平成28年(ネ)第3088号 不当利得返還等請求控訴事件
控訴人 SDマンション管理組合法人
被控訴人 KT外15名

控 訴 答 弁 書

平成28年9月9日
東京高等裁判所第20民事部イ係 御中

上記被控訴人ら訴訟代理人弁護士 SK

同               OA

控訴の趣旨に対する答弁
1 控訴人さんろーどダイヤモンドマンション管理組合法人の控訴を棄却する。
2 控訴費用は同控訴人の負担とする。

控訴の理由に対する答弁
被控訴人らは,控訴人の平成28年7月25日付控訴理由書に対し,以下のとおり答弁する。
第1 「第1 はじめに」について
1 「1 本件訴訟の概要」について
本件訴訟の概要に関する控訴人のまとめは不適切である。
本件マンションは,住戸・店舗併用式マンションでありながら,もっぱら単棟型の管理規約による規整を行ってきた(原審原告第10準備書面11~13頁)。本件マンションの管理規約には,標準管理規約(複合用途型)(甲57)第25条,第26条のような規定が欠けているが,住戸と店舗間で管理費等の負担割合に格差を設けることが許容されるような管理規約上の根拠があるのか,が問題なのである。管理費等の債権の発生プロセスは,最高裁平成16年4月23日第二小法廷判決・民集58巻4号959頁が判示するとおりであり,管理規約に基づいて基本権としての定期金債権が発生し,総会の決議(更には理事会の措置)はこれを具体化するものにすぎない。したがって,管理規約上の根拠がないにもかかわらず,格差を設けて徴収していたのであれば,管理規約及び区分所有法に反する違法な徴収実務が行われていたというだけのことにすぎない。
2 「2 原判決の誤り」について
控訴人が原判決の誤りと主張する点については,原判決の判断はいずれも正当であり,控訴人の控訴は速やかに棄却されるべきである。
第2 「第2 本件事案の背景的事実」について
1 原始管理規約(乙6)が区分所有者全員の承認により有効に成立したとの点は,原審で述べたとおり,誤りである。その上,原始管理規約第13条1項が,区分所有者は,各区分建物の持分割合に応じたタイプ別管理費を負担する旨規定している趣旨は,住戸には分譲価格や階層・眺望・エレベータの使用量等に違いがあるが,それらの違いによって管理費等に格差を設けることはせず,共有持分に比例するという大枠のもと,住戸にAからZまである各タイプの内部では(分譲価格,階層,眺望,エレベータの使用量,床面積の多少の多寡等の個別事情にかかわらず)同一金額とするという趣旨であり,住戸と店舗間の負担割合の格差を定めたものではない。この点は,標準管理規約(複合用途型)(甲57)第25条2項が「住戸部分のために必要となる費用と店舗部分のために必要となる費用をあらかじめ按分した上で,住戸部分の区分所有者又は店舗部分の区分所有者ごとに各区分所有者の全体共用部分の共有持分に応じて算出するものとする。」と規定し,「按分」の結果格差が生じることを許容していること,「共有持分に応じて算出する」ことが保障されるのは,あくまで住戸部分の区分所有者の内部,あるいは,店舗部分の区分所有者の内部であることを明記していることと比較しても明らかであるし,むしろ原始管理規約(乙6)第15条が「各区分所有者は,その持分に応じて共用部分から生じる利益を原則として管理費に充当とする。」と規定し,充当額に住戸・店舗間の格差を認めていないことからも明らかである。
控訴人は,「タイプ別」の用語に独自の意味を付与しようとしているが,原始管理規約の起案者が自ら重要事項説明書において,住戸にAからZまでの「タイプ」を設けているとおり,住戸の類型であることは明らかであり,控訴人の主張が失当であることは明らかである(既に原審原告第1準備書面11頁以下,第2準備書面23・24頁,第10準備書面2~3頁で詳述したところである。)。
2 控訴人は,「⑷ 本件マンションの管理の経緯」と題して,分譲以来20数年にわたり修繕積立金が管理費の10パーセントとされてきたことに関し,縷々主張しているが,もとより,原始管理規約(乙6)第14条1項において,修繕積立金が管理費の10パーセントと明示的に規定されていることと,管理費等の負担割合について住戸と店舗間に格差を設けるべき原始管理規約上の根拠があるかとは,まったく別個の問題であって,修繕積立金が管理費の10パーセントであることや大規模修繕工事の原資に不足があるか否かによって,格差を正当化することができないのは明らかである。
