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平成26年(ハ)第6316号不当利得返還請求事件

原告  株式会社H

被告  SDマンション管理組合法人

 

第1準備書面

 

平成26年6月30日

東京簡易裁判所民事第1室2係 御中

 

原告訴訟代理人 弁護士

 

原告は,平成26年5月28日付被告準備書面(1)の主張部分について,以下のとおり認否・反論する。

 

第1  同書面第2の1について

1 「(1)本件マンションの構造」のうち,本件マンションに住戸用の高圧受変電設備が設置されていること,店舗及び1階共用部分のための自家用受変電設備が設置されていることは認め,その余は否認ないし争う。

なお、自家用受変電設備は管理室及び地下駐車場のためにも設置されている(乙1号証1~6検診台帳写し参照)。また,平成11年までは,1店舗だけが稼働していても,1基で19店舗分全体が稼働するクーリングタワーが存在していた(それだけ現在に比して多量の電気が消費され、高額な基本料金となっていた)。

さらに,本件マンションは,住戸・店舗併用の単棟型マンションであり,複合用途型ではない。しかも,分譲会社の丸善建設が当初目論んだようなショッピングゾーンは,実現しなかった。したがって,被告の主張は事実と異なる。

そもそも,本件電気料の不当利得返還請求において,本件マンションが複合用途型か否かは無関係である。

2 「(2)店舗用の自家用受変電設備及びその電気料金の立替払いについて」のうち,住戸の電気料金の請求方法,店舗の電気料金を被告が立替払いをすることは認め,その余は否認ないし争う。

甲1・2を比較すれば明らかなように,被告の原告に対する電気料の請求は,「使用状況に応じた」ものになっていない。しかも,被告は自ら事務手数料を加算して請求していることを認めている。かかる意味からも,被告の「使用状況に応じた按分請求」なる主張が虚偽であることは明らかである。

なお,被告はあたかも電気事業法上,自らが電気料を徴収する権限があるかのような主張をしているが,同法上,被告にそのような権限を認めた規定は存在しない。

3 「(3)電気料立替え及び各店舗への請求業務」のうち,被告が東京電力からの請求について立替払いを行っていること,検針業務を行っていることは認め,その余は否認ないし争う。

被告が原告の使用電気量に応じた按分請求を行っていないことは上記のとおりである。

4 「(4) 電気料金の計算」のうち,原告が電気使用量に応じた電気料の請求以上の請求を受けていることは認め,その余は不知。

被告はこの期に及んで「事務手数料」を使用電気量に応じた料金に加算して請求していると主張するが,かかる費用について原告が了解して支払ったこともないし,説明を受けたこともなかった。実際,甲2の各号を見れば明らかなように,被告から原告宛請求書に「事務手数料」なる項目は一切記載されていない。

しかも,事務手数料の金額が「月額8000円」,平成17年だけが「8700円」というに及んでは,「事務手数料」が後付の,都合の良い方便であり,いい加減なお手盛りであることが明らかである。

なお,被告は「使用電気量に応じた」料金に事務手数料を加算,と主張しているのであるから,平成17年1月から同24年4月までの管理室,地下駐車場,1階共用中通路,自転車置場の共用部分,及び各店舗の使用電気量を月ごとにKw数で開示されたい。

5 「(5)小括」は否認ないし争う。

原告は被告から「月額317円」の事務手数料を徴収されることについて,説明を受けたことも,同意を求められたことも,同意をしたこともなかった。

しかも,上記のとおり「約」がつく上,金額さえも一貫しない「事務手数料」など,合理的な説明にさえなっていない。

さらに言うならば,被告が主張する「事務手数料」は,被告管理組合法人の収支報告書にも記載されていない。

したがって,原告に対する電気使用量を超えた徴収分が事務手数料であり,被告の不当利得ではないとの主張はまったく理由がない。

なお,被告は原告の計算方法が「独自」であるなどと論難し,被告準備書面(1)4ページの欄外に、「2かかる事務手数料の合計は2万7918円である(平成17年1月から平成24年4月分)。被告としては、原告の主張から言えば,実質的には、この金額が不当利得として主張する金額ではないかとも推測する」と記載して,原告主張を曲解,矮小化しているが事実ではない。原告の計算方法は,東京電力から被告への総請求金額を,管理室・中通路・自転車置場・地下駐車場及び全19店舗の業務用電力総使用量で除し,その単価に原告の電気使用量を乗じたものである。まさに被告の過剰請求分を不当利得として返還を求めるものであり,被告請求の原告電気使用量Kwが事実であるとすれば、計算方法はいたって平明かつ当然のものである。

