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平成25年(ワ)第39号不当利得返還請求事件

原告 店舗組合員14名

被告SDマンション管理組合法人

被告準備書面(5)

平成26年10月20日

東京地方裁判所民事第32部合議B係 御中

被告訴訟代理人弁護士

 

第1 管理規約上、いったん納付した管理費等の返還は認められないこと

1 管理規約の内容

被告の管理規約においては、組合員は、納付した管理費等及び使用料について、その返還請求又は分割請求出来ない旨規定されている(乙16:第60条5項、甲17:第62条5項)。

上記規定は、国土交通省が公表しているマンション管理規約(複合用途型:乙28)第65条5項を基に制定されたものである。
国土交通省に設置されたマンション標準管理規約検討委員会は、そもそも管理費は単年度会計を前提に処理・運用されるものであること、修繕積立金について納付後の返還を認めると修繕計画を前提に逆算して徴収している積立金制度自体が崩壊してしまうこと等に鑑み、納付された管理費等については、その返還を一律に禁止したものである(なお、繰り返し主張しているとおり、総会決議を欠くため有効に成立したものではないものの、本マンションにおいて有効な管理規約と誤信されていた甲2の管理規約においても、第49条4項において、同様の条項が規定されている)。
2 裁判例
上記条項に関する裁判例として、東京簡易裁判所は、居住目的以外の事務所使用の場合に特別管理費を一般管理費に付加して支払うものとされていたマンションにおいて、事務所使用を中止した後も特別管理費を支払っていた区分所有者が管理組合に対し返還請求を求めた事案について、特別悪質な徴収でない限り、返還請求を認めるべきではない旨判示している(乙41)
管理規約は、各区分所有者の権利義務、共用部分の負担・利益の収受等に関する自治規範であり、各区分所有者の総意により形成されるものである。前述した管理費等の性質・制度趣旨にかんがみ、区分所有者の総意として、一旦納付した管理費等の返還は認めないこととすることを自治規範の内容として定めた以上、上記東京簡易裁判所判決のように、特別悪質な徴収等の場合を除き、自治規範通りに運用すべきであることは当然のことである。
したがって、原告らが納付した管理費等について、原告らが返還請求をなし得ないことは、管理規約上明らかである。

第2 他の複合用途型マンションにおける管理費等の定め
1 他のマンションとの比較
本件マンションと同じ複合用途型マンションにおいて、住戸と店舗とで管理費等の額に差を設けることは、一般的に行われていることである。販売等に出されない限り、複合用途型マンションであっても管理費等に差があるマンションなのか否か、外部からは知る方法がないため、そもそも調査対象とすることが出来たマンションの数自体限定されてはいるものの、被告が調べた範囲でも、乙42記載の各マンションにおいて、住戸と店舗とで管理費等の額に差が設けられている。
実数としては、より多くの複合用途型マンションにおいて、店舗と住戸とにおいて、管理費等の額に差が設けられていると考えられる。
2 裁判例
なお、従前指摘したとおり、住戸と店舗とで管理費等の額に差を設けることにつき、神戸地方裁判所は、住戸と店舗とで管理費の額に約8.7倍の格差がある事案について、当該格差は区分所有法30条3項に反せず、管理費等の滞納者に対し管理費等の支払いを命じる判決をしている(乙43)。

以上

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