3 控訴人は,「⑸ マンションの自治」と題して,ボランティアである理事の判断に対して司法判断は抑制すべきであるかの如き論調をとっている(現理事の中には管理会社に勤務している402号室SK氏もいて素人集団ではない)。しかし、訴状で述べたとおり,本件マンションの自治は,住戸の区分所有者のうちの特定の者による理事者ポストの独占,店舗区分所有者の理事会からの事実上の締め出し,総会における白紙委任状ないし議長一任の横行,理事による管理・会計資料の独占と店舗区分所有者への不開示等により,機能不全に陥っていることが明らかである。そのことを象徴的に示す一例として,店舗区分所有者は,理事に立候補しても,非推薦候補として取り扱われ,非推薦候補については,書面投票上賛否の記載がない場合には,理事就任に反対票を投じたものとみなすという,非常識な運用がなされていたことを挙げることができる。
こうしてみると,理事がボランティアとして長年理事職にとどまっているのも,管理費等の格差を固定化し既得権益を守ろうという動機によるものであることが明らかであり,その現状固定化のために,管理費(事実上店舗所有者が多く徴収されている。)を原資として多額の裁判費用(弁護士費用)を支出し,管理会社組合にも訴訟資料の作成を請け負わせる等,多数派支配を永続化しようとしていることが明らかである。
なお,控訴人は,平成23年11月の臨時総会後,OSから次回の総会で住戸と店舗管理費の割合に違いがあることを区分所有者に再度周知できるような議案を入れて欲しいという要望を受けた,と主張するが虚偽である。OSは平成23年11月23日通知書において,法の下に平等であるべき規約に,このような(244%)受忍限度をはるかに超える「不平等」や「差別」があってはならないこと,来年第29回の通常総会にこの「管理費,修繕積立金不平等負担」について規約を修正するべく,「通常総会議案」としてもらいたい旨を通知したのであり,「(2.44倍の)格差を周知する」よう依頼したことはない。
控訴人は,平成24年3月31日開催通常総会において,第3号議案として,管理費等の負担割合について本格的に検討することを提案した(T尋問調書9頁),と主張するが,事実に反する。第3号議案は,長期修繕計画の見直し及びそれに基づく管理費等店舗分担分適正化の検討承認の件と変質し,同24年総会議案としては,現行の長期修繕計画の見直しを検討することと,それに基づく管理費等の店舗負担分が適正かどうかの検討,と記載された。よって,OSは議案の主旨が2.45倍の格差是正とまったく違うので廃案とするよう申し入れ,棚上げになったものである。
控訴人は,OSからの上記要望を受け,区分所有法が想定している自治組織としてのプロセスを経るため,誠実な対応を継続してきた,にもかかわらず,被控訴人らが,区分所有法が想定する自治組織として本来想定されているプロセスを経ないまま,唐突に裁判手続を利用している,と主張するが,捏造とも言うべき事実無根の主張である。
被控訴人らは,直近5年間に,控訴人も主張するように100通にも及ぶ質問書や提案書,閲覧申請書等を提出しているが,控訴人理事会が悉く無視してきた(なお,その経緯等については,別途陳述書を作成して提出する)。
4 このような経緯があるからこそ,本件には,司法の積極的な介入が必要なのであり,司法は,理事らが多数の力を背景に管理費等について格差を設けようとしていることに管理規約上及び法律上の根拠があるのかを精査すべきものと考える。
5 「⑹ 各区分所有者の責任」についても,本件マンションの管理運営実態が上記のとおりである以上,そこで控訴人が主張していることも,自治の前提を欠く空疎な建前論にすぎないと言わざるを得ない。
なお,控訴人は,調停手続においても原審においても,格差是正の和解は総会の承認を得られないと繰り返し主張してきたが,それはつまるところ,白紙委任状で総会を牛耳っている理事ら自らの承認が得られないと述べているにひとしく,自作自演も甚だしいといわざるを得ない。
第3 「第3 いわゆる平成13年規約の不成立」について
1 控訴人は,平成13年規約が不成立である旨縷々主張するが,この点に関する原判決の判断は正当であり,論旨は理由がないというべきである。
2 なお,仮に13年規約が不成立であるとしても,前記のとおり,そもそも原始管理規約(乙6)も全区分所有者の同意が得られたものではないうえ,原始管理規約上に,管理費等につき住戸と店舗間で格差を設けるべき根拠はないことは前記のとおりである(原審原告第1準備書面11頁以下,第2準備書面23・24頁でも詳述した。)。
したがって,平成13年当時,上記格差を正当化する管理規約上の根拠がなかったことは明らかであり,そのことは平成13年規約の成否によって左右されない。控訴人の主張はいずれにせよ理由がないのであるから,NI氏を証人として採用する必要もない。