しかしながら,被告提出の乙1の31~88の「再発行」なるコピーは,管理人検針台帳の写しではく,原告店舗の電気使用量Kwが事実かどうか合理的な疑いが残っている。

第2 同書面第2の2について

1 「(1)基本料金について 」「ア 基本料金相当金額の計算について」は、否認する。

被告は、「毎月、各店舗に対して基本料金相当額と使用量相当金額の合算を請求している。」とし、「基本料金相当額は、平成元年5月以降、被告が東京電力に支払っていた自家用受変電設備の契約設備電力(自家用電力契約量)68Kwの基本料金を元に算定されており、現在の金額は9万4669円である。」と主張しているが、現在の東京電力との業務用電力契約は48Kw(甲1の82)(甲3,平成24年の東電値上げ通知書参照)であり,基本料金は月額6万8333円(年額82万円)である。ちなみに東京電力との契約電力は本件請求期間中最大でも54Kwである(甲1の25~37)。

被告主張は、現在の東電請求の事実に対して、契約Kwで1.42倍、契約基本料金で1.39倍という,実際の契約を上回る過剰な内容となっている。

なお,被告は平成25年2月9日付で店舗所有者宛「1階店舗電気料金算出方法の見直しについて」と題するアンケート用紙(甲3)を配布しているところ,その中で「現在の基本料金計は,平成11年11月分より,契約電気量68Kwで計算されていると思われます」などと,自ら店舗から電気料金を徴収しながら,基本料金の根拠さえ未だに明確にしない有様である。

被告が自ら認める平成元年5月以降という契約電力量68kwは、店舗用クーリングタワーが稼働していた平成11年以前の最大値である。被告は現在も68Kwであると主張しているが,これは15年以上も過去の数値であり,月額9万4669円(年額113万6000円)というのは,平成元年~11年以前の最大基本料金であった。クーリングタワーが撤去されてからは,契約電力量48kw前後,基本料金は月額6万8333円(年額82万円)前後である。

すると被告主張との差額は月額2万6336円,年間31万6032円に上り,15年間では474万0480円となる。基本料金だけでも400万円を超える現金が一体どこに消えてしまったのか,甚だ疑問である。平成24年の値上げまで,東京電力の契約電力量と基本料金は、毎年その年の最大使用量を基に下げ基調で変動してきたものであり(甲4,資源エネルギー庁資料),これに対して被告は15年以上もの間、最大契約電力量も、最大基本料金も改めず,検針台帳の開示請求を2年以上も拒絶しているのである。

2 同「イ 計算方法」のうち,各店舗の電気の使途が電灯と動力の2つに分かれていることは認め,その余は被告の計算方法の妥当性も含め,否認ないし争う。

被告は19店舗の子メーターを38個とカウントし,レントゲン専用の子メーターを1個,1階共用部分専用の電灯用子メーター2個の合計41個の子メーターがあるとしているが,これにもまったく根拠はない。

なぜなら,店舗の契約電力は30アンペアである一方,レントゲン室は200アンペアであり,店舗動力と比較すれば6.7倍の電気容量(店舗電灯3KVAの13.4倍)であるにもかかわらず1個分としかカウントしておらず,100V30A(3KVA)の電灯メーターも,200V30A(6KVA)の動力メータ-も、レントゲン200V200A(40KVA)メーターも同じ1個とカウントしているからである。

しかも,1階共用メーターは,全体共用の自転車置き場と店舗用中通路(実際には全体共用として使用されている)を区別すべきであり,管理人室と地下駐車場もあるのだから,子メーターの数を41とするのは妥当でない。

したがって,被告の子メーターのカウント方法は恣意的に過ぎ,理由がない。

被告は、「原告は電灯用子メーター及び動力用子メーター双方を設置しているため、原告の基本使用料金は下記の通り毎月4,618円と算出される。94,669円÷41×2=4618円」と、主張する(被告準備書面(1)6ページ中段)が,誤りである。

