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住戸・店舗の負担割合に関する検討書

乙48(意見書)の検討を含む

一級建築士・マンション管理士 OM
2015/02/04

 

 

 本書作成にあたって

  •  本書は、SDマンションの第31期(2013年1月1日~12月31日)の管理費会計の支出額について、住戸・店舗間の適正な負担割合を検討したものである。その検討結果は、次ページに住戸・店舗の負担割合一覧表として示した。検討の詳細については次々ページ以降に記述し、その裏付については末尾に資料集として添付した。
  •  SDマンションの管理規約(甲17)・同使用細則、管理委託契約(甲58)・同別表、第31期(2013年1月1日~12月31日)決算報告書(甲67収支計算書、決算報告補足説明等を含む)に基づいて作成した。

マンションの管理は、法令を順守し、規約、管理委託契約に基づき行われることは当然であり、これら法令及び契約に反し実態とかけ離れることはあってはならないからである。

 

  •  マンション関係者にヒヤリングを行った。

マンション管理員業務については、SDマンションの管理員Y氏、設備に関してはエレベーター管理会社である株式会社EのI氏、N株式会社のN氏にヒヤリングをおこなった。

 

  •  マンションの現場調査をつぶさに行った。

可能な範囲でマンション設備等の個数を確認し、面積・高さは、スケール・レーザー等で計測し、現場の調査を行った。

 

  •  関係書類の調査を行った。

消防署に平成24年に提出された「消防用設備点検結果報告書」(甲71)、大田区役所に提出された「定期検査報告概要書」建築設備等(昇降機を除く)、「定期検査報告概要書」等関係書類を基に調査した。

Ⅰ平成25年度管理費会計の負担割合

 

支出項目 (1)A事務管理業務費及び一般管理費等 2,394,000円
当職 被告(乙48)
算定方法等 専有部分の床面積により算定した共有持分割合により按分 (資料1) 児童館は、実質戸数8戸として計算。店舗専有部分電気料金精算業務費用の216,878円を引いた金額を戸数で按分。
内容 1、被告がいう店舗専有部分電気料金精算業務費用について日本ハウズイング㈱との管理委託契約書(甲58)P13の定額委託業務費明細の一アには出納会計として月額40,000円(年額48万円)と記載されている。出納業務は、①管理費等(管理費、修繕積立金、専用使用料その他の金銭)の収納、②滞納者に対する督促、③通帳等の保管、④管理組合の経費の支払い、⑤管理組合の会計に係る帳簿等の管理を行うものである(管理委託契約書(甲58)P16・17別表第一)。この出納業務費(全144戸分)年額48万円に対して、被告が主張する店舗専有部分電気料金精算業務費用(店舗19戸分)は、312,878円(96,000円+216,878円)となり、あまりにも法外な金額である。被告は、現在既に店舗専有部電気料に事務手数料として96,000円上乗せ徴収していると主張している。当職の計算では、店舗専有部分電気料金精算に係る出納業務は21,000円であり(資料1)、管理員の子メーター検針に係る人件費が5,215円(資料2)、合計26,215円であるから、被告は、既に過剰に徴収していることになる。

そもそも、この店舗専有部分電気料金精算業務に係る管理会社の手数料は別件訴訟で初めて被告が明らかにしたものであり、理事会の議事録にも無く、総会の決議も無く、管理委託契約書にも記載なく、原告らは、マンション管理適正化法で定める重要事項説明も受けていないのである。

被告が主張する店舗専有部分電気料金精算業務手数料は、法的根拠もなく、しかも既に過剰に徴収されており、店舗の負担とすることは出来ない。

 

2、被告が児童館の戸数を8戸として戸数で按分していることについて

被告は、児童館の戸数を8戸として戸数による按分で負担割合を算定している。

被告の計算方法では共有持分は次のように変化する。

児童館;本来638/10000は0.0638のところ、8戸/151戸だと0.0530

住戸;本来8230/10000は0.8230のところ、124戸/151戸だと0.8212

店舗;本来1132/10000は0.1132のところ、19戸/151戸だと0.1258

となる。共有持分(専有面積)による按分と戸数による按分とでは当然違いが出てくる。

被告の算定方法によると、本来の負担割合よりも、

児童館が0.0530/0.0638=0.83倍

住戸  0.8212/0.8230=0.998倍

店舗  0.1258/0.1132=1.111倍

となり、結果店舗だけに負担をかけるものであり、甚だ不公平となる。

そもそも区分所有法第14条では、各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合によるとされ、また、当マンション管理規約(甲17)第10条でも、各区分所有者の共用部分の共有持分は、総専有面積に対するその所有する専有部分の床面積によるものとされており、規約上別段の定めもないわけであるから、戸数により按分することは、区分所有法及び規約に違反する負担割合の変更であり、許されない。

乙48号証の「管理費・修繕積立金等の合理的な負担割合」の計算項目25項目のうち23項目では、区分所有法及び管理規約に則った共有持分による按分で計算されているにもかかわらず、(1)A(事務管理業務費及び一般管理費等)及び(5)(排水管清掃)に関してのみ、児童館を8戸としたうえで戸数により按分するのは、2通りの計算を使い分けていることになるが、そのような使い分けをすべき合理的理由はない。

 

3、店舗専有部分電気料金精算について

当職は、事務管理業務費及び一般管理費等の年間に要する時間を割り出し、被告主張の店舗専有部分電気料金精算業務に掛かる費用を計算した(資料1)。

すなわち、管理委託契約書(甲58)別紙一(P13)定額委託業務費明細より、

一事務管理業務費 ア出納会計 月額40,000円(年額48万円)

イ組合運営 月額60,000円(年額72万円)

四一般管理費等  ア一般管理費月額90,000円(年額108万円)

であり、以上の合計金額228万円を、管理会社の利益を含む人件費(時給3,500円)で除して必要労務時間を計算し、事務管理業務費及び一般管理費等の年間に要する時間を651時間とした。

その時間を管理委託契約書(甲58)(P16,17,18)に基づく各項目に割り振った。その結果、店舗専有部分電気料金精算業務に要する時間は年間6時間程度であると想定され、その金額も21,000円(年額)程度であることから、被告が既に徴収している96,000円の範囲内にあるので店舗専有部分電気料金精算業務は除外した。

 

4、原告の算定について

①事務管理業務費及び一般管理費等 2,394,000円は区分所有者全員で負担するものであるから、児童館、住戸、店舗の専有部分の床面積により算定した各共有持分で按分する。

②その按分されたものが各区分毎の負担金額となる。

事務管理業務及び一般管理費等費用の2,394,000円から店舗専有部分電気料金精算業務費用の216,878円を引いた金額を戸数で按分する。店舗電気料金精算業務を除いて、区分別の負担割合決定は困難であることから、児童館は、実質戸数で8戸分として戸数で計算することが合理的と考えた。上記216,878円は、精算業務委託費用見積額月額27,000円(税込)を年額に換算した金額から、現行電気料金精算業務における事務手数料年額96,000円を引いた金額を子メーター総数41個のうち店舗子メーター39個分に按分した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

区分 児童館 住戸 店舗 児童館 住戸 店舗
負担金額(円) 152,737 1,970,262 271,001 115,344 1,787,835 490,820
負担割合(%) 6.3 82.3 11.3 5 75 21

 

 

支出項目 (1)B管理員業務費 2,557,800円
原告 被告
算定方法等 管理員の業務内容に要する時間から算定 (資料2) 日常清掃箇所数及び点検・検査立会等の回数により負担割合を算定
内容 管理員業務費は管理費支出割合が大きく、この算定いかんによっては大きく各区分の負担割合に影響することとなる。当職は、正確を期すため、被告に管理員業務日誌その他の閲覧を申請したが拒否された経緯がある。1、被告の情報操作について
管理員業務の内容は、基本的に、管理委託契約書(甲58)に即して決まるものであるが、被告説明資料1の管理員業務費の集計項目はあまりにも少ない点が問題である。管理会社が、管理組合法人との管理委託契約書に従うべきことは当然のことである。この管理委託契約書に反することは債務不履行にあたるため管理会社は忠実にこの管理委託契約書を遵守しなければならない。以下、被告の主張(乙48)と管理委託契約書の異同を対比する。