なお,本件マンション竣工当時,管理費等に格差が設けられていた理由として,業務用電力の電気料金が管理費で賄われていた経緯があるようである。ところが竣工後3年ほど経過して,その運用は終了した(甲114,Y陳述書)。かかる意味でも住戸と店舗に管理費の格差を設けることには理由がない。
第4 「第4 平成14年5月から平成18年7月までの管理費等の徴収」について
原始管理規約に,管理費等につき格差を正当化する根拠がないことは前記のとおりであり,問題は,格差を正当化しうる管理規約上の根拠があるか否かであって,各区分所有者の支払状況が問題なのではない。控訴人の主張は失当である。
なお,控訴人は,昭和37年区分所有法14条においては,同条と異なる取扱をするのに「規約に別段の定め」がある必要はなかった旨主張する。しかしながら,現行区分所有法19条は,昭和37年法の14条を引き継ぐとともに,規約で別段の定めをすることができるとしていた昭和37年法8条を合体させたものであり,現行法19条の内容は昭和37年法の規定と同一である(「コンメンタールマンション区分所有法第2版」109頁,「基本法コンメンタールマンション法第三版」39頁)。
したがって,控訴人の法改正に関する認識も誤っている。
第5 「第5 平成18年規約について」について
1 控訴人は,平成18年規約に「別段の定め」はなかった旨の原判決について,縷々論難するが,もとよりこの点に関する原判決は正当であり,論旨は理由がないというべきである。
原始管理規約(乙6)第14条1項において,修繕積立金が管理費の10パーセントと明示的に規定されていることと,平成18年規約において,管理費等の負担割合について住戸と店舗間に格差を是認すべき規定があるかとは,まったく別個の問題であって,それまで修繕積立金が管理費の10パーセントであったという経緯や大規模修繕工事の原資に不足があるか否かによって,格差を正当化することができないのは明らかである。
平成18年規約に係る議案書(乙20の2)第3号議案は,「現在の修繕積立金の12.5倍」とすることを内容とするものであるが,それは当然,「現在の修繕積立金」であると控訴人やその理事らが認識していたものが法的に有効であることを保障したり,その有効性の確認・確定を求めたりする趣旨ではないし,原判決も正当に指摘するとおり,管理規約上に「別段の定め」がないために無効な格差を,規約改正手続すなわち特別決議によらずに,有効なものに転換することもできないのが道理である。
上記議案の可決によって生じる効果は,法的に有効な額の修繕積立金が12.5倍に増額されるというだけのことにすぎない。まして,同議案は,修繕積立金の増額に係るものであって,管理費について取り扱うものでは全くないから,同議案の可決によって,管理費の格差を正当化しうるものでないことまた明らかである。
論旨は理由がないというべきである。
第6 「第6 タイプ別管理費方式が合理的制度であること」について
1 控訴人は,「タイプ別管理費方式」なる用語を作出し,そのような制度が管理規約上存在したかのごとく主張するが,既述のとおり,原始管理規約(乙6)第13条は,管理費の負担割合について住戸と店舗間の格差を設けた「別段の定め」には該当しない。
平成23年規約の別表第4については,原判決が,2倍を超える格差を無効とした点は正当であるが,2倍を超えない格差も無効とすべきであり,この点は,被控訴人らの平成28年8月1日付控訴理由書において詳述したとおりであるが,なお以下の点について補足する。
2 控訴人は,住戸・児童館と店舗の管理費等に約2.45倍の格差があることについて被控訴人らに報告したことも,問題提起したことも,協議したこともなかった。
また,控訴人は,管理費と修繕積立金の両方について,約2.45倍の格差があることを看過し,修繕積立金のみを議論しているが,失当である。しかも控訴人が主張する大規模修繕の必要性は,専ら住戸に関するものである(平成28年8月1日付控訴理由書22頁~25頁)。
なお,控訴人は,リーフレット(甲29)やパンフレット(乙26)を引用し,本件マンションの店舗に,あたかも多数の顧客が参集し,美観,騒音,臭気,衛生上あるいは安全上の問題が発生し,そのために設備点検,管理,補修,清掃費用が増加する旨も主張している。
