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過去に分譲されたマンションにおいて、分譲時から踏襲した管理規約が原因で住民同士の争いが絶えないことから、平成14年に区分所有法第30条3項が新たに追加されました。

区分所有法第30条3項では「専有部分もしくは共用部分又は建物の敷地若しくは附属施設(建物の敷地又は附属施設に関する権利を含む)につき、これらの形状、面積、位置関係、使用目的及び利用状況並びに区分所有者が支払った対価その他の事情を総合的に考慮して、区分所有者間の利害の衡平が図られるよう定めなければならない」。
とされています。

法務省民事局参事官 吉田徹著 (改正マンション法) には「今回の改正では、規約の衡平性を判断する場合の考慮要素を列挙し、それらを総合的に考慮して、区分所有者の利害の衡平が図られるように規約を定めなければならないとする規定を新設することにしたものです。なお、規約の衡平性に関して第30条第3項に列挙されている考慮要素は、規約の衡平さや適正さが争われたこれまでの裁判例において実際に考慮された事項を参考にして規定されたものであり、今回の改正も、規約の衡平さに関する従来の裁判上の規範に変更を加えることを意図したものではなく、これを具体化・明確化し、これによって規約の衡平さや適正さの確保を図る趣旨のものです。したがって、改正法の施行後に、規約を新たに設定したり、変更したりする場合には、第30条第3項の適用により、同項に列挙されている衡平性の判断要素を総合的に考慮して、区分所有者間の利害の衡平が図られるように定めなければならないという一般的な義務が課されるとともに、その利害の衡平を著しく害する内容の規約が定められた場合には、同行に基づいて当該規約が無効と判断されることになります。また、改正法の施行前にすでに設定されていた既存の規約についても、同項の適用は排除されていませんから、その内容が区分所有者間の利害の衡平を著しく害するものである場合には、同項に基づいて当該規約が無効と判断されることになると考えられます。」と記載されています。

つまり、マンションにおいてはこの区分所有法第30条3項により、管理費、修繕積立金の衡平性を欠いた規約は無効になります。

区分所有法30条第3項に定める衡平性が盛り込まれた背景には、規約に衡平性を欠き、それを原因とした争いが発生するケースが多発し、法制審議会において、実際に争われた過去の裁判事例、判例に基づいて盛り込まれたことは冒頭記載したとおりです。

そして、この条項は遡及することとなり、既存の規約においても区分所有法30条第3項に反するものも適用され無効となります。

区分所有法30条第3項に反する、つまり、衡平性を欠くということは民法90条(公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。)「公序良俗」に反して無効となるということです。

この無効(公序良俗に反すること、法律の強行規定に反すること)は、絶対的無効と解釈されています。絶対的無効は、当事者間に限らず、第3者に対しても効力が及ぶことになります。

 

衡平性を欠く規約を承認していた場合の効力はどうなるのでしょうか。

民法119条(無効な行為は、追認によっても、その効力を生じない。但し、当事者がその行為の無効であることを知って追認をしたときは、新たな行為をしたものとみなす。)と定められています。

無効な法律行為を追認(承認)していたとしても、公序良俗に反する行為、また、強行規定に反する行為は、有効とはなりません。但し、当事者が、その行為が“無効であることを知りながら承認”したときは、新たな行為をしたものとみなされます。つまり、管理費等の格差のある取り決めがされていることを、その格差を無効であることを承認して支払っている場合には、その格差が認められることになります。

例えば、格差のある原始規約より何度か規約改定がおこなわれ、マンションの管理費の格差について多少なりともあることを認識していた組合員がいたとしても、また、その長きにわたって管理費を支払っていたとしても、その組合員がその格差を無効であることを認識せずまた、承認をしていない限り、格差のある管理規約・管理費等が有効となることはありません。

そして、取り消すことの出来る法律行為は消滅時効、又は除斥により取り消し権が消滅して取り消すことが出来なくなりますが。
公序良俗に反し、無効とされた法律行為は、初めからその行為は無かったことになり、消滅事項にかかるとか、除斥期間が経過して無効の行為が有効となることはありません。

仮に、マンションが分譲後30年経過している場合、原始規約より店舗・住居間の格差につき、公序良俗に反し無効とされた場合には、30年前の分譲時にまでさかのぼることになります。

ゆめゆめ、「公序良俗に反する」「区分所有法第30条3項に反する」管理規約を放置することは、マンションの管理に携わる者として絶対に許されないのです。

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