乙48号証の説明資料1に記載されており管理委託契約書にもある項目は黒字、管理委託契約書に管理員の業務として記載されているが乙48号証に記載されていない項目は赤字、管理委託契約書にはないのに乙48には記載されている項目は青字で表した。

管理委託契約書(甲58)P20別表第二管理員業務

1管理員の研修等

2(1)受付・清掃等の業務

一甲が定める各種使用申し込みの受理及び報告

二甲が定める組合員等異動届出書の受理及び報告

三宅配の預かり、引き渡し

四利害関係人に対する管理規約等の閲覧

五共用部の鍵の管理及び貸出し

六管理用備品の在庫管理

七引越業者等に対する指示

八植栽の散水及び簡易な除草

九共用部分の日常清掃(管理委託契約書(甲56)P21別表第二別紙を参照)

①建物周囲

1建物周囲ゴミ拾い                (6回/週)

2植え込み      ゴミ拾い          (6回/週)

3自転車置き場    ゴミ拾い          (6回/週)

4排水溝、排水口   ドレンゴミ除去       (6回/週

5ゴミ集積所     ゴミ仕分・整理       (6回/週)

6店舗中通路出入り口 床拭き掃き

7店舗周り      掃き・ゴミ拾い

8店舗中通路     床掃き拭き

②建物

1ポーチ       床掃き拭き         (6回/週)

排水口・ドレンゴミ除去   (1回/週)

2エントランスホール 床掃き拭き         (6回/週)

ゴミ箱・灰皿処理      (6回/週)

備品塵払い         (6回/週)

ドア拭き          (6回/週)

金属ノブ磨き拭き      (適宜)

ガラス拭き         (6回/週)

3エレベーターホール 床掃き拭き         (6回/週)

4エレベーター籠   床掃き拭き(モップ拭き)  (6回/週)

ゴミ拾い

壁面金属部分磨き      (6回/週)

壁面塵払い         (6回/週)

5開放廊下      床拭き掃き         (1回/週)

手摺ガラス拭き       (1回/週)

6屋上階段      床拭き掃き         (1回/週)

手摺塵払い         (1回/週)

7管理員室      床掃き拭き         (6回/週)

ゴミ箱処理         (6回/週)

備品塵払い         (6回/週)

ドア・ガラス拭き      (6回/週)

金属部分磨き        (適宜)

8屋内駐車場     ゴミ拾い          (適宜)

9屋上        ゴミ拾い          (適宜)

排水口・ドレンゴミ除去   (適宜)

(2)点検業務

一建物、諸設備及び諸施設の外観目視点検

(対象)

・屋上

・エントランス周り

・エントランスホール、エレベーターホール

・開放廊下、屋外階段

・天井、内壁、外壁、柱

・管理員室

・屋内駐車場

・共聴アンテナ

・避雷針

・塀、排水溝、排水口

・自転車置き場、通路

・ゴミ集積所

・植栽

・掲示板

・動力制御盤、電灯分電盤

・外灯設備

二照明の点灯及び消灯並びに管球類等の点検、交換(高所等危険個所は除く。)

(対象)共用部照明器具合計221台

三諸設備の運転及び作動状況の点検並びにその記録

(対象)

・共聴アンテナ

・避雷針

・動力制御盤、電灯分電盤

・外灯設備

四無断駐車の確認

(3)立会業務

一外注業者の業務の着手、履行の立会

・給排水設備点検      年4回

・貯水槽清掃        年1回

・簡易専用水道検査     年1回

・汚水槽清掃        年1回

・建築設備定期検査     年1回

・消防用設備点検      年2回

・自家用電気設備点検    年6回

・駐車場シャッター設備点検 年2回

・エレベーター設備点検   年12回

・防犯カメラ点検      年1回

・定期清掃         年4回

・排水管清掃        年1回

二ゴミ搬出時の際の立会

203回(平成25年)

三災害、事故等の処理の立会

(4)報告連絡業務

一甲の文書の配布又は掲示

二各種届け出、点検結果、立会結果等の報告

(対象)

・給排水設備点検      年4回

・貯水槽清掃        年1回

・簡易専用水道検査     年1回

・汚水槽清掃        年1回

・建築設備定期検査     年1回

・消防用設備点検      年2回

・自家用電気設備点検    年6回

・駐車場シャッター設備点検 年2回

・エレベーター設備点検   年12回

・防犯カメラ点検      年1回

・定期清掃         年4回

・排水管清掃        年1回

三災害、事故発生時の連絡、報告

(5)渉外業務

一消防署、警察署、水道局、清掃事務所との連絡

 

 

 

①日常清掃箇所の数と点検・検査等の年間回数を基に、区分ごとにその合計数値を算出し、その数値に応じて管理員業務費用を按分する。②次に共用分の費用は各区分の共有持分で按分する。③①で算出した費用を②で算出した共用分の費用に各々加算する。④負担額が決定したら負担割合を算定する。管理員業務は、(1)受付・日常清掃等(2)日常点検(3)立会(4)報告連絡である。その主な業務である受付・日常清掃等及び外注業者の立会、報告業務等を負担割合決定において考慮した。その中でも窓口受付業務は多岐にわたり負担割合を算定するのは困難ですので、日常清掃箇所数及び点検・検査立会等の回数により負担割合を算定することが合理的であろうと考えました。日常清掃は、①毎日実施(エントランス、店舗中通路出入口、EV内のモップ拭き及び1階店舗周りの掃き掃除又は塵取り)②週一実施(店舗中通路、ピロティー兼自転車置き場のモップ拭き、開放廊下及びエレベーターホールの掃き掃除又は塵取り)を、外注業者の業務の立会等は、給排水設備点検、貯水槽清掃、水質検査、汚水槽清掃、建築設備、消防設備、自家用変電設備、駐車場シャッター設備、エレベーター設備、防犯カメラ設備等の定期点検、検査、清掃、及び館内共用部の定期清掃、館内共用・専用部分の排水管清掃を負担割合算定の対象としました。

 

 

清掃箇所及び点検、検査等      回数

1エントランス           1

2店舗中通路出入口         1

3EV内              1

41階店舗廻り           1

5ゴミ置き場            1

6店舗中通路            1

7ピロティ兼自転車置き場      1

8開放廊下             1

9EVホール            1

10給排水設備点検         4

11貯水槽清掃           1

12簡易専用水道検査        1

13汚水槽清掃           1

14建築設備定期検査        1

15消防用設備点検         2

16自家用設備点検         6

17駐車場シャッター設備点検    2

18エレベーター設備点検     12

19防犯カメラ点検         1

20定期清掃            4

21排水管清掃           1

合計               45点

2、当職の算定について乙48では、「窓口受付業務は他種にわたる」という理由だけで,清掃業務には清掃個所ごとに1ポイント,点検・検査立会業務には1回ごとに1ポイントを付与することとされているが,「個所」と「回数」という全く異なる指標を同列に扱うことは不合理である。また、乙48では、店舗中通路(床面積174.7㎡)・店舗中通路出入口(床面積29.2㎡)・1階店舗回り(床面積77.8㎡)・開放廊下(床面積869.1㎡)をそれぞれ1ポイントとしているが,床面積の全く異なるものについて清掃所要時間を同列に扱うのは非常識であり,開放廊下を有する住戸を恣意的に有利に扱っている。当職は、管理員業務について、管理委託契約書(甲58)P20「別表第二管理員業務」に基づいて日常清掃、点検業務、立会業務、その他の4つに大別した。

日常清掃
(1)管理員の実労働日数は年間310日、実労働時間は1,962時間である。(資料2-1)

(2)管理員の共用部分の日常清掃はアごみ拾い イ床・手摺、掃き拭き ウその他に分けられそれぞれの要する時間割合を1:7:2とし125時間、875時間、250時間とした。(管理員の話より総合的に判断)(資料2-2)