なぜならば,仮に被告のメーター数を前提に計算しても,現在の基本料金は前述のとおり6万8333円となっているのであり,計算式は,68,333円÷41×2=3,333円となるはずだからである。

そうすると,原告の電気基本料金は3,333円となり、被告の4,618円との差額は1,285円となる。

3 「同(2)使用料金について」のうち,被告の計算方法は,それが合理性のある計算方法であるとの主張を含め,否認ないし争う。

被告は,「例えば平成24年4月分(甲2号証の84)のKW単価は、次のように算出される。(229,566円-94,669円+8,000円)÷8,969KW≒15.932円/Kw」「このKW単価に店舗ごとの電気使用料を乗じて、個別の使用量相当金額が算出される。例えば、同月における原告の使用料金は、15.932(円/Kw)×609(Kw)≒9,703円となる。」と主張しているが(被告準備書面(1)7ページ)、虚偽である。

なぜなら、東京電力の平成24年4月分の電気料金等領収書(甲1号証の81)によれば、使用電力量合計は8,969Kwではなく、11,665Kwである。また,被告の述べる事務手数料はまったく請求の理由がない。よって、同月のKwあたりの単価は(229,566円-94,669円)÷11,665KW≒11.564円、同月における原告の使用料金は、11.564(円/Kw)×609Kw=7,042円となる。

なお,被告の計算方法の構造的欠陥については後記第5原告の主張で詳述する。

4 「同(3)各店舗への請求金額」は否認ないし争う。

被告は、「店舗ごとに基本料金及び使用料金を算出し、それらを合計したものを被告は電気料金として請求している。例えば被告の原告に対する平成24年4月の請求料金は、4,618円+9,703円=14,321円となる(甲2号証の84)」と主張しているが、誤りである。

上記の通り、原告の平成24年4月の請求料金は、3,333円+7,042円=10,375円となるべきである。

この金額と被告の計算では,3,946円(約4割)も差額が発生する。東京電力との契約が虚偽であるはずはなく,被告の請求が根拠なく過剰であることが明らかである。

このように,被告の原告に対する請求は,東京電力との契約に基づかない過剰なものであり,意図的に間違った計算をすることによって差額を小さく見せかけようとするもので,悪質である。虚偽の請求書等を根拠に約4割もの不当徴収を正当化する被告の主張にはまったく理由がなく、到底許されるものではない。

訴状における請求額208,562円は、被告の請求書が無かった9ヶ月分が不明のため未請求であり、また、管理室・地下駐車場・一階中通路・自転車置場等の共用部の基本料金並びに使用量が不明であり計算できなかったために少なくなっている。実際の被害金額は月3946円差額の7年分84ヶ月を乗じた33万円前後になると思われるが、原告は追って,被告から提出された準備書面(1)別紙や乙1号証等により、請求金額を増額する予定である。

第3 同書面第2の3「原告は被告に対し本件業務を委託していること」について

否認ないし争う。

原告を含め,本件マンションの店舗所有者の誰も,被告に対して事務手数料の徴収について明示あるいは黙示の同意をしたことはない。

しかも,被告は電気料金の請求について東京電力から一括請求を受けて立替払いすることが自家用受変電設備の設置の関係でやむを得ないなどと主張するが,両者に何らの因果関係もない。

さらには,電気事業法上,被告が自家用受変電設備の管理を行い,検針作業も行っているというが,実際に検針作業を行っているのは,訴外日本ハウズイングの管理人である。

そして,被告は、同社と電気設備点検をも業務とした管理委託契約を締結し(甲5),同社に対して原告ら区分所有者が納めた管理費から委託料を支払っているのであるから,被告が自ら「検針作業を行うこと」を根拠に「事務手数料」を徴収するのは詐欺に他ならない。

第4 同書面第2の4「被告に利得がないこと」について

否認ないし争う。

被告の「事務手数料」の徴収は単に根拠がないだけでなく,上記のとおり電気設備点検、電気料検針について訴外株式会社日本ハウズイングに行わせ,別途委託料を支払っているというに及んでは,もはや民事の不当利得を超えて,刑事罰の対象ともなる詐欺行為にほかならない。