しかしながら,リーフレットやパンフレットの記載が事実に反することは,本件マンションの店舗の実態を見れば(甲108,甲109①,②,⑦,⑧)明らかである。繰り返しになるが,中通路の西側は,住戸区分所有者が100台以上自転車を駐輪している自転車置場であり,中通路は専ら自転車に乗った住戸区分所有者が,東側道路に通り抜けるために利用しているのであり(甲94の1,2,甲106,6枚目写真),店舗の商業活動のためだけではない。また,中通路の防火施設や営業活動に伴う騒音等の問題についても,既に被控訴人ら平成28年8月1日付控訴理由書3頁以下において主張しているとおり,管理費等について格差を設ける理由にはならない。
3 原判決が管理費と修繕積立金を混同していることについては上記控訴理由書において指摘したところであるが,控訴人も同じ誤りを犯している。そのうえで,控訴人は,あたかも店舗に甚大な費用がかかるかのように事実を歪曲している。
実際には,控訴人が十数年来支出してきた管理費及び修繕積立金と,被控訴人ら店舗のために支出したとする経費の合計を比較すれば,店舗にかかった支出はわずかなことが一目瞭然である(甲115,OM陳述書)。また,控訴人が店舗のために支出したと主張する消防設備指摘事項改修工事(4,462,500円)ついては工事明細が無いが、工事6項目は主に住戸・地下駐車場に関わるものであり、店舗のみの工事項目ではない。なお、平成21年に実施された消防点検指摘改修工事922,215円の工事科目内訳では店舗と明記された項目は全9項目中2項目247,400円であった(乙45)。
また,控訴人は平成25年1月30日,平成24年11月20日の点検時の指摘事項に基づいて,消防設備点検指摘事項改善工事の見積もりを446万2500円でとり(乙45の1),同年3月16日,462万円で発注を終えている(乙33の1。但し,乙33の3の請求書では金額が追加分の8万2950円のみであるので,本工事分の振込通知書及び領収書の提出を求める)。その後控訴人は,同年末の点検でも相変わらず多くの指摘を受けたうえ(乙52),平成25年度及び26年度は消防法に定められた消防用設備等点検結果報告書を提出せず(違反には刑事罰も予定されている),同26年度と27年度にも消防設備改修工事費用を支出していることから,修繕工事は25年に終了していなかった蓋然性が高い。すなわち,高橋マンション管理士の鑑定した平成25年収支計算書(乙49)の修繕工事費支出が果たして25年度中に行われていたものかどうか,不明といわざるを得ないのである。
4 さらに,控訴人は,本件マンションを複合用途型マンションであると述べるが,控訴人自身が本件マンションを複合用途型マンションとして扱ってこなかったことは前述したとおりである。もっとも,被控訴人らは,本件マンションが住戸と店舗および大田区立児童館で構成される複合用途型であることを前提に,その費用負担割合を検証し(平成28年8月1日付控訴理由書23~25頁,甲5,55,113),住戸により過大な費用がかかることを論証済みである。
5 一方,控訴人は,管理費等の具体的な金額は,丸善がマンションの専門業者として,同社のノウハウ・経験等から総合的に判断して住戸平均約158円/㎡,店舗平均約385円/㎡と決定したと主張する。
しかしながら,児童館を約79円/㎡としたことはパンフレット・重要事項説明書・管理規約等のどこにも記載がない。そもそも管理費は掛かった経費を公平に負担し合うものであり,分譲主が竣工前に格差を設定していたとしても,それは,当時分譲主が想定した未確定のものに過ぎない。年数の経過により経費区分が明らかになり,格差の根拠が存在しない,あるいはなくなったことが判明すれば,その時点で店舗を交えて真摯に話し合い,負担割合を見直すべきであった。ところが,控訴人は,管理費等の見直しをするどころか,児童館については平成20年32月に規約改正手続をせずに住戸と等倍とし,店舗との格差についてはむしろ平成23年決議により約2.45倍の格差を既成事実化しようとした。
6 高橋マンション管理士の意見書(乙48)が偏った意見であり,信用できないことは,原審原告ら第9準備書面に詳述しているとおりである。
さらに指摘するならば,乙48では,児童館について,事務管理業務費及び一般管理費,配水管清掃費の負担割合を,専有面積の割合ではなく戸数で算定しているが,これは本件マンションの管理規約及び区分所有法の趣旨に反している。
また,乙48では店舗専有部電気料金清算業務として31万2878円が計上されているが,これは収支報告書に計上されていない金額である。
さらに,甲58(管理仕様書20頁)における管理員業務項目は100項目に上るところ,乙48では21項目しか検討されていない。
一方,乙48では検討されていた分譲価格,児童館の迷惑料,気積について乙50では除外されたこと,気積の係数は迷惑料と一緒になって1.335となったこと,結果的に店舗の負担割合を2.65から2.45とした事実が見受けられる。この変遷には合理性を見出せない。