 

点検業務
(3)管理員の建物、諸設備及び諸施設の外観目視点検に要する時間は年間13.5時間とした。(資料2-3)

(4)管理員の照明の点灯及び消灯並びに管球類等の点検、交換に要する時間は20時間とした。(資料2-5)

 

立会業務
(5)外注業者の業務の着手、履行の立会に要する時間は10時間とした。(資料2-6)

(6)ゴミ搬出時の際の立会は203時間とした。(資料2-7)

以上6項目は、各区分の負担時間を管理員業務費まとめ(資料2)に各負担時間を配分した。

その他
受付業務、災害・事故等の処理の立会、甲の文書の配布又は掲示、各種届出、点検結果、立会結果等の報告、災害、事故等発生時の連絡、報告、消防署、警察署、水道局、清掃事務所との連絡

その他の業務は470.3時間(1,962時間-日常清掃時間-点検業務-立会業務)となる。これは全体で負担すべきものとし、児童館、住戸、店舗それぞれの共有持分割合で按分した。(資料2)これで管理員の業務全てを網羅したことになる。

 

以上の算定により、各区分毎の所要時間を集計し、各区分毎の負担金額を換算した。全体で負担すべき費用については各区分毎の共有持分で按分した。

区分 児童館 住戸 店舗 児童館 住戸 店舗
負担金額(円) 80,513 2,331,542 146,554 43,517 1,868,672 645,611
負担割合(%) 3.3 90.7 6.0 2 73 25

 

 

支出項目 (1)C-①給排水設備点検 50,400円
当職 被告
算定方法等 給水設備を住戸負担とし、排水設備は専有部分の床面積により算定した各共有持分で按分(資料3) 給水設備を住戸負担とし、排水設備は各共有持分で按分
内容 給水設備は住宅一部共用部分、排水設備は全体共用部分。  給水設備は主に居住者が利用していることから住宅一部共用部分とし、排水設備は共用部分とした。①給水設備と排水設備の点検設備数が同数により、25,200円を住戸負担とし、残り25,200円を各共有持分で按分する。②①で計算した金額を各区分ごとに加算する。③②で算出した負担額より負担割合を算定する。
区分 児童館 住戸 店舗 児童館 住戸 店舗
負担金額(円) 1,638 45,927 2,835 1,608 45,940 2,853
負担割合(%) 3.3 91.1 5.7  3 91 6

 

 

 

支出項目 (1)C-②貯水槽清掃 109,620円
当職 被告
算定方法等 住戸負担(資料4) 住戸の負担とする。
内容 貯水槽は給水設備であり住宅一部共用部分。 主に居住者が利用している給水設備の貯水槽であることから住宅一部共用部分とした。
区分 児童館 住戸 店舗 児童館 住戸 店舗
負担金額(円) 0 109,620 0 0 109,620 0
負担割合(%) 0 100 0 0 100 0

 

 

 

支出項目 (1)C-③簡易専用水道検査 18,900円
当職 被告
算定方法等 住戸負担(資料5) 住戸の負担とする。
内容 水道設備は住宅一部共用部分 主に居住者が利用している給水設備の水道検査であることから住宅一部共用部分とした。
区分 児童館 住戸 店舗 児童館 住戸 店舗
負担金額(円) 0 18,900 0 0 18,900 0
負担割合(%) 0 100 0 0 100 0

 

 

 

 

支出項目 (1)C-④汚水槽清掃 231,840円
当職 被告
算定方法等 専有部分の床面積により算定した共有持分割合により算定 (資料6) 共有持分で按分する。
内容 汚水槽は全体共用部分である。 全体共用部分であることから共有持分で按分することが合理的と考えた。
区分 児童館 住戸 店舗 児童館 住戸 店舗
負担金額(円) 14,791 190,804 26,244 14,791 190,804 26,244
負担割合(%) 6.4 82.3 11.3 6 82 11

 

 

 

 

支出項目 (1)C-⑤建築設備定期検査 112,140円
当職 被告
算定方法等 設備数66台の費用を按分(資料7) 設備数68台の費用を按分
内容 設備      設置場所        設備数    共用   児童館   住戸   店舗換気設備  児童館             1          1管理室             1    1はなみずき           1                    1じゃじゃうま           1                    1

ヘヤーサロン           1                    1

西蒲田整形外科         1                    1

ケイロー           1                    1

スクエア           1                    1

ハウジングキャピタル   1                    1

 

非常照明  駐車場             4    4

ポンプ室           1               1

電気室             1    1

2~9FEVホール    8               8

1F、EV・エントランス 2               2

階段               2               2

管理室             1    1

児童館             18         18

中通路             2    2

自転車置き場・ピロティ  3    3

西蒲田整形外科         6                    6

ザファースト           1                    1

ケイロー           2                    2

スクエア           1                    1

プチトマト        5                    5

合計                       66    12   19   13   22

当職は、設置数について、建築設備点検会社「日本コミュニティー株式会社」の中沢氏に電話にて確認したところ、上記のとおりであった。被告の主張する設置区分、設置数は、不正確と思われる。

 

当職の計算について

各区分毎に設置数を集計し、全体で負担すべきものは各区分の共有持分合計で按分して、各区分の負担割合を算出した。

主に火災等の災害を未然に防ぐために検査を行うことから、換気設備及び非常照明の数で負担割合を算出することに合理性があると考えた。①換気設備11個及び非常照明57個より、各々各区分の数量を算出し、その個数で費用112,140円を按分する。②次に共用部分の費用を児童館、住戸、店舗の各区分の共有持分で按分する。③①と②の各区分の負担額を加算する。④各区分の負担額が決定したら負担割合を算定する。設備    個数 共用 児童館 住戸 店舗

換気設備  11  1        10

非常照明  57  7  18 12 20

合計    68  8  18 12 30

区分 児童館 住戸 店舗 児童館 住戸 店舗
負担金額(円) 33,584 38,868 39,688 30,526 30,647 50,967
負担割合(%) 29.9 34.7 35.4 27 27 45

 

 

 

 

支出項目 (1)C-⑥消防用設備点検 258,300円
当職 被告
算定方法等 消防点検結果報告書で点検された消防設備数と点検項目で費用を按分(資料8) 消防設備数で費用を按分
内容 1、被告が消防設備設置個数でカウントし、点検項目・細目を算定しなかったことについて乙48の説明資料4では、設備設置数で負担割合を算定している。例えば、誘導灯の設置数19とし19ポイント、ハロゲン化物消火設備設置数1とし1ポイントとしている。しかし、当職が消防署で入手した平成24年の法定消防点検結果報告書(全34頁。平成25年のものは提出されておらず入手出来なかった。)によれば、誘導灯の点検項目は11項目(頁にして2頁)にとどまるのに対し、ハロゲン消火設備の点検項目は57項目(頁にして6頁)にも及ぶ。誘導灯は避難口上部に設置される比較的簡単なものである。一方、ハロゲン消火設備は、地下駐車場に設置され、ハロンボンベ68リットル20本及び附属設備の必要設置区画として20.66㎡のハロンボンベ室が地下室に専用室として設置されている。そして駐車場全域には、ハロンガス消火剤を噴霧するための専用配管が配管されているほか、起動装置、制御盤、耐震装置、警報装置その他多くの装置が設置されている。この大規模なハロゲン消火設備を1とし、誘導灯1台を1とした被告の計算は到底理解できない。誘導灯の主たる設置場所が店舗部分に多いため、誘導灯のポイント数を過大に積算して、店舗の負担が多くなるよう操作したのではないかと疑われる。2、被告が点検設備の一部を省略していること

