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耐震改修工法の概要

Ⅰ 強度補強型耐震改修

耐震強度を高めるには有効な方法で、低層の建物では特に有効です。ただし、高層になると連層耐震壁の転倒なども考慮しなければならず、配置のバランスなどら悪いと逆効果にもなります。

1 耐力壁の耐震改修

①耐震壁の増設・・新たに耐震壁を増設する。

②耐力壁の増し打ち・・壁厚を厚くして耐震壁の強度を高める。

③耐力壁内の開口部を塞ぐ

 

2 ブレースによる耐震改修

①ブレース内付け工法・・鉄筋コンクリート造の柱・梁で構成されたフレーム内に鉄骨の枠組みを嵌め込み、接着系アンカー、グラウトモルタル(無収縮モルタル)により両者を密着させ、その鉄骨枠組み内に鉄骨の斜材を組み込む。

・RC造の耐震壁に匹敵する強度が得られる。

・安価である。

・特別な施工技術を必要としない。

以上の理由から最も普及している工法である。

 

②ブレース外付け工法(鉄筋コンクリート造のフレーム外側に鉄骨ブレースを密着させる)

フレーム内にブレースを組み込む工法は窓を取り壊したり又は室内が工事中は使用できないなどの不利益が発生する。その点、フレーム外付け工法は、室内に入ることなく外側からの設置ができる。建物を使用しながら工事ができるメリットがある。

 

③バルコニーや開放廊下のスラブ外側にフレームを取り付ける工法

バルコニーや開放廊下の片持ちスラブの下端に新たにコンクリートスラブを増設一体化し新たなフレームのほかそのための基礎も必要となる。

 

3 バットレス耐震改修

中世の教会建築で用いられた(フライングバットレス)で、高い教会の壁を脇から支える構造である。

Ⅱ 靭性型耐震補強

建物の靭性(粘り強さ)を持たせることにより地震力のエネルギーを吸収し、脆性破壊(脆くぐしゃっと壊れる)のを防止します。

1 独立柱巻き立て耐震補強

ピロティ型式の柱の外周に鋼板を張り、隙間にグラウトモルタルを充填し、繊維シートで巻き付け接着(接着剤:エポキシ樹脂、アクリル樹脂)する。
・施工性・経済性に優れる。
・簡易な補強方法。
・耐震性が不足している場合は同時に強度の出る耐震補強を併用する。

2 耐震スリットの設置

建物の崩壊例では腰壁・垂れ壁により短柱となってしまった柱部分に大きな地震力が作用し、その部分が脆く崩れる(脆性破壊)ケースが見受けられます。この脆性破壊は現在の耐震設計法では避けるように考慮されます。

そのような考えに基づき、腰壁・垂れ壁の部分に柱と縁を切るスリット(隙間)を設置します。これにより柱に地震力が集中することを防ぎます。

また、耐震壁のバランス又は上下階の構造的な剛性のバランスを良くするために設けられます。これによって耐震設計のDS値やFS値の耐震指標が改善され必要保有水平耐力の数値が少なくなり、結果として保有水平耐力を満たすことに効果を発揮します。

Ⅲ 地震力の低減

1 制震工法

高層建築や塔状のたてものにおいて、地震よりもむしろ風による揺れ対策として用いられてきました。超高層マンションでは、長周期の地震での揺れが増幅されることが判明し、制震工法が注目されました。

制震工法としては
・アイソレーター(オイルダンパー、摩擦ダンパー、粘性ダンパー)を組み込んだ制震ブレース

・機械的な装置を組み込んだ制震ブレースがあります。

この制震ブレースは建物の小さな変形でも大きなエネルギーを吸収しますので効率的な工法となります。ただし、元もとが耐震性能が低い場合は、ほかの耐震補強工法の併用することになります。

2 免振工法

これは一時期問題となった東洋ゴム工業の免振装置です。免振装置は原子力発電所などの重要な施設に採用されてきました。構造的には薄いゴムと鉄板を交互に重ね合わせたものです。

既存建物の場合、設置場所は基礎部分、又は建物中間部分に設置されます。この免振装置のメリットは、建物を使用しながら工事することが可能であること、しかし反面、建物の周辺のスペースが広く確保されていないと難しいまた、改修費用も高額になることがデメリットとなります。

Ⅳ その他の補強

基礎の耐震補強

耐震補強のために新たに耐震壁や耐震ブレースが増設されることによって地震力が増加し、側柱に圧縮や引っ張りの軸力が作用することになります。

そのため、基礎に支持力が不足することになります。これに対応するために基礎の増設や杭の増設が必要となります。

基礎、杭の増設は、周辺に付属施設や敷地に余裕がないなどの障害があり困難な場合もあります。
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