平成28年(ネ)第3088号不当利得返還請求控訴事件
控訴人(一審被告)SDマンション管理組合法人
被控訴人(一審原告)KT外15名
平成28年8月24日
控訴理由書
東京高等裁判所第20民事部イ係 御中
上記控訴人訴訟代理人弁護士 OH
同 NY
同 MD
同 YS
第1 はじめに
1 本件訴訟の概要
本件は、昭和56(1981)年3月に分譲を開始し、翌57年2月に引き渡し及び入居を開始して以来、各区分所有者が複合用途型マンションであることを当然の前提に、住民自治による運営の下、住戸と店舗及び各々のタイプごとに定められた管理費等の支払い義務があることを認識し、それを了解したうえで管理費等の支払いを継続してきたところ、平成24年ころになり、一部店舗の区分所有者(なお、かつての店舗の区分所有者であった者も含む)が、突如として支払い済みの管理費等について、管理規約に基づかない徴収である、過払いであり不当利得であるなどと主張し、その返還を求めている事案である。
本件において問われるべきは、他の複合用途型マンションにおいては一般的に行われており、本件マンションにおいても、分譲開始より30年間、関係者の誰もが問題とすることなく、適法に収受されてきた住戸と店舗という用途分類に応じて定められた管理費等について、過去10年(平成14年5月分から平成24年3月分まで)に遡り、不当利得の返還請求を是認することが、法的正義の観点から正当化され得るのかということである。
2 原判決の誤り
原判決は、過去10年(平成14年から平成24年3月分まで)に遡り、不当利得返還請求を是認することができるかという点について、要旨、以下の内容を判示した。
・上記期間に係る平成13年規約(甲2)、平成18年規約(乙16)、平成23年規約(乙17)は、いずれも有効に成立している。
・区分所有法19条は管理規約に「別段の定め」がない限り、共有持ち分に応じた管理費等の負担を要求しているところ、平成13年規約、平成18年規約には住戸と店舗とで管理費等の金額に違いを設ける「別段の定め」は規定されていない。
・したがって、平成13年規約及び平成18年規約に基づき徴収されている平成14年5月から平成23年11月分までの管理費等については、住戸と店舗とで等倍でなければならず、等倍を超える部分については不当利得となる。
・これに対し、平成23年規約には、「別段の定め」が規定されているため、住戸と店舗とで管理費等の額に違いを設けること自体許容されるものの、2倍を超える部分については区分所有法及び公序良俗(民法90条)に反し無効である。
・したがって、平成23年規約に基づき徴収徴収されている平成23年12月から平成24年3月までの管理費等については、2倍を超えるものについては不当利得となる。
・参加人O、原告YN、原告M及びSEについては平成23年決議以前にも、住戸と店舗とで管理費等の金額の違いを受忍する言動が認められるものの、平成13年規約及び平成18年規約については、「別段の定め」が規定されていないため、上記事情を踏まえても、なおこれらの者による不当利得返還請求等は信義則違反又は権利濫用に当たらない。
・これに対し、原告K、原告APR、原告TBH、原告M、原告N、原告SE、及び原告YNは、平成23年決議について、賛成又は明確な反対票を投じないまま欠席し、区分所有法31条1項後段の承諾をしたと認められる言動に及んでいることから、平成23年12月分以降の同人らの不当利得返還請求は信義違反又は権利濫用に該当し、認められない。
しかしながら、原判決には、次の点において重大な誤りがある。
- 平成13年規約は、総会決議を経ていないにもかかわらず、有効に成立したと判旨したこと
原判決が有効に成立したと認定した平成13年規約については、総会決議を経ていないことが明白であり、それを示す客観的証拠が存在している。
加えて、後述のとおり、今後、改めて確認したところ、総会決議を経ていないことは、当時の理事からも確認が取れている。
したがって、平成14年5月から平成18年7月までの管理費等は、平成13年規約ではなく、原始規約(乙6)に基づき徴収されていたのである。
にもかかわらず、原判決は、上記客観的証拠に対する誤った評価の下、事実誤認したのである。
- 平成18年規約の解釈について
次に、原判決が、平成18年規約について、住戸と店舗及び各々のタイプごとに管理費等を異なる金額とする「別段の定め」が設けられているとは解釈できないとした点については、平成18年定時総会に至る経緯、同窓会における決議された内容、さらには総会後の管理費等の支払い状況や平成20年に信任決議をしていることなどからして、誤った規約の解釈と言わざるを得ない。
平成18年総会当時、本件マンションの区分所有者にとって、原始規約以来、住戸と店舗及び各々のタイプごとに管理費等の金額に違いがあること、すなわち本件マンションにおいてタイプ別管理費方式が採用されていることは、当然の前提とされており(なお、このことは、総会前に配布された「駐車場使用料及び修繕積立金改定一覧表」(乙20の6)とうからも明らかである)、総会当日においても、管理規約の変更決議(第6号議案)に先立ち、住戸と店舗及び各々のタイプごとに管理費等の金額に違いがあることを前提として修繕積立金の値上げ決議が可決され、同総会以降もタイプ別管理費方式であることを前提にしているのであり、区分所有者誰一人として、住戸と店舗とで管理費等の金額を金額を等倍とするなどという意思を有していなかったことは明らかである。
規約の解釈は、あくまで区分所有者の意思についての解釈でなければならない。
にもかかわらず、規約の文言が、従前の「タイプ別管理費」とは明記されていないという事務処理上のミスを殊更に重視し、「別段の定め」は明記されていないのでタイプ別管理費制度を廃止した規約改正であるなどと解釈することは、本件マンションの区分所有者のだれもが想定していない規約の解釈を司法が一方的に認定し、押し付けるものであり、およそ意思表示の解釈として常識外の解釈と言わざるを得ない。
したがって、そのような解釈をした原判決は、重大な事実誤認がある。
以下省略・・
(管理組合法人の主張は60ページ以上にも及び膨大な量ですが、内容は従来の主張を繰り返すものであり割愛いたしました。)