当職は、「平成24年消防用設備等点検結果報告書」に記載されている検査項目を全て一覧表にし、それぞれの器具の点検項目を全て落とし込んだ。次のとおりである。

自動火災報知設備                  設置数     点検項目

予備電源                   1        6

受信機・中継機                1       16

感知機                  104        7

地区音響装置                21        4

発信器                   10        5

総合点検                   1        4

防火シャッター(連動制御盤)予備電源          1         2

連動制御盤                  1        6

防火シャッター感知機            12        1

防火シャッター               11        5

同(制御盤)       制御盤                1        7

予備電源                   1        4

感知機                   12        1

防火シャッター                11        5

総合点検                    1       10

誘導灯   誘導灯                    19       11

避難設備 避難ハッチ・梯子               18       21

総合点検                    1        3

連結送水管         送水口                1         4

放水口                     7        5

配管等                     1        4

消火器   消火器                    63       25

ハロゲン化物消火設備        ハロゲン化物消火剤貯蔵容器 1        8

起動ガス容器等                 1        6

操作管・逆止弁                 1        2

起動装置                    1        8

警報装置                    1        2

制御盤                     1       13

配管等                     1        2

安全装置                    1        1

消火剤等排出装置                1        1

噴射ヘッド18台                1        2

防護区画                    1        4

耐震装置                    1        1

総合点検                    1        6

非常電源                    1       27

同総合点検                   1         4

配線点検 配線点検                    1         4

赤字で示した項目は、乙48の説明資料4に記載のない設備機器及び点検項目である。

これだけ多くの設備機器及び点検項目を割愛して、適正な負担割合の算定ができるはずはない。

 

3、当職の算定について

当職は、平成24年消防用設備等点検結果報告書に記載されている設備の設置数とその設備の点検項目数を拾い出した。そして、全ての点検項目総数3350項目をについて、どの区分で負担すべきかを分類し(共用として全体で負担すべきものは、各区分の共有持分合計で按分した。)、各区分に割り振られた点検項目総数で消防設備点検費258,300円を按分した。(資料8)

区分別の負担割合決定は困難であることから点検項目の設備個数で負担割合を算出することに合理性があると考えた。①各区分ごとに設備の合計数量を算出し、費用258,300円を按分する。②次に共用部分の費用は各区分の共有持分で按分する。③①で算出した費用を②で算出した共用部分の費用に加算する。④負担額が決定したら負担割合を算定する。被告消防設備設置個数1 自動火災報知設備 感知器    106

2 同 地区音響装置         21

3 同 発信器            10

4 防排煙設備 防火シャッター感知器 12

5 同 防火シャッター        11

6 誘導灯              19

7 避難設備             18

8 連結送水口             1

9 消火器(設置個数)        63

10 ハロゲン化物消火設備       1

設置個数合計            262個

以上の設備数で配分計算した。

区分 児童館 住戸 店舗 児童館 住戸 店舗
負担金額(円) 4,545 198,193 55,561 4,780 153,351 100,168
負担割合(%) 1.8 76.7 21.5 2 59 39

 

 

 

 

 

支出項目 (1)C-⑦自家用電気設備点検 306,180円
当職 被告
算定方法等 電気子メーターの数で費用を按分 (資料9) 電気子メーターの数で費用を按分
内容 店舗子メーター 39共用部子メーター 4被告は、子メーター数を店舗19個、共用2個と記載していたり、別訴では41個と主張したり一貫していない。当職の算定について

子メーターの数量から各区分の負担する自家用電気設備点検306,180円を按分した((共用として全体で負担すべきものは、各区分の共有持分合計で按分した。)。

区分別の負担割合決定は困難であることから各子メーター数で負担割合を算出することが合理的あると考えた。①店舗19個 共用2個で費用306,180円を按分する。②次に共用分の費用を児童館、住戸及びて店舗の各区分の共有持分で按分する。③①と②の各区分の負担額を加算する。④負担額が決定したら負担割合を算定する。店舗子メーター 19共用子部メーター 2
区分 児童館 住戸 店舗 児童館 住戸 店舗
負担金額(円) 1,817 23,441 280,992 953 12,292 292,935
負担割合(%) 0.6 7.7 91.8 0.3 4.0 95.7

 

 

 

 

 

支出項目 (1)C-⑧駐車場シャッター設備点検 25,200円
当職 被告
算定方法等 専有部分の床面積により算定した共有持分で按分 (資料10) 共有持分で按分する。
内容 駐車場シャッター全体共用部分である。 区分別の負担割合決定は困難であることから共有持分で按分することが合理的と考えた。
区分 児童館 住戸 店舗 児童館 住戸 店舗
負担金額(円) 1,608 20,740 2,853 1,608 20,740 2,853
負担割合(%) 6.4 82.3 11.3 6 82 11

 

 

支出項目 (1)C-⑨ 設備機器遠隔監視 189,000円
当職 被告
算定方法等 負担割合算定項目は遠隔監視と発報件数に分けて費用を按分 (資料11) 平成17年~平成26年7月の発報件数で費用を按分
内容 乙48の説明資料5では、発報又は要請受信日として平成17年から平成26年7月12日までの計37回の集計項目を表示している。過去10年前まで遡り37件を区分別に割り振ったとしている。1、遠隔監視と緊急対応について管理委託契約書(甲58)P23の「設備機器遠隔監視及び緊急対応」の中で、「(1)遠隔監視する項目及び業務内容」、「(2)緊急対応」、「(3)その他の緊急対応」の3項目が記載されている。当職は、この管理委託契約書の構成、そして年間3~4件の発報等を考慮しても、遠隔監視費用は遠隔監視1/2(全体負担)、緊急対応1/2(各区分で負担)に配分するのが合理的であると考えた。また、本項目についてのみ10年前まで遡るのは適当でないと考え、平成25年分の発報又は要請受信で算定した。

 

2、当職の算定について

(1)遠隔監視94,500円(共用)は、各区分の共有持分合計で按分した。

(2)緊急対応94,500円は、発報回数で発報者の所属する区分に按分した(発報者が共用に属する発報は、各区分の共有持分合計で各区分に按分した。)。

発報又は要請受信日        発報回数1H26年7月12日        12H26年7月10日        13H25年11月13日       14H25年8月23日        1

5H25年8月23日        1

・・・・・・・・・・

・・(中略)・・・・・

・・・・・・・・・・

36H17年11月16日      1

37H17年2月25日       1

合計               37

区分 児童館 住戸 店舗 児童館 住戸 店舗
負担金額(円) 20,390 115,884 52,726 18,257 83,809 86,934
負担割合(%) 10.8 61.3 27.9 10 44 46

 

 

 

 

 

 

支出項目 (2)エレベーター保守料 907,200円
当職 被告
算定方法等 住戸負担 住戸負担
内容 住宅一部共用部分 主に居住者が利用していることから住宅一部共用部分とした。
区分 児童館 住戸 店舗 児童館 住戸 店舗
負担金額(円) 0 907,200 0 0 907,200 0
負担割合(%) 0 100 0 0 100 0

 

 

 

 

支出項目 (3)防犯カメラレンタル料 377,976円
当職 被告
算定方法等 カメラ設置台数で費用を按分 (資料12) カメラ設置台数で費用を按分
内容 乙48の説明資料6によれば、4番は店舗中通路出入り口に、6番は北側店舗前面公道に設置されているとの理由で、いずれも店舗の負担とされている。しかし、4番はエントランスに向けて設置され、6番はゴミ置場前の監視に設置されたものであるから、店舗のために必要なものではない。当職の算定について上記4番・6番は「店舗」ではなく「共用」の負担に分類して、防犯カメラレンタル料377,976円を按分した。 ①区分ごとにカメラの設置数の合計数量を算出し、費用377,976円を按分する。②次に共用部分の費用は各区分の共有持分で按分する。③①で算出した費用を②で算出した共用部分の費用に各々加算する。④負担額が決定したら負担割合を算定する。防犯カメラ設置場所     台数  店舗負担1エントランス内      1

2エレベーター内      2

3地下駐車場        3

4店舗中通路出入り口    1     1

5ごみ置場内        1

6ごみ置場外壁       1     1

7ピロティー兼自転車置き場 2

8北側非常口        1

合計           12台    2台

区分 児童館 住戸 店舗 児童館 住戸 店舗
負担金額(円) 16,077 333,375 28,525 12,057 281,529 84,389
負担割合(%) 4.3 88.2 7.5 3 74 22