第5 原告の主張

1 被告計算方法の不当性について

被告は,電気料金の計算方法を,(東京電力の総請求額-基本使用料+事務手数料)÷総使用Kwであると主張するが、かかる計算方法は以下のとおり恣意的かつ不当である。

まず,被告が述べる基本料金は1店舗あたり4,618円であるが,この金額は上記のとおり子メーター数を41として算出したものである。しかしながら,電気容量が店舗動力の6.7倍(店舗電灯の13.4倍)に上るレントゲン室を1としかカウントせず,自転車置き場と中通路を区別せず,管理人室と地下駐車場が平成17年8月以降は入っていない(検診台帳から除外)という点で,41というカウント自体が恣意的であり、不当である。

2 被告計算方法の構造的欠陥にについて

被告が行っている計量メーター数の頭割の計算による基本料金の算定方法は,東京電力の基本料金算定方法(最大使用電力量に基づく)を全く無視しているために,電気使用量の異なる店舗の業種により極端な不公平が生じている。

例えばトランクルームが月間10Kw使用と仮定し,レントゲン室が月間100Kw使用と仮定した場合,同じ基本料金4618円の使用量負担割合はトランクルームが461.8円/Kwであり,レントゲンは46.18円/Kwであり,その差は10倍となる。

東電基本料金の基となるのはその年の最大使用量であり,その最大要因となるのはレントゲンである(40KVA)が、その店舗の基本料金がメーター数の頭割の分、割安(6.7分の1~13分の1)となり,限りなく東京電力の請求原価(平成24年の値上げ前は基本料金込みで17円前後)に近くなり,倉庫やトランクルームはその反対に割高になり,基本料込み実質単価は東京電力請求単価の5倍、10倍にもなるのである。

3 原告の計算方式が公平な精算方式である。

店舗間の公平を期すためには,東京電力の業務用電力請求総額を総使用量で除した使用量Kw単価を各店舗別使用量Kwに乗じて算出することであり,それのみが一円の過不足もない費用精算方式であることは論を俟たない。

4 結語

1階共用部分と地下駐車場,管理室も各店舗と平等に電気料金を算出して管理費から負担させるべきことは言うまでもないことである。ところが被告は,平成17年分以降についてはそれら共用負担分の検針台帳原本閲覧に応じないし、まともなコピーを提出もせず、業務用電力料金の全てを店舗に負担させたり、それが露見すると手数料であるなどと詭弁を弄したりしている。かかる被告の行為は、既に民事事件の域を超えており許されるものではない。

第6 求釈明

被告は平成25年2月9日付で店舗所有者宛「1階店舗電気料金算出方法の見直しについて」と題するアンケート用紙(甲3)にて,Kw使用料金を1~3円上乗せしたと記載し、被告準備書面(1)では原告に対する上乗せはKwあたり0.77円であると主張するが、これは理事会議事録にも総会議事録にも記載がない。

そこで,原告は被告に下記事項の釈明を求める。

1 原告が所有する102号室について、平成17年から平成24年までの84ヶ月分について、被告の誰が、0.77円/KWを上乗せすることを判断したのか。

2 被告請求書による原告所有の102号室使用量Kwは平成21年までは年間3000Kw台だったが、平成22年から平成24年にかけて突然約7000Kw前後に倍増し,原告が被告に対して電気量検針台帳の開示を請求した翌平成25年は再び3000Kw台に半減している。これは、被告が基本料金の上乗せと使用料金のKw単価を上乗せした以外に使用量Kwそのものを水増ししていた疑いがある。そこで,再発行ではない管理人による電気量検針台帳原本を提出するよう再度求める。

3 被告は消費者保護法を理由に原告による検針台帳閲覧を拒んでいるが,一階共用部分である管理室,中通路,自転車置場,地下駐車場は同保護法の対象ではなく、共用部の業務用電気使用量検針台帳写しを開示するよう再度求める。

4 被告の原告に対する電気料請求の計算根拠を確認するため,管理会社たるダイワード株式会社及び株式会社日本ハウズイングの月次報告書を平成17年1月から同24年4月分についてすべて提出されたい。

5 平成19年6月から低圧電灯、低圧動力の2契約を低圧高負荷の1契約に変更した被告と東京電力との契約内容も開示されたい。

以上

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