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平成25年(ワ)第39号不当利得返還請求事件

原告 店舗組合員14名

被告SDマンション管理組合法人

被告準備書面(5)

平成26年12月4日

東京地方裁判所民事第32部合議B係 御中

被告訴訟代理人弁護士

第1 管理費等の額に差を設けることの合理性の補足

1 防火用シャッターを含む消防設備指摘事項改修工事について

防火用シャッターを含む消防設備については、消防法上、半年に1度、法定点検を実施することが義務づけられている。点検において不具合を指摘された場合、消防設備指摘事項改修工事を行うことになる。

本件マンションにおいては、現存している資料に限っても、上記工事のため、以下の費用が支出されている。

・平成21年 92万2215円(乙44)
*平成20年5月付け点検指摘事項

・平成25年 477万7500円(乙45の1及び2)
*平成24年11月付け点検指摘事項

なお、平成25年に作成した長期修繕計画書においては、防火用シャッター(990万円)及び軽量シャッター(270万円)の交換工事(合計1269万円)を予定していたが(甲55:「長期修繕計画書」6貢、「その他」⑧及び⑨参照)の借り入れが出来なかったため、実施が遅れており、今後、実施することになる。

2 自家用受変電設備(キュービクル)について

(1)竣工時から平成16年までの点検費用
既に主張しているとおり、本件マンションにおいては、竣工時から平成16年まで、自家用受変電設備(キュービクル)の点検費用として、年間約60万円が支出されている(乙46の1から5)。

これに対し、平成17年以降の点検費用は、年間約30万円である(乙20の4):委託業務費内訳・自家用電気設備点検・21万円及び設備保守管理費内訳・自家用受変電設備点検・11万3400円(合計32万3400円)、乙36:「定額委託業務費明細」三、キ・自家用受変電設備点検・年29万1600円(税込30万6180円)。

(2)修繕・交換費用
また、上記点検費用とは別に、自家用受変電設備については、積算電力量計更新工事を10年に1度の頻度で実施する必要がある。
平成20年7月及び8月に実施した工事費用の内訳は、以下のとおりである(乙47)。

・店舗用積算電力量計更新工事    65万0000円
・整形外科積算電力量計更新工事    6万0000円
・自家用受変電硝子交換工事     18万0000円
・変圧器2次側電流計是正工事    11万0000円
・変圧器絶縁油取替         25万0000円
・変圧器絶縁油PCB検査      12万0000円
・消費税               6万8500円
合計:143万8500円

なお、防火用シャッターの交換工事と同様、本件紛争の影響により金融機関からの借り入れが出来なかったため実施が遅れているが、平成25年に作成した長期修繕計画(甲55、11項工事項目「電力設備」①共用部分電盤更新・キュービクル内部機器更新)には、自家用受変電設備内部機器更新工事費用292万9000円が計上されており、今後、実施することになる。

3 店舗前敷地(犬走り)について
店舗前敷地(犬走り)の床タイル更新工事は、平成22年に初めて実施したものである。その際の費用は、見積書(乙32、乙37)記載のとおり、「犬走りやりかえ」として170万2500円、雨水合流ます点検口更新工事費用として、165万円支出している。

第2 専門家による意見

1 はじめに
繰り返し主張しているとおり、いわゆる複合用途型マンションにおいては、本件マンションと同様に、住戸と店舗とで管理費等の額に差を設けていることは一般的に行われていることである。
今般、マンション管理士であり、一般社団法人Oマンション管理士会の代表理事であるT氏に対し、本件マンションの管理費及び修繕積立金について、専門家としての意見を求めた。
T氏の意見の趣旨は、次のとおりである(乙48)。

2 要旨
管理組合は、T氏とともに、あらためて管理項目の算定に必要な調査を実施することとし、T氏に助言・指導を受け、管理費・修繕積立金等の合理的な負担割合について検討を行った。
検討の結果は、意見書に添付されている「管理費・修繕積立金等の合理的な負担割合」記載のとおりである。
この「管理費・修繕積立金等の合理的な負担割合」は、平成25年度の収支計算書(乙49)の「管理費会計支出項目」から管理費の各支出項目を抽出し、住戸、店舗、児童館ごとに、個別の支出項目について、その費用の性質、使用(利用)実態、設備等については設置数や設置場所、それらの耐用年数、予想される維持管理費用・修繕費用等を考慮事項とし、合理的と考えられる住戸・店舗・児童館の負担割合を算出したものである。
上記の考慮事項を踏まえ算出された住戸、店舗、児童館の管理費の負担割合は以下のとおりとなる(意見書11・12項記載の表参照)。

児童館 住戸 店舗
支出負担の合計 59万1909円 1142万7552円 289万1266円
共有持分 638 8230 1132
共有持分当たりの支出負担額 928円 1389円 2554円
住戸を1とした場合の負担割合 0.67 1.00 1.84

また、管理費の負担割合について、区分所有法30条3項は、専有部分若しくは共用部分又は建物の敷地若しくは附属施設(建物の敷地又は附属施設に関する権利を含む。)につき、これらの形状、面積、位置関係、使用目的及び利用状況並びに区分所有者が支払った対価その他の事情を総合的に考慮して、区分所有者間の利害の衡平が図られるように定めなければならない」旨固定されている。
本件マンションにおいては、考慮すべき事項として、複合用途型マンションの特質としての店舗による営利事業遂行に伴う美観・環境・安全・衛生・騒音等の問題等のいわゆる迷惑料的な「使用目的」「利用状況」「位置関係」の考慮、気積(体積)の割合(「形状」「面積」の考慮)、分譲価格(「支払った対価」の考慮)の3つの要素がありえるところ、これらの事情を踏まえた住戸、店舗、児童館の管理費の負担割合(住戸を1として換算)は、以下のとおりとなる(意見書13項記載の表参照)。

児童館 住戸 店舗
住戸を1とした場合の負担割合 0.63 1.00 2.65

3 本件マンションにおける住戸と店舗との間の管理費等の格差は十分に合理的な範囲のものであること
以上の検討から、本件マンションにおける住戸と店舗との間の管理費等の格差(約2.44倍)が十分に合理的な範囲のものであるというのが、T氏の意見であり、この意見は、区分所有法30条3項に照らして極めて合理的な見解である。
意見書の末尾に記載されているとおり、今回の管理費等の算出は、「日常管理面(含法定点検費用)」についてのみ考察の対象としたものである。本来的には、「計画修繕費(小・大規模修繕等)(6年~12年サイクル)」及び「設備補修費(5年~35年サイクル)」も含め、総合的に検討する必要があり、その場合、住戸と店舗との間の管理費等の負担割合の差はさらに拡大する可能性があることを考慮すれば、上記2.44倍という格差が区分所有法第30条3項に反しないことは明らかである。

以上

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