 

 

 

 

 

支出項目 (4)清掃業務費(定期清掃) 718,500円
当職 被告
算定方法等 実際に行われている清掃面積で費用を按分(資料13) 清掃面積で費用を按分
内容 1、店舗前タイルの清掃について乙48説明資料7の清掃業務費は、平成25年度(第31期)決算報告書P6の「4 設備保守点検項目」に「⑪定期清掃 4回/年 日本ハウズイング㈱」と記載され、同収支計算書(甲67のP7)の支出に「清掃業務費」、同決算報告補足説明P9に「清掃業務費」と記載されているものであるが、この年4回の清掃業務については、管理委託契約書(甲58)に記載がなく、被告が日本ハウズィング㈱に行わせる根拠がそもそもない。また、また、この年4回の清掃業務の仕様についても、管理委託契約書(甲58)、総会の資料、その他被告の発行文書には記載がなく、何をどこまですべきかの根拠が確認できない。なお、ここでいう年4回の清掃業務は、いわば定期清掃であり、管理委託契約書(甲58)別表第二別紙(P21)に記載された、管理員による週数回の共用部分の日常清掃とは異なるものである。乙48の説明資料7では、店舗前タイルはポリッシャー洗浄を行うとされているが、南側店舗前には大きな段差があって施工は不可能であり、事実行われていない(資料19)。しかも、その面積(114㎡)はごみ置場前、ポーチ、避難通路前の共用部分を含めた面積であり、全て店舗の負担とする理由はない。つまり、被告の主張する清掃業務(定期清掃)は、元々仕様書を欠いており、どこまでするかの特定性がなく、実際清掃されていない個所まで含まれてしまっている。管理規約(甲17)の第14条・別表第3は、店舗前面敷地について、店舗区分所有者の専用使用権の対象としており、使用細則(甲17)の第9条は、専用使用権者は、①保守維持、②経常的な補修、③清掃、消毒及びごみ処理、④その他の通常の使用に伴う管理を、その責任と負担において行わなければならないと規定している。したがって、店舗前面の犬走り部分については、日常・定期を問わず、専用使用権者がその責任と負担で清掃を行ってきている。被告は、本件訴訟の提起をきっかけに、年4回の清掃の仕様に、従来行われていなかったポリッシャー清掃を加えるようになり(ただし、南側店舗前は前述のとおり行っていない。)、事実、定期清掃費は、平成24年が442,950円(税抜)であったのに対し、平成25年は718,500円(税抜)と実に1.62倍強に増額されている。増額した経緯、内容については総会での説明はなく、本件訴訟のための裁判対策の疑いもある。以上のとおり、当職の負担割合の算定では、店舗前タイル(犬走り)部分については、専用使用権部分であること、ポリッシャー洗浄による定期清掃が確認できないこと、管理規約・使用細則上、専用使用権部分の清掃は専用使用権者である店舗区分所有者が行うこととされていることから、清掃面積から除外した。

 

2、中通路について

また、1階中通路は、全体共用部分として、店舗前の幅1.35mの部分については、専用使用権部分(資料18-1階区分図)と解釈し、その分については店舗使用者が負担することとし、残りに関しては全体共用部分の負担とした。

なお、管理規約(甲17)別表第3では、店舗中通路は専用使用部分から除くとされているが、現状は、クーリングタワーの廃止により中通路の一部をエアコン室外機の設置場所(資料写真20)としなければならず、また、店舗(中通路南側)の出入りも中通路店舗前面部分に限られていることから、中通路一部(店舗間口で奥行き1.35m・資料18-1階区分図)に専用使用権が当然発生しているものと解釈した。

 

3、当職の計算について

清掃面積から各区分の負担する清掃業務費(定期清掃)718,500円を按分した(全体で負担すべき共用部分の清掃は、各区分の共有持分で按分した)。

①各区分ごとに清掃面積合計数を算出し、費用718,500円を按分する。②次に共用部分の費用は各区分の共有持分で按分する。③①で算出した費用を②で算出した共用部分の費用に加算する。④負担額が決定したら負担割合を算定する。清掃箇所   清掃仕様      面積(㎡)1開放廊下  ポリッシャー洗浄      849

又は高圧洗浄

2EVホール ポリッシャー洗浄         62

3鉄骨階段  高圧洗浄        241

4エントランス  ポリッシャー洗浄          32

5店舗前タイル  ポリッシャー洗浄        114

6自転車置き場  ポリッシャー洗浄        132

7店舗中通路 ポリッシャー洗浄、

ワックス仕上げ         169

8吹抜け3箇所  高圧洗浄        246

合計               1,843

区分 児童館 住戸 店舗 児童館 住戸 店舗
負担金額(円) 7,205 670,678 40,616 3,283 599,063 116,154
負担割合(%) 1.0 93.3 5.7 0.5 83.4 16.2

 

 

支出項目 (5)排水管清掃費 1,197,000円
当職 被告
算定方法等 共有持分で按分 (資料14) 各区分別戸数(児童館8戸、住戸124戸、店舗19戸)で按分する
内容 1、被告が児童館の戸数を8戸として戸数で按分したことについて被告は、(1)Aにおけると同様、児童館の戸数を8戸として戸数で按分して負担割合を算出しているが、このような算出方法は、(1)Aで指摘したと同様、不合理であり、区分所有法及び管理規約に違反するものである。2、当職の算定について排水管清掃費1,197,000円は区分所有者全員(全体で負担)で負担するものであるから、児童館、住戸、店舗の各共有持分で按分した。 区分別の負担割合決定は困難であることから、児童館を実質戸数で8戸分とし戸数で按分し負担割合を算出することが合理的あると考えた。児童館8戸住戸124戸

店舗19戸

合計151戸

区分 児童館 住戸 店舗 児童館 住戸 店舗
負担金額(円) 76,369 985,131 135,500 63,417 982,967 150,616
負担割合(%) 6.4 82.3 11.3 5 82 13

 

 

 

支出項目 (6)特殊建築物定期調査報告書 66,472円
当職 被告
算定方法等 共有持分で按分 共有持分で按分する。
内容 全体で負担 全体で負担
区分 児童館 住戸 店舗 児童館 住戸 店舗
負担金額(円) 4,241 54,706 7,525 4,241 54,706 7,525
負担割合(%) 6.4 82.3 11.3 6 82 11

 

 

 

 

 

支出項目 (7)電気料金 1,772,194円
当職 被告
算定方法等 電気使用料を使用実態より算定(資料15) 電灯・動力電気料金を照明器具数で費用を按分
内容 1、動力電気料が考慮されていないことについて乙48の説明資料9によれば、電気料の負担割合は、電灯・動力(1,522,406円)の動力分が電灯のみで計算され、動力電気料が考慮されていない。動力は、住戸負担のエレベーター2台と受水槽(地下)から高架水槽(PH)へ揚水するポンプ、全体負担の汚水槽ポンプ(地下汚水槽から道路地中下水管へ排水)と駐車場シャッター(日中は開けっ放し)に用いられているが、その動力電気料金中、住戸負担のエレベーター2台と揚水ポンプ(地下受水槽から地上34mの高架水槽への揚水)の電気料金が大半を占めていることは容易に想像できる。この除外された住戸負担のエレベーターと揚水ポンプの動力電気料は、当職の試算では、エレベーター389,961円、揚水ポンプ441,418円(合計831,379円)であり、低圧高負荷の電気料金合計1,522,406円の実に55%にもなる。被告の算定は、住戸負担をその分不当に軽くしているのである。2、電灯電気料の算定が蛍光灯の本数で行われていることについて被告の同資料の電灯の電気料算定に至っては、使用電気料ではなく蛍光灯の本数で負担割合の算定を行っている。同資料では、住戸開放廊下82(タイマー)と地下駐車場82(車の出入庫するときだけ部分点灯し、それ以外は消灯)とが同数とされているが、不合理である。