なお,高橋管理士は乙5048において,迷惑料の係数を,1.00+0.12としていたが,これまた算出の根拠が不明である。
もとより気積などという概念が,本件マンション竣工以来,総会で議論になったことなど一度もないし,そもそも損害賠償請求権の存否として判断されるべき迷惑料が,管理費等に包含されるという考え自体が奇異としかいいようがない。なお,被控訴人が気積の拠り所とする1階の階高が高い理由は,1階の天井裏で上階住戸のガス,給排水の配管を切り回しするスペースが必要となるためである(検討書甲80資料21,甲116の1~34)。
さらに,高橋管理士は「分譲当時から前者(店舗)が約2.44倍に設定されていると聞いております。分譲業者がどのような計算をしたかは定かではありませんが,本件マンションは複合用途型ですので,(中略)顧客等の来集による住民への迷惑,顧客による損耗等も考慮したことと思われます」と述べているが,同じく人の参集が見込まれ,実際にも人が参集している児童館の負担は,分譲当時から住戸の0.5倍である。かかる事実に照らしても,高橋管理士の論理が破綻していることは明らかである。
そのほか,被控訴人らが原審段階から甲80において指摘していた恣意的な事実の歪曲に鑑みれば,およそ乙48,50には信用性がないというべきである。
第7 「第7 不当利得返還請求が信義則違反又は権利濫用に該当すること」について
1 被控訴人らには,格差を容認・甘受しなければならないような信義則違反はなく,原判決が,被控訴人らのうち一部の者について信義則違反を認めたのは事実を誤認し,法律の解釈適用を誤ったものである。この点についても,被控訴人らの平成28年8月1日付控訴理由書28頁以下において詳述したとおりであるが,なお以下の点について補足する。
2 まず,23年総会において控訴人から被控訴人らに対し,管理費等の格差について具体的に諾否の確認がなされたことはなかったし,被控訴人らにおいても,格差を認識できず,格差について諾否の意思表示をしたこともなかった。控訴人の主張は,単に23年決議に賛成の意思表示をした,あるいは反対の意思表示をしなかったというに留まる。実際控訴人の代表理事においてすら,格差に関する認識が希薄だったのである(控訴人本人尋問調書33頁)。
3 また,18年決議に関する裁判は,あくまでも修繕積立金が12.5倍になったことに関するものであり,住戸と店舗間の格差は取り上げられていなかった。
4 さらに,被控訴人らに対する管理費等の請求が,電気料金を含めた合算で「カンリヒトウ」として自動引落されることに照らせば(甲115,OM陳述書),およそ被控訴人らにおいて,格差に関して認識を持つ機会はなかったものである。
5 したがって,控訴人において,被控訴人らに与えるべき情報を巧みに隠しながら得られた決議に対し,被控訴人らが争うことについて権利濫用を主張することは許されない。
第8 求釈明
1 控訴人は,被控訴人らが平成28年8月1日付控訴理由書で行った求釈明(8頁,防犯カメラ4台の録画データ,12頁,陥没部分補修工事及び合流枡点検口更新工事が行われ,その費用として165万円を支出したことを示す証拠)に回答されたい。
陥没部分補修工事に関しては,平成22年に実施された大規模修繕工事の小田急建設見積書(甲101)に記載されているところ,何故これを同年中に大規模修繕工事の一環として実施せずに23年に別途追加工事としたか,そして実際にそれが支出されたか,について釈明を求める。
2 平成25年1月30日付(株)フルメンテファシリティズの消防設備点検指摘事項改善工事見積書(4,462,500円)及び同社の発注請書4,620,000(乙33の1)に見合う同社の請求書・領収書及び同社への銀行振込通知書を提出されたい。
なお,この件に関し,控訴人は,平成21年に消防点検指摘事項改修工事として予算200万円から92万円を支出し,翌平成22年,23年,24年の3年間に防火シャッター改修工事予算500万円を毎年計上しながら,結局工事支出は0であった。ところが,平成23年及び24年の消防用設備等(特殊消防用設備等)点検結果報告書では,防火シャッターの不備(感知器作動時,連動作動しないと備考欄に記載がある)が指摘されていた。それを,控訴人は多額な予算を計上しながら放置したのである。その後,平成25年に工事を実施したとしながら,なぜか平成26年,27年にも消防点検指摘事項改修工事について支出している。かかる不自然な経過をたどったことに関し,合わせて釈明を求めるものである。
以  上