が顕著になっている(平成20年の159,084KWは,同18年の145,704KWより13,380KW増加している)。かかる共用部電気料の契約変更は,専有部の負担を増加させるものであるから,総会決議が必要であるはずである。被告の目的が,住戸共用部の負担軽減なのか,電灯使用量と電力使用量割合をさらに不明確にするためなのか,不明であるが,いずれにしてもかかる共用部電気料の契約変更に関し,総会決議は実施されず,秘密裡に行われた。重大な規約違反である。

6 被告は,平成11年から,東京電力との業務用契約電力を68KWとしてきた。ところが,平成24年6月25日付,東京電力の「電気料金の値上げにともなう年間電気料金比較について」と題する書面が店舗に配布され,その時点の東電業務用契約電力が46KWに過ぎず,基本料金が年間82万円であることが判明した。

つまり,被告は13年以上,業務用電気料金を高いまま据え置いていたのである。その金額は毎年約31万円である。

7 平成16年度の不明金400万円について

被告は,原告が上記400万円の不明金を指摘した質問状に対して,本年7月6日付にて,「平成16年度第22期収支計算書の管理費会計の次期繰越金と修繕積立金会計の次期繰越金の合計は,貸借対照表の当期未処分損益とは本来同じであるが400万円の差額があることが判明した。」と回答しつつ,その理由は分からないとしている。

被告も認める差額というのは,22期収支計算書において,前期繰越(管理費・修繕積立金合計)72,995千円と,前期21期末の貸借対照表上の次期繰越金76,941千円を比較して,3,946千円少ない事実を指すものである。

被告がかかる不明金の存在を11年も経過してから認めながら,その理由を説明しないのは,不正の存在を示唆するものである。

原告としては,被告が説明をしないため,引き続き理由の調査に努める所存である。

以 上
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