当職が試算した電気料金はそれぞれ、住戸開放廊下302,556円、地下駐車場77,448円であった。当職の計算では、住戸が負担すべき住戸開放廊下の電灯電気料は、全体で負担すべき地下駐車場の電灯電気料の3.9倍にもなる。

乙48の説明資料10によれば、1階共用部分の電灯電気料金の負担割合の算定も、蛍光灯の本数で行われている。スイッチやタイマーでの使用も、年中点灯されているものの使用も、同列に1とカウントされている。例えば、同説明資料10の10番共用トイレ内(男女)20Wボール球の電気使用料、及び12番共用トイレ出入り口照明20W蛍光灯は、被告の計算は2:2で同数であるが、当職の計算では321:6,421、つまり1:20である。それぞれの電気使用料は全く違うから、被告の算定手法では、使用実態を反映することは出来ないし、まともな負担割合の算定にはなりえない。

 

3、当職の計算について

① A低圧高負荷契約電気料金1,522,406円を電灯と動力に分けそれぞれ区分ごとの電気使用量を計算した。

② 共用部分の電気料金は各区分の共有持分で按分した。

③ ①と②を合計したものがA低圧高負荷の各負担金額となる。(資料15 ア)

 

④ B業務用電力料金181,071円について区分ごとの負担額を算定した。

⑤ 共用部分の電気料金は各区分の共有持分で按分した。

⑥ ④と⑤を合計したものがB業務用電力料金の各負担金額となる。(資料15 イ)

 

⑦ C管理事務所の電気料金68,717円について区分ごとの負担額を算定。(資料15 ウ)

 

⑧ ③、⑥及び⑦を合計したものが各区分の負担金額となる。(資料15ア+イ+ウ合計)

A主に住戸共用部分の電気料(電灯・動力)電灯・動力契約が一括契約(低圧高負荷契約)により共用部分の電灯について、共用部分の蛍光灯等の数(20wを1個で換算)で算出することが合理的であると考えた。①電灯は、児童館及び住戸(開放廊下 一日約10~12時間点灯)・住戸(EVホール)、共用(EV籠内・エントランス・地下駐車場照明・ゴミ集積所)②動力は、共用(排水・汚水槽ポンプ、駐車場シャッター、揚水ポンプ・EV)①区分ごとに蛍光灯等の合計数量を算出し、平成25年度電気料1,522,406円を按分する。②次に共用部分の費用は各区分の共有持分で按分する。③①で算出した費用を②で算出した共用部分の費用に各々加算する。④負担額が決定したら負担割合を算定する。部分の電灯    20wに換算した設置数

1児童館開放廊下          2

22~9F開放廊下照明      82

32~9Fエレベーターホール照明 16

4ゴミ置き場            4

5地下駐車場           82

6地下駐車場(駐車場除く)    22

7屋上EV機械室内         2

合計              210

 

B主に店舗専有部分の電気料(電灯・動力)②共用部分の店舗中通路等の電気料(電灯)

蛍光灯等の数(20wを1個で換算)で負担割合を決定することが合理的であると考えた。なお、店舗中通路は、40wの蛍光灯を365日年中点灯していることから、節電のため間引きしているが間引き前の数量とした。

 

①区分ごとに蛍光灯等の合計数量を算出し、平成25年度電気料181,071円を按分する。②次に共用部分の費用は各区分の共有持分で按分する。③①で算出した費用を②で算出した共用部分の費用に各々加算する。④負担額が決定したら負担割合を算定する。

 

共用部分電灯     20wに換算した設置数

1店舗出入口            3

2中通路照明           32

3中通路誘導灯           1

4西側避難通路 (ボール球)    8

5西側避難通路           4

6ピロティ北側           5

7ピロティ南側           5

8外灯               3

9共用トイレ内(男女)       4

10共用トイレ内(男女)(ボール球) 2

11共用トイレ出入り口誘導灯    0.5

12共用トイレ出入り口       2

合計               69.5

 

C管理室電気料

共有持分で按分する。

区分 児童館 住戸 店舗 児童館 住戸 店舗
負担金額(円) 41,202 1,629,889 101,107 74,403 1,497,708 200,081
負担割合(%) 2.3 92.0 5.7  4.2 84.5 11.3

 

 

支出項目 (8)共用部分費計(電気料除く)633,594 円
当職 被告
算定方法等 共有持分で按分 共有持分で按分する。
内容 全体負担 全体負担
区分 児童館 住戸 店舗 児童館 住戸 店舗
負担金額(円) 40,423 521,448 71,723 40,423 521,448 71,723
負担割合(%) 6.4 82.3 11.3 6 82 11
支出項目 (9)A 修繕費 1,046,714円(内558,464円が経常的な補修費)
当職 被告
算定方法等 経常的な補修費(558,464円)を算定対象とした (資料16) 費用(1,046,714円)を共有持分で按分する。
内容 経常的な補修費(558,464円)を算定対象とした。本件マンション管理規約第29条(管理費)では、管理費は次の各号に掲げる通常の管理に要する経費に充当する。六 経常的な補修費と規定されている。ところが、乙48の説明資料11の修繕内容16項目のうち少なくとも

⑤煙感知器設置工事 82,950円

⑥電気室内不要トランス撤去工事 199,500円

⑭駐輪場トップライト交換工事 205,800円

は規約に定める「経常的な補修費」には該当せず、修繕積立金会計で処理されるべきである。

標準管理規約第25条において管理費と修繕積立金を区分することが定められている。

管理組合会計には、一般会計原則のほかに特有な原則として、区分経理の原則(目的別会計処理)と予算準拠の原則がある。管理費収入と日常の管理に要する費用とは管理費会計により、修繕積立金収入と計画修繕等の費用とは修繕積立金会計により、それぞれ会計処理し、原則として相互振り替えはしないということである。経常的でない支出を加えるならば、管理費の負担割合の算定は公平におこなうことが出来ない。

 

当職の計算について

上記⑤⑥⑭を除外した、経常的な補修費558,464円の各項目を各区分に割り振り、各区分の負担額を集計した。共用部分の補修費については各区分の共有持分で按分した。

非経常的な補修費を含めて(1,046,714円)算定。説明資料11修繕項目①地下駐車場ドレーン配管工事②汚泥処理費

③管理室エアコンドレーン改修工事

④ゴミ置き場排水管詰り直し清掃費

⑤煙感知器設置工事

⑥電気室内不要トランス撤去工事

⑦ゴミ置き場排水トラップ補修工事

⑧非常階段出入り口扉錠前交換作業費

⑨非常階段出入り口扉点検調査費

⑩汚水槽満水発報対応

⑪揚水ポンプグランドパッキン取り換え工事

⑫漏水被害復旧工事

⑬屋上エレベーター機械室内換気扇入替工事

⑭駐輪場トップライト交換工事

⑮外壁シーリング補修工事(フード廻り)

⑯漏水調査

区分 児童館 住戸 店舗 児童館 住戸 店舗
負担金額(円) 25,322 488,213 44,929 39,073 665,595 342,046
負担割合(%) 4.5 87.4 8.1 4 64 33

 

 

支出項目 (9)B 備品購入費、84,616円
当職 被告
算定方法等 共有持分で按分 共有持分で按分する。
内容 全体負担 全体負担
区分 児童館 住戸 店舗 児童館 住戸 店舗
負担金額(円) 5,399 69,639 9,579 5,399 69,639 9,579
負担割合(%) 6.4 82.3 11.3 6 82 11

 

 

支出項目 (9)C 消耗品費 194,445円
当職 被告
算定方法等 共有持分で按分 共有持分で按分する。
内容 全体負担 全体負担
区分 児童館 住戸 店舗 児童館 住戸 店舗
負担金額(円) 12,406 160,028 22,011 12,406 160,028 22,011
負担割合(%) 6.4 82.3 11.3 6 82 11

 

 

支出項目 (9)D 支払い手数料 165,560円
当職 被告
算定方法等 共有持分で按分 共有持分で按分する。
内容 全体負担 全体負担
区分 児童館 住戸 店舗 児童館 住戸 店舗
負担金額(円) 10,563 136,256 18,741 10,563 136,256 18,741
負担割合(%) 6.4 82.3 11.3 6 82 11

 

 

支出項目 (9)E 組合運営費 332,077円
当職 被告
算定方法等 専有部分の床面積により算定した共有持分で按分 共有持分で按分する。
内容 全体負担 全体負担
区分 児童館 住戸 店舗 児童館 住戸 店舗
負担金額(円) 21,187 273,299 37,591 21,187 273,299 37,591
負担割合(%) 6.4 82.3 11.3 6 82 11

 

 

支出項目 (9)F 租税公課 6,000円
当職 被告
算定方法等 共有持分で按分 共有持分で按分する。
内容 全体負担 全体負担
区分 児童館 住戸 店舗 児童館 住戸 店舗
負担金額(円) 383 4,938 679 383 4,938 679
負担割合(%) 6.4 82.3 11.3 6 82 11

 

 

支出項目 (10)その他計 1,155,000円
当職 被告
算定方法等 共有持分で按分 共有持分で按分する。
内容 全体負担 全体負担
区分 児童館 住戸 店舗 児童館 住戸 店舗
負担金額(円) 73,689 950,565 130,746 73,689 950,565 130,746
負担割合(%) 6.4 82.3 11.3 6 82 11

Ⅱ 気積について

項目 気積(容積)
当職 被告
算定方法等 共用部分(開放廊下、エントランス等)を含めた施行床面積から容積算定(資料17) 法定床面積と階高より店舗、住戸及び児童館の気積を算出
内容 1、はじめにそもそも区分所有法第14条では各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合によるとされ、当マンション管理規約(甲17)第10条では、各区分所有者の共用部分の共有持分は、総専有面積に対するその所有する専有部分の床面積によるものとされているから、それと異なる気積などという基準で費用を按分する理由はない。 

2、気積算定の基礎となった床面積が不明であること

乙48は、法定床面積と階高により、店舗、住戸及び児童館のそれぞれの気積を算出したというが、説明資料12を見ても、気積の算定式は示されておらず、どの範囲の床面積に階高を乗じたのかが不明である。店舗、住戸及び児童館のそれぞれの専有部分の床面積に階高を乗じても、説明資料12に記載された数値よりも少ない気積にしかならない。したがって、乙48は、専有部分だけでなく一定範囲の共用部分の床面積を加算したうえで、その合計床面積に階高を乗じたものと推定される。

算定式が明示されていないので、以下は推定でしかないが、次のような床面積の取り方をすると、説明資料12の気積に近似はする。

⑴ 店舗

(専有部分819.8㎡+キュービクル40.6㎡+中通路174.7㎡)×1階階高3.6m+地下駐車場他共用部を共有持分で按分した面積107.8㎡×1階及び地階階高3.6m=4,144.4㎥

⑵ 住戸

(専有部分5,983.63㎡+開放廊下869.1㎡)×住戸階高2.8m+(地下駐車場他共用部を共有持分で按分した面積784㎡)×1階及び地階階高3.6m=21,382.6㎥

⑶ 児童館

(専有部分463.24㎡)×児童館階高2.85m+(地下駐車場他共用部を共有持分で按分した面積60.8㎡)×1階及び地階階高3.6m=1,414.1㎥

しかしながら、店舗について中通路などの共用部分を加算しておきながら、住戸についてバルコニー、共用階段、エントランス、エレベーターホール等を加算していないのは、不均衡であり、意図的に住戸の負担を軽くするために操作したと言われても仕方のない不公正な算定方法である。

 

3、被告が階高を採用することの不合理性

そもそも気積とは、建築基準法が、ホルムアルデヒド等による空気汚染の除去のための居室の必要換気回数(マンションの場合は0.5回/1時間)を定めるにあたり、建築計画においてこの換気回数を算定するために居室の容積を算定させるものであり、専有面積と居室天井の高さ(階高ではない)の積として求められるものである。

当マンションにおいては、1階店舗天井内には、上階の配管が存在しているから(資料21)、店舗が実際に専有部分として使用できる範囲は、天井高までであり、天井高から階高までの部分はむしろ住戸のための共用部分とみうるものである。

したがって、天井高を採用するならまだしも、階高を採用することに合理的理由はない。

 

4、当職の容積計算(資料17)

既に述べたとおり、専有面積に一定範囲の共用部分の面積を加算した合計床面積に階高を乗じて得た気積を費用分担の基準とすることは、法及び管理規約が採用するところではなく、また、一般的にこのような算定方法は行われておらず、極めて独自の見解といわざるをえない。

しかし、ここでは仮に乙48が主張しようとしている趣旨を忖度し、店舗、住戸及び児童館のそれぞれについて、専有部分の床面積だけでなく、各区分の利益のために存在すると考えられる共用部分の床面積を加算したうえで、天井高を乗じた気積を算定してみた。その結果は、資料17の容積計算⑴のとおりである。

乙48では除外されているバルコニー、共用階段、エントランス、エレベーターホール等の床面積を住戸の専有部分の床面積に加算してその気積を求めると、共有持分あたりの気積は、店舗が住戸の0.94倍となった。

したがって、乙48が主張するような気積の論理によって、店舗の格差負担を合理化することはできないというのが当職の結論である。

なお、専有部分は天井高、共用部分は天井高又は躯体内法寸法を計測し、中通路は、天井に大梁・ダクト等があるため平均天井高を採用して算定したので、その旨付記する。

 

店舗、事務所の容積(気積)は、建築基準法、労働安全衛生法の規定があり、本件マンションは階高が住戸より約1.29倍高くできております。階高が約1.29倍あることは、当然建物の維持管理費用等が余分に必要となると指摘する専門家もおられることから、管理費等の負担割合は専有部分の面積ではなく気積(体積)で算定することを考慮しました。
区分 児童館 住戸 店舗 児童館 住戸 店舗
気積(㎥) 1,501.1 21,958.6 2,836.8 1,663.705 21,578.228 4,242.339
負担割合(%) 5.7 83.5 10.8
共有持分当たりの気積 2.35 2.67 2.51 2.608 2.622 3.748
住戸を1とした場合 0.88 1.00 0.94 0.995 1.000 1.429

 

 

Ⅲ 分譲時の価格について

1、区分所有法第30条3項が追加された経緯及び法の趣旨

平成14年6月17日(月)開催された法制審議会建物区分所有法部会第12回会議議事録では、

「衡平性判断のための要素として、特定の区分所有者が設定を受けた専用使用権等の特別の利益と関連しまして,その区分所有者が支払った対価があるかどうか,対価を支払っている場合には,その金額が衡平性を判断するための考慮要素となるのではないかと考えております。

御承知のとおり,現に衡平性が訴訟で問題となった事案ですが,建物の敷地に設定された駐車場の分譲などのケースでは,その駐車場の分譲を受けた区分所有者は,マンション分譲業者に対してその代金を支払っている場合も少なくないと考えられます。この場合,駐車場の分譲を受けた特定の区分所有者と他の区分所有者との間の衡平性を考える場合,やはりその特定の区分所有者が対価を支払っているという事実は考慮せざるを得ないのではないかということで,衡平性を判断するための考慮要素として挙げさせていただいているものでございます。(中略)この問題は,専用使用権,駐車場専用使用権という問題,平成10年の一連の最高裁判決(平成10年11月9日の最高裁判決の高島平マンション事件)の問題が関連してくるわけですが,最高裁の方からも法改正の方向性が付託されていたのではないかと理解しておりますし,この問題が最も多くの紛争を呼んでいるわけでして,専用使用権問題については別個に具体的な規定を設けるべきだと考えたわけであります。」と説明されています。

そして、法務省民事局参事官 吉田徹著 (改正マンション法) には「今回の改正では、規約の衡平性を判断する場合の考慮要素を列挙し、それらを総合的に考慮して、区分所有者の利害の衡平が図られるように規約を定めなければならないとする規定を新設することにしたものです。なお、規約の衡平性に関して第30条第3項に列挙されている考慮要素は、規約の衡平さや適正さが争われたこれまでの裁判例において実際に考慮された事項を参考にして規定されたものであり、今回の改正も、規約の衡平さに関する従来の裁判上の規範に変更を加えることを意図したものではなく、これを具体化・明確化し、これによって規約の衡平さや適正さの確保を図る趣旨のものです。したがって、改正法の施行後に、規約を新たに設定したり、変更したりする場合には、第30条第3項の適用により、同項に列挙されている衡平性の判断要素を総合的に考慮して、区分所有者間の利害の衡平が図られるように定めなければならないという一般的な義務が課されるとともに、その利害の衡平を著しく害する内容の規約が定められた場合には、同行に基づいて当該規約が無効と判断されることになります。また、改正法の施行前にすでに設定されていた既存の規約についても、同項の適用は排除されていませんから、その内容が区分所有者間の利害の衡平を著しく害するものである場合には、同項に基づいて当該規約が無効と判断されることになると考えられます。」と記載されています。

また、区分所有者が支払った「対価」について次のように説明がされています。

「特定の区分所有者が共用部分を専用使用する権利の設定を受けるなど、その利用について特別の利益を得ている場合には、これに関連して対価が支払われていることが少なくなく、こうした対価の有無及びその多寡についても、規約の内容の衡平性を判断する場合の重要な考慮要素になることを明らかにしたものです。」

要は、区分所有法第30条3項における「対価」とは、特定の区分所有者が駐車場など排他的に利用する権利がある場合にその権利相応の「対価」を支払っているのかどうかを、衡平性を図る上で考慮することであり、分譲価格を対象としたものでななく、マンションの施設等、例えば「他の区分所有者より優先して」利用できるとか、「敷地に特に有利な条件」で利用できる「専用使用権」に対して支払われる「対価」を対象としているのです。

 

2、取引事例

本件マンション価格は、58㎡タイプはバブル時には7,000万円台値段を付けたこともありますが、分譲当時は、不景気で特に店舗は買い手がつかず、パンフレット価格の約半額でやっと買い手がつくという状況が長く続きました。その後30年経過しており現在のマンション区分所有者ほとんどが入れ替わり、分譲時から所有している区分所有者は32戸であり約2割強となります。現在の区分所有者の大半はその時代の相場金額で購入しており、取得価格はまちまちです。

実際の取引した店舗の事例で分譲時は

1昭和61年3月10日  買主OS 店舗12番 1,216万円 乙4パンフ3,070万円の39.6%

2同年   8月31日  買主(有)O不動産 店舗14,15,駐車場18の合計は4,280万円 乙4パンフ7,545万円の56.7%

でした。

分譲当初のパンフレットに記載された金額は、販売予定金額であり実際に取引された金額ではないのです。

分譲時の状況を考えても、またその後30年経過する中で、その時代時代の相場金額でマンション取得した区分所有者に対して「取得金額」に応じて管理費等の増減を主張するには無理があります。

 

Ⅳ まとめ

1、被告の法的解釈の誤りについて

区分所有法30条3項の示す「対価」の法の趣旨は、生活に密着している駐車場等専用使用権の「不衡平」が下でのマンションの争いが多いことから規定されたものです。分譲時の金額が高いとか安いとか、店舗の天井が若干高いとの理由で区分所有者間での争いが発生するものではありません。被告乙48号証は、法30条3項の趣旨を理解してはおらず、誤った解釈をしています。

 

2、被告の法令違反等について

区分所有法第14条では各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合による。とされています。また当マンション管理規約第10条第では各区分所有者の共用部分の共有持ち分は、総専有面積に対するその所有する専有部分の床面積によるものとする。とされており乙48号証(1)A事務管理業務費及び一般管理費等、そして、(5)排水管清掃費の店舗住戸の負担割合算定では、児童館を1戸ではなく8戸として計算する戸数当たりの共有持分による算定をおこなっています。乙48号証では、専有部分の床面積の割合による持ち分と、児童館を8戸とし戸数による持ち分と、2通り存在することになります。これは明らかに区分所有法及び当マンション管理規約に違反します。さらに、被告が、法定床面積で算定したことは、規約上別段の定めもないわけですから、バルコニー・解放廊下・エレベーターホール等の共用部分の面積除いて算定することはあってはならず区分所有法及び管理規約に反します。さらにさらに共用部分容積(気積)の負担割合算定では、含めてはならない専有部分の容積を加算しており共用部分の負担割合比較になっておらず、これもまた区分所有法及び管理規約に反します。

 

3、被告が情報を操作していることについて

①(1)A事務管理費及び一般管理費において店舗電気料徴収業務を法外な金額で店舗に負担させたこと、また負担割合を専有面積によらず割増した戸数により行ったこと。(管理規約との齟齬)

②(1)B管理員業務費では管理委託契約で約束された項目のほとんどが省かれ、管理委託契約にない店舗負担項目が組み込まれていること。(管理委託契約書との齟齬)

③(1)C-5建築設備定期検査における設備機器の台数が附合しない。

④(1)C―6消防用設備点検において設置されている機器が省かれて、また、点検項目も負担割合算定から除外されている。(消防設備点検報告書との齟齬)

⑤(1)C-7店舗電気子メーターと共用部電気子メーターの数が附合しない。

⑥(3)防犯カメラレンタル料においては店舗に設置されているとされているものが共用部分のものであること。(実際の設置との齟齬)

⑦(4)清掃業務費(定期清掃)においては、店舗前のポリッシャー清掃は行われていないこと、規約・同細則においても行うことにはなっていない。(管理規約、同細則及び管理委託契約書との齟齬)

⑧(5)排水管清掃費においては負担割合を割増した戸数により行ったこと。(管理規約との齟齬、区分所有法・規約違反)

⑨(8)電気料金においては、エレベーター、揚水ポンプ等の店舗負担とすべき動力電気料が、動力と関係の無い電灯の蛍光灯の本数で負担割合が算定され、常時点灯されているもの、スイッチによるもの、タイマーによるものの区別なく蛍光灯の本数割合で算定されている。(実態との齟齬)

⑩(9)修繕費においては、経常的な補修費として含めてはならないものが計上されています。(規約と収支決算書の齟齬)

⑪乙48号証説明資料12では法定床面積と階高により気積を算出し、とありますが、法定床面積には、住戸負担とする開放廊下、エレベーターホール、エントランスは含まれないこととなるため、住戸負担を少なくし、店舗負担を重くします。(管理規約、管理委託契約書との齟齬)

以上、乙48号証は、区分所有法及び管理規約に違反し、いたるところで情報が操作され実態からかけ離れた内容となっています。

負担割合算定対象金額は14,422,478円ですが、操作された項目①~⑩の合計は10,740,804円となり、その金額に占める割合は実に75%にも及びます。

 

4、被告の管理組合法人としての姿勢について

被告管理組合法人は、いわば公的機関の義務として、善管注意義務が課せられています。店舗・住戸間の管理費等負担割合を算定するには公平な立場で臨むべきものであり、情報の隠ぺいや、操作などあってはならないことです。今回原告が、被告に対して関係資料の閲覧を申請し拒否された経緯があります。被告の管理組合法人としての本来あるべき姿は、問題提起に真摯に取り組み規約の衡平を追及することですが、閲覧申請拒否は、その公平を追及する姿勢から大きく逸脱します。

 

以上、乙48号証の主張は、区分所有法、当マンション管理規約に違反し、当マンション管理委託契約書、平成25年度決算報告書の管理組合支出報告書、消防署等提出書類等との齟齬があり、到底信用出来るものではなく、ましてや格差2.45倍を証明できるものではありません。

原告が算定したマンション管理費会計支出負担割合、共用部分の容積負担割合、分譲時の価格、区分所有法第30条3項の各要素その他の事情からみても、店舗・住戸の管理費格差を設ける理由は見当たりません。むしろ店舗負担は住戸に比べて低いのです。

当マンションの管理費割合は、1:1とすることが最も合理的であり、将来の紛争をも予防することにもなります